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商品マスタの表記ゆれが直らない3つの原因|卸・小売がAIで品名をそろえる

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商品マスタの表記ゆれは、一度まとめて直しても、しばらくするとまた増えてきます。原因はだいたい三つです。入力のルールが決まっていない。取引先ごとの呼び名をそのまま取り込んでいる。そして、直したあとに元へ戻ってしまう仕組みが残っている。全件を人の目で見比べる直し方では追いつかないので、AIに「同じ商品かもしれない組み合わせ」を候補として出させ、最後は人が決める分担に切り替えるのが現実的です。この記事では、沖縄の卸・小売の現場でよくある場面を例にして、原因ごとに在庫・発注・売上集計にどんなズレが出るか、そしてどう手当てするかを順に見ていきます。

ここで扱うのは、AIに品名を勝手に書き換えさせる話ではありません。判断材料を集めて並べる作業をAIに任せます。決めるのは商品をよく知っている担当者です。この前提で読んでください。

同じ商品に三つの名前があると、数字はどこでずれるのか

同じ商品が別々の品名で登録され、在庫や集計がずれていく様子のイメージ

たとえば県産の泡盛を扱う酒類の卸で、「○○ 30度 1.8L」「○○30° 一升瓶」「○○ 1800ml」の三行が商品マスタに並んでいるとします。現場の人なら同じ商品だとすぐわかります。でもシステムから見れば、これは別々の三商品です。

まず在庫がずれます。入荷を一行目で受けて、出荷を二行目で落とすと、一行目は在庫が積み上がり、二行目はマイナスになります。棚卸のたびに差異を手で調整することになり、その調整からまた別の誤りが生まれます。次に発注がずれます。在庫が少なく見える行を見て追加発注をかけると、倉庫には十分あるのに重ねて仕入れてしまいます。県外から船便で入る商品はリードタイムが長いので、多めに頼む癖がつきがちです。その結果、余った在庫が倉庫を圧迫します。最後に売上集計がずれます。商品別の売れ筋を出しても売上が三行に割れるので、実はよく動いている商品が中位に埋もれ、棚割りや仕入れの判断を誤らせます。

表記ゆれは見た目の問題に見えますが、実際には在庫・発注・売上の三つの数字をまとめて狂わせます。しかも、表記ゆれがなぜ生まれたかによって、ズレの出方が変わります。ここから原因を一つずつ見ていきます。

原因その一 入力のルールが無いまま、登録する人が増えた

一つ目の原因は、品名の書き方に決まりが無いことです。創業したころは社長か一人の担当者が全部登録していて、その人の頭の中のルールで自然にそろっていました。ところが取扱品目が増え、パートさんや新しく入った事務の方も登録するようになると、人によって書き方が分かれてきます。全角カタカナか半角カタカナか。「ml」「ml」「ミリ」のどれで書くか。容量を品名の前に置くか後ろに置くか。メーカー名を入れるかどうか。一つひとつは小さな違いでも、組み合わさると同じ商品が何通りにも登録されます。

このパターンでよく起きるのが、「検索しても見つからないから新しく作る」という連鎖です。登録しようとした人が既存の品名を検索しても、書き方が違うのでヒットしません。それで「まだ無い」と判断して新規登録する。こうして重複が次の重複を呼びます。品番の採番ルールまで決まっていないと、同じ商品に別々の品番が振られ、あとで突き合わせる手がかりさえ残りません。

在庫に出るのは、担当者によって入荷を受ける行が違うことによるズレです。午前のシフトの人はAの行、午後の人はBの行で処理する、というように行の使い分けが人ごとに分かれると、棚卸差異の原因を追うのも難しくなります。売上集計では、同じ商品の売上が登録した担当者の数だけ割れていきます。

手当て 過去の登録から「同じかもしれない」組み合わせをAIに挙げさせる

ルールが無かった期間に溜まった重複は、まず洗い出す必要があります。ここでAIが役に立ちます。商品マスタをCSVで書き出し、品名・規格・メーカー・JANコード・仕入先などの列をそのままAIに渡して、「同じ商品の可能性がある組み合わせ」を候補として挙げてもらいます。全角と半角の違い、単位の書き方、語順の入れ替わりといった機械的な揺れなら、人が目で探すより速く見つけられます。

大事なのは、AIの出力をそのまま確定させないことです。候補ごとに「なぜ同じだと考えたか」を一言添えてもらい、担当者が一覧を見ながら「同じ」「別物」「保留」を付けていきます。同じ銘柄でも25度と30度は別の商品ですし、贈答用の箱入りと裸瓶も分けて扱いたいはずです。こうした区別ができるのは、売り場や取引の事情を知っている人だけです。見落としを減らす役はAIに、決める役は人に任せる。こう分けると作業量を減らしながら、間違った統合も防げます。

「同じ」と確定した組み合わせは、残す品番を一つ決めて、ほかは「統合済み」として使用を止めます。いきなり削除すると過去の伝票が追えなくなるので、旧品番から新品番をたどれる対応表を必ず残してください。この対応表は、次の原因への手当てでもそのまま使います。

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原因その二 取引先ごとの呼び名を、そのまま自社のマスタに取り込んでいる

二つ目の原因は社外から入ってきます。卸なら複数のメーカーや一次卸から、小売なら複数の問屋から仕入れています。それぞれの請求書や納品データには、相手先が付けた品名が書かれています。これをそのまま自社の商品マスタに登録すると、同じ商品でも仕入先の数だけ名前が増えていきます。

沖縄の食品を扱う店でよく見かけるのが、「ゴーヤー」「ゴーヤ」「にがうり」のように、仕入先によって呼び方そのものが違うケースです。ランチョンミートの缶詰も、メーカー名で書く取引先があれば、「ポーク缶」とだけ書く取引先もあります。離島向けに卸している会社なら、得意先から届く注文書も得意先ごとの呼び名で書かれているので、受注を入力する段階でさらに名前が増えます。

このパターンでは、特に発注にズレが出ます。仕入先Aの品名で登録した行と、仕入先Bの品名で登録した行が別々なので、どちらから買うほうが有利かを比べられません。片方の仕入先で欠品したとき、もう片方なら同じ商品を手配できる、ということにも気づきにくくなります。売上集計でも、仕入先別に割れた行を毎月あとから足し合わせる手間がかかります。

手当て 取引先の品名と自社品番の対応表をAIに下ごしらえさせる

取引先ごとの品名をAIが自社品番に対応づけ、担当者が確定する流れのイメージ

この原因への手当ては、取引先の品名を自社のマスタに入れないことです。かわりに「取引先の品名」と「自社の品番」を結ぶ対応表を一つ用意し、取り込むときは必ずこの表を通すようにします。自社のマスタには自社の正式な品名だけを置き、取引先ごとの呼び名は対応表のほうにまとめる、という分け方です。

対応表を一から人が作るのは大変です。そこで、過去数か月分の仕入データや受注データから取引先の品名を抜き出し、自社の商品マスタと照らし合わせて、AIに対応の候補を付けてもらいます。JANコードがあればそれを一番の手がかりにし、無いものは品名・容量・単価の近さなどから推定させます。推定の根拠と自信の度合いもあわせて出してもらえば、担当者は自信の低いものから順に確認できます。

確定した対応は表に追記していきます。新しい請求書や注文書を取り込むときは、表にある品名は自動で自社品番に置き換え、表に無い品名だけを「要確認」として担当者に回します。始めのうちは要確認が多くても、取引が続くうちに表が育ち、人が見る件数は減っていきます。この取り込みの流れそのものにAIを組み込む考え方は、AIエージェントの導入支援のページでも紹介しています。

原因その三 一度そろえても、数か月たつと元に戻る

三つ目の原因は、手間をかけて統一したのに、時間がたつとまた揺れが増えてくることです。年末の繁忙期の前にようやく商品マスタを整理したのに、翌年の夏にはまた似た品名が並んでいる。そんな話は珍しくありません。

元に戻るのは、整理が「一度きりの大掃除」で終わっていて、新しく登録する入口に手が入っていないからです。新商品の登録、季節商品の再登録、規格変更にともなう新品番の発行など、マスタには毎月のように新しい行が増えます。その入口でチェックが無ければ、一つ目と二つ目の原因が気づかないうちに再発します。担当者が入れ替わり、整理したときの決まりが引き継がれないこともよくあります。

このパターンのズレは、気づきにくいのがやっかいです。整理した直後は在庫も売上もきれいにそろうので、安心して点検をやめてしまいます。そのあと少しずつ重複が増え、気づいたころには棚卸差異がまた膨らみ、前年同月との売上比較も正しく出なくなっています。整理の前と後で集計の基準が変わっているため、どこからずれ始めたのかを突き止めるのにも時間がかかります。

手当て 新規登録の入口で、似た品名をAIに知らせてもらう

元に戻さないためには、大掃除を繰り返すより、新しく登録するその場で止める仕組みを置くのが効果的です。担当者が品名を入力したら、既存のマスタからよく似た品名をAIが探して「この商品とは別物ですか」と候補を見せます。これだけで、「検索で見つからないから新規作成」という連鎖の多くを手前で止められます。新規として登録するか、既存の品番を使うかは、最後に担当者が選びます。

あわせて、月に一度くらい、直近に増えた行だけを対象にAIに名寄せ候補を出してもらう点検を習慣にすると、入口をすり抜けた重複も早いうちに拾えます。見るのは直近分だけなので、確認の時間も短く済みます。三つの原因と、それぞれに出るズレ、手当ての置きどころをまとめると次のようになります。

原因出やすいズレAIに任せる部分人が決める部分
入力ルールが無い担当者ごとに在庫の行が分かれ、売上が割れる既存マスタから重複の候補を挙げ、理由を添える同じか別物かの判定と、残す品番
取引先の呼び名を取り込んでいる仕入先ごとに行が割れ、発注の比較や代替手配ができない取引先の品名と自社品番の対応候補を推定する対応の確定と、表に無い品名の扱い
一度直しても戻る整理後にまた棚卸差異が膨らみ、前年比が狂う新規登録の時点で似た品名を知らせ、月次で直近分を点検する新規で作るか既存を使うかの選択

どの手当てでも、AIは候補を出すところまで、確定するのは人、という線を守っています。品名は社内のあらゆる帳票や集計の起点になるので、誤って統合したときの影響は小さくありません。AIの速さを使いながら、最終判断を現場に残しておくことが、結果として表記ゆれを長く抑えることにつながります。

品名をそろえる作業を、人とAIで分け合う

商品マスタの表記ゆれがなくならないのは、担当者の注意力が足りないからではありません。ルールが無いまま登録する人が増えたこと、取引先の呼び名がそのまま入ってくること、整理したあとに入口が開いたままになっていること。この三つが重なっているからです。それぞれ在庫・発注・売上集計への出方が違うので、自社でどの原因が大きいかを見極めてから手を付けると、遠回りが減ります。

手順としては、まず今あるマスタの重複をAIに洗い出してもらい、人が確定して対応表を作るところから始めるのが取り組みやすいと思います。その対応表を取引先の品名の取り込みにも使い、最後に新規登録の入口にチェックを置けば、三つの原因にひととおり手が届きます。どこまでを仕組みにするか、今の販売管理システムとどうつなぐかは会社ごとに事情が違うので、進め方や費用は内容によって変わります。

沖縄の中小企業でのAI活用の考え方は沖縄の中小企業のAI活用についての記事でもまとめています。自社の商品マスタでどこから手を付けるべきか迷ったら、お問い合わせからお気軽にご相談ください。