沖縄セールスパートナー株式会社

BLOGブログ

顧客カルテが担当の頭の中にある美容室へ|AIで施術履歴を次回提案に

AI活用

美容室の顧客カルテは、紙やアプリに「ある」だけでは足りません。次の担当が読んで、同じ判断ができるかどうかで値打ちが決まります。結論から言うと、カウンセリングで話した内容と施術中の走り書きをAIに渡します。AIがそれを「悩み・薬剤・仕上がり・次回の提案」の4つの欄に分けて下書きし、スタッフが確かめてから保存します。この形にすると、担当の頭の中にしかなかった情報が、少しずつ店の記録になっていきます。この記事では、那覇や浦添、沖縄市あたりの小さなサロンでよくある場面から入ります。そのあと、施術前・施術中・会計後の3つの時点に分けて流れを説明します。最後に、AIに判断させてはいけない線と、忙しい日でも入力が途切れない工夫を書きます。

「いつもの感じで」が通じない日は、ある朝とつぜん来る

土曜の午前、指名の多いスタイリストが、子どもの発熱で急に休むことになったとします。代わりに入ったスタッフがカルテを開くと、前回の欄には「カラー いつもの」「カット 前回同様」としか書いてありません。お客様は「いつもの感じでお願いします」と言います。でも、その「いつも」が何トーンなのかは休んだ本人にしか分かりません。どの薬剤を何分置いたのか、根元と毛先で配合を変えていたのかも同じです。結局、一から聞き直すことになります。お客様は「前に全部話したのにな」と、少し残念そうな顔をします。施術そのものはうまくいっても、この最初の数分で信頼が少し下がってしまうのです。

担当が辞めたあとは、もっと深刻です。地域に根ざしたサロンでは、同じ担当に何年も切ってもらっているお客様も少なくないでしょう。その担当が独立や県外への引っ越しで店を離れると、いろいろな情報が一度に消えます。好みの長さ、つむじの癖、前にしみたことがあるかどうか、職場で明るい色を控えている事情などです。お客様が店を離れるきっかけは、技術の差よりも「また最初から説明しなきゃいけない」という面倒さであることも多いものです。

ここで言いたいのは、担当が悪いということではありません。お客様を次々に迎える日には、施術の合間にカルテを丁寧に書く時間がないのが普通です。会話では大事なことをちゃんと聞いているのに、文字にするときに抜けてしまいます。この「聞いたのに残らない」すき間をAIで埋めよう、というのがこの記事の考え方です。

カルテを4つの欄に分けると、次の担当が読める記録になる

顧客カルテを悩み・薬剤・仕上がり・次回の提案の4つの欄に分けて確認する美容師のイメージ

最初にやることは、AIを入れることではありません。カルテの書き方を揃えることです。自由に書ける欄が1つしかないと、人によって書く量も書き方もばらばらになり、AIも整理しようがありません。そこで、書くことを4つの欄に絞ります。それぞれの欄には、元になる情報と、書く時点がはっきりあります。

欄書くこと元になる情報主な時点
悩み広がり・うねり、白髪、ダメージ、朝のスタイリングの手間、職場の事情カウンセリングでの会話施術前
薬剤薬剤・配合・放置時間・塗り分け、しみ・かゆみの有無施術中の走り書き・音声メモ施術中
仕上がり長さ・トーン・質感、お客様が口にした感想仕上げのときの会話・写真会計後
次回の提案来店時期の目安、メニューの候補、ホームケアの話題上の3欄と会計のときの会話会計後

沖縄のサロンならではの材料もあります。梅雨から夏にかけて湿気でくせが出やすいと感じるお客様や、日差しや海で色が早く抜けると感じるお客様の話は、カウンセリングの雑談によく出てきます。けれども、こうした季節の話はカルテにいちばん残りにくい情報です。「去年の6月は広がりに悩んでいた」と記録にあれば、次の年の同じころに先回りして提案できます。

AIの役割は、あくまで「整理係」です。お客様の髪をどうするかを決めるのは担当で、AIは話された内容を決まった欄に振り分け、読みやすくするだけです。この線引きを先に決めておくと、スタッフもAIを怖がりませんし、任せすぎもしなくなります。

施術前|カウンセリングの会話から悩みと前回との違いを拾う

お客様が来る前に、AIが前回のカルテを3行ほどにまとめて担当に見せます。たとえば「前回は根元のリタッチ、毛先は色を入れず。仕上がりには満足、ただし『もう少し明るくてもよかった』との一言あり」といった具合です。代わりに入ったスタッフでも、これを読んでから席に向かえば、最初のひと言が「前回、もう少し明るくてもと仰っていたので」に変わります。聞き直すのではなく、前回の続きから話を始められるわけです。

カウンセリングの会話を残す方法は、店に合わせて2つから選びます。1つは、お客様に断ったうえで会話を録音して文字に起こす方法。もう1つは、カウンセリングのあとにスタッフがスマートフォンへ要点を30秒ほど話して吹き込む方法です。録音は抵抗を感じるお客様もいるので、吹き込みのほうが始めやすい店も多いと思います。どちらの方法でも、AIはそこから「朝、右側だけはねる」「仕事柄、明るすぎる色は避けたい」といった悩みを拾い、悩みの欄に入れます。

気をつけたいのは雑談の扱いです。美容室の会話には、家族のこと、仕事の中身、体調のことなど、私的な話がたくさん出てきます。AIには「施術と仕上がりに関係する内容だけを残し、それ以外は書かない」とはっきり指示しておきます。お客様の個人情報をどこに保存し、誰が見られるかも、始める前に店で決めておくべきことです。カルテは便利になるほど人の目に触れやすくなる、ということを忘れないようにします。

あわせて読みたい

商品マスタの表記ゆれが直らない3つの原因|卸・小売がAIで品名をそろえる 商品マスタの表記ゆれが直らない3つの原因|卸・小売がAIで品名をそろえる関連する話題をこちらでも解説しています。

施術中|薬剤と放置時間は、その場の短いメモで足りる

施術中はグローブをしていたり手が濡れていたりして、きれいな文章を書く余裕はありません。だからこそ、ここでは走り書きで十分と割り切ります。「根元 いつもの配合 20分、毛先 薄め 10分」くらいのメモでかまいません。シャンプー台へ移る合間に、音声で「毛先は前回より少し薄めにした」と吹き込むのでも大丈夫です。AIはこれを、薬剤名・配合・放置時間・塗り分けの順に並べ直し、次の人が読める形にします。

この時点でいちばん大切なのは、AIに推測で空欄を埋めさせないことです。AIは気をきかせて、メモに書いていない放置時間や配合を「それらしく」補うことがあります。カラーの記録でこれが起きると、次の担当が間違った数字を信じてしまいます。そこで指示文には「メモにない数値は空欄のまま残し、『未記入』と表示する」と書いておきます。空欄があれば、担当があとで思い出して書き足すきっかけにもなります。

もう1つ、施術中に起きた「しみた」「かゆいと言われた」という出来事は、どんなに忙しくても事実として一言残します。ここでは判断を書く必要はありません。「塗布10分ごろ、右耳の後ろがしみると申告」のように、いつ・どこで・何があったかだけを書けば十分です。この記録をどう扱うかは、後の章でくわしく書きます。仕上がりの前後に撮った写真に「根元が少し浮きやすい」と一言添えておけば、AIがそれを仕上がりの欄に回してくれます。

会計後|仕上がりの一言から、次回の提案を下書きする

会計後にお客様の一言をスマートフォンへ音声で記録する美容師のイメージ

お客様がいちばん本音を漏らすのは、実は会計のときかもしれません。鏡の前では「大丈夫です」と言っていても、レジで「これなら朝がラクそう」「もう少し短くてもよかったかな」とぽろっと口にすることがあります。こうした一言は、仕上がりの欄にとって何より役に立つ材料です。お見送りのあと、スタッフがその言葉をそのまま吹き込むだけで、AIが仕上がりの欄に整えて入れます。

次回の提案の欄は、悩み・薬剤・仕上がりの3つの欄と会計のときの会話から、AIが下書きを作ります。たとえば「根元が伸びてくるころにリタッチの案内。梅雨入りが近いので、広がり対策のトリートメントを候補に。『もう少し短く』の一言があったので、カットの長さは次回の相談事項に」といった形です。候補を出しすぎると押し売りのように見えるので、AIには「候補は2つまで」と決めておきます。最後に担当が読んで、自分の言葉に直すか消すかを決めます。

店によっては、LINEで次回の案内を送っているところもあるでしょう。AIはその文面の下書きまで作れますが、送るのは必ず人が読んでからにします。お客様にとっては、店からの一通が担当の言葉そのものだからです。次に別のスタッフが担当する日に一番読まれるのは、この「次回の提案」の欄です。前の担当がどんなつもりで次回を考えていたかが分かれば、担当が替わっても話の流れが途切れません。

肌トラブルやアレルギーの判断は、AIに渡さない

ここだけは、はっきり線を引いておきます。頭皮の赤み、かぶれ、かゆみ、カラー剤に体が反応しているかもしれない兆し。こうしたものを見て、その日に施術してよいか、パッチテストをするか、医療機関で診てもらうよう勧めるかを判断するのは、店のルールと担当者の目です。AIは記録を整理することはできても、目の前のお客様の肌を見ることはできません。もっともらしい答えを返してきたとしても、それを判断の材料にしてはいけない分野です。

仕組みにも、この線を組み込んでおきます。AIには「皮膚・アレルギー・体調に関する記述があれば、要約せず原文のままカルテの一番上に目立つ形で出す」と指示します。要約は便利な反面、言い回しを弱めてしまうことがあります。「少ししみた」が「特に問題なし」に変わってしまえば、それは記録が改ざんされたのと同じです。注意すべき記述は、手を加えずにそのまま残すことを基本にします。

次回の提案でも同じです。過去にしみた記録があるお客様には、AIがカラーのメニューを勧めないようにし、「カラーは担当判断」とだけ表示させます。AIが空気を読んで勧めてしまう、という事故を最初から起こさないための設計です。こうしたルールは、店の衛生や安全の決めごとと同じ場所に書いておき、新しく入ったスタッフにも最初に伝えます。

入力が三日坊主で終わらないための、店の小さな決めごと

この仕組みでいちばん多い失敗は、最初の1週間だけ丁寧に入力して、忙しい時期に止まってしまうことです。年末や成人式の前、卒業・入学のシーズンは予約が詰まり、カルテどころではなくなります。そこで、続けるための工夫を、ツールより先に店の決めごととして用意しておきます。

まず、「入力は一言でいい。整えるのはAIの仕事」とはっきり伝えます。スタッフがきれいな文章を書こうとすると、それだけで入力が重くなります。次に、入力のタイミングを1つに決めます。たとえば「お見送りをして、次のお客様を迎える前の30秒」と決めてしまえば、いつ書くかを毎回考えなくて済みます。さらに、最初から4つの欄すべてを求めないことも大事です。まずは「薬剤」と「次回の提案」の2つの欄から始め、慣れてきたら「悩み」と「仕上がり」を足す、という順番でもかまいません。

いちばん効くのは、記録が役に立った場面を店の中で共有することです。「代わりに入った日、前回のメモのおかげで話が早かった」という経験が朝礼で一度語られるだけで、入力は「やらされる作業」から「仲間を助ける作業」に変わります。今使っている予約システムやPOSとどうつなぐかは、ツールの種類や設定によって変わるので、内容によっては個別に検討が必要です。AIに作業を任せる仕組みの全体像はAIエージェントの導入支援のページで紹介していますし、沖縄の中小企業でのAIの使いどころは沖縄の企業のAI活用についての記事にもまとめています。

まとめ|担当の頭の中を、店の記録へ少しずつ移していく

顧客カルテが担当の頭の中にあるうちは、その担当がいる日しかお客様の「いつもの」は再現できません。カウンセリングの会話と施術中の走り書きをAIで「悩み・薬剤・仕上がり・次回の提案」の4つの欄に分け、施術前・施術中・会計後の3つの時点で少しずつ書き足していけば、担当が休んだ日も辞めたあとも、前回の続きから話を始められます。そのうえで、肌やアレルギーの判断は人が持ち、注意すべき記述は要約させずに残すこと。そして入力は一言でよいと決め、続けられる形にすること。この2つを守ると、AIはサロンの記録を支える道具として長く使えます。自分の店のやり方に当てはめるとどうなるか、どこから始めればよいかを相談したい方は、お問い合わせからお気軽にご連絡ください。