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面談記録と生徒募集の連絡に追われる学習塾へ|AIで週2時間を戻す

学習塾の事務で本当に時間を食っているのは、面談そのものでも授業準備でもなく、その手前にある「思い出す時間」だ。面談の前に前回のメモを探し、講師とのやりとりをさかのぼり、成績表を引っ張り出す。一件あたり十分か二十分の探し物が、体験申込の対応、入塾面談、指導報告、そして継続か退塾かの見極めと、塾の一年のあちこちで何度も繰り返される。ここにAIを一枚かませて、話した言葉がそのまま記録の形になるようにしておくと、週に二時間ほどは素直に戻ってくる。授業のコマを削らず、人を増やさずにできる範囲の話である。

たとえば、体験申込の折り返しが一件、面談前の掘り起こしが一件、指導報告の催促が数件。どれも十分前後で片づく用事なのに、片づけるためにスマートフォンとメールと紙のメモを開き直す。開いた回数だけ、その日の余白が削れていく。以下では、塾の一年で必ず来る四つの局面ごとに、どこまでを機械に前さばきさせ、どこから先を人が持つのかを具体的に見ていく。

塾の一年は、毎年ほぼ同じ場所で忙しくなる

沖縄の学習塾を見ていると、忙しさの波は驚くほど毎年同じ場所に来る。三月から四月にかけて新年度の体験申込が集中し、五月の連休明けに最初の入退会が動く。夏休みに入れば短期講習の時間割づくりと出欠の確認で事務が膨らみ、二学期の途中で成績が動けば面談の希望が一気に増える。県立高校入試を控えた冬から三月にかけては、受験生一人ひとりについて個別の判断を求められる時期になる。

月ごとに書き出してみると、その反復ぶりがはっきりする。三月は体験と新規の問い合わせ、四月は時間割の確定と教材の手配、五月は連休明けの様子見と最初の継続確認、六月は定期テスト対策の個別調整、七月から八月は夏期講習の枠組みと出欠の管理、九月は二学期の面談、十月から十一月は模試の結果を挟んだ進路相談、十二月は冬期講習、一月から三月は入試本番と次年度の募集。生徒の顔ぶれは毎年入れ替わっても、事務としてやることは前年とほとんど変わらない。

そこに沖縄特有の事情が重なる。台風接近で急きょ休講にすれば振替の調整が発生し、旧盆の時期は教室の予定そのものを組み替える。部活動の大会日程や、離島・遠方から通う生徒の送迎事情も、毎年似た形で連絡の手間として返ってくる。裏を返せば、同じ形で来る忙しさは、あらかじめ型にできるということだ。型にできる事務は、AIに前さばきを任せられる。逆に、その生徒をどう伸ばすか、この保護者に何をどう伝えるかという判断は型にならないので、人が持ち続ける。この線引きを最初に決めておくと、導入の話が具体的になる。

体験申込──最初の一件を、探さなくていい場所に落とす

ばらばらの入り口から届いた体験申込が、ひとつの一覧にまとまるイメージ

生徒募集の入り口は、放っておくと勝手に増えていく。教室の固定電話、ホームページのフォーム、Instagramのダイレクトメッセージ、通っている生徒の保護者からの紹介、地域のチラシを見た人の飛び込み。入り口が増えること自体は歓迎すべきことなのに、受け皿がばらばらだと、教室長のスマートフォンの中と、事務机のメモ帳と、共用のメールボックスに情報が散る。結果として、折り返しが翌日になったり、別の講師が同じ家庭に二度連絡してしまったりする。体験申込は、問い合わせから最初の連絡までが空くほど温度が下がる性質のものだけに、この取りこぼしがいちばん惜しい。

ここでAIに任せられるのは、届いた文面や電話の走り書きから「誰が・学年・どの教科で困っている・いつ体験を希望している・どこで塾を知ったか」を抜き出し、一行に整えて一覧に並べることだ。誰に営業をかけるかを選ばせるわけでも、返信を勝手に送らせるわけでもない。ただ形をそろえて並べるだけで、朝いちばんに開いた画面で「まだ返していないのはこの二件」が見える状態になる。

並べる項目は、受付日、氏名、学年、希望教科、希望日時、知ったきっかけ、折り返しの状態、担当者。この八つで足りる。増やすほど埋まらなくなるので、最初は少なめに始めて、足りないと分かってから足すほうがいい。電話で受けたぶんは、受話器を置いたあとに走り書きをそのまま打ち込めば、AIが同じ八項目の形に直してくれる。「三年の男の子、数学が苦手、来週の火曜か木曜の夕方希望、お姉ちゃんが通っていた」といった話し言葉のままで構わない。この「形をそろえるところだけ任せる」という割り切りが、続くかどうかの分かれ目になる。

もうひとつ効くのが、きっかけの記録が自然にたまることだ。三か月も並べれば、紹介が多い月、Instagram経由が伸びた時期、チラシがほとんど動かなかった地域といった傾向が、集計するまでもなく目に入るようになる。どんな入り口の情報をどこまでまとめられるかは使っている道具によって変わるので、そのあたりはAIエージェントの活用の考え方も踏まえて、教室の実態に合わせて決めていくことになる。

入塾面談──話した内容を、その場で記録の形に変える

入塾面談は三十分から一時間、保護者の話をよく聴く時間だ。ところが手元でメモを取りながら聴こうとすると、どうしても相手の顔を見られない。かといって聴くことに集中すれば、面談が終わったあと清書しようと思っているうちに次のコマが始まり、そのまま記憶だけが残る。数か月後に「入塾のとき、部活との両立が心配だとおっしゃっていましたよね」と切り出せるかどうかは、この清書が残っているかどうかで決まる。

断りを入れたうえで面談を録音し、AIに要約させる。出させるのは、保護者が困っていること、その場で決めたこと、塾側が次にやること、次にいつ話すか、の四点でいい。長い議事録は誰も読み返さないので、短くしておくほうが後で効く。ただし、コースの提案や費用に関わる話、志望校の合否見込みのように、内容によって答えが変わるものは要約に混ぜず、人が言葉を選んで書き足す。AIが出したものを人が三十秒だけ直す、という順番にしておけば、面談が終わって教室を出るまでに記録が完成している状態が作れる。

録音は必ず口頭で断ってから始める。「後で正確に残したいので録らせてください、記録は塾の中だけで使います」の一言でたいてい通るし、断られたらその日は録らずにメモに戻ればいい。塾は成績や家庭の事情という繊細な情報を預かる仕事なので、音声とテキストをどこに置くか、誰が見られるか、いつ消すかは、使い始める前に決めておく。ここを曖昧にしたまま便利さだけ先に走らせると、後から止めることになる。

そして、この記録がいちばん効くのは次の面談の前だ。過去の面談要約と出欠、指導報告をまとめて読ませ、「前回からの変化」と「前に約束したこと」を数行にしてもらう。準備に十五分かけていたところが二、三分で済み、しかも人の記憶より漏れが少ない。保護者の側からすれば、前に話したことを覚えている塾かどうかは、そのまま信頼の量になる。

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指導報告──講師が実際に書ける長さに合わせる

指導報告は、たいていの塾でいちばん形骸化しやすい。担当講師の多くは大学生や社会人の非常勤で、授業が終わればすぐ次のコマか、その日のうちに帰る。そこに項目の多い報告フォームを渡しても埋まらないし、埋まらないから教室長が後で聞き取りに回ることになって、結局二度手間になる。報告が薄くなる原因は講師の意識ではなく、求めている分量が現場の余白と合っていないことのほうが大きい。

だから、講師に書いてもらうのは二、三行の走り書きまでにする。「英語、過去形がまだ不安定。宿題は半分。今日は集中できていた」程度で十分だ。そこから、保護者に見せても差し支えない文章と、教室内部に残す記録の二通りにAIが整える。書式をそろえる、敬語を整える、教科名や単元名の表記ゆれを吸収する——このあたりは人が気を遣うほど疲れる作業で、機械が得意な部分でもある。

さきほどの走り書きなら、保護者向けは「本日は英語の過去形を扱いました。規則動詞は定着してきましたが、不規則動詞でつまずく場面が見られます。宿題は半分ほどの進捗でしたが、授業中の集中はよく続いていました」といった形に、内部向けは「過去形/不規則動詞で停止。宿題実施率50%。次回は小テストから入る」といった形に分かれる。同じ観察から、読む相手に合わせて二通りが出てくるだけで、教室長が書き直す手間はほとんど消える。

講師には観察したことだけを書いてもらい、体裁は後段で整える。この分担にしてから報告が続くようになった、という手応えは、塾に限らず現場を持つ会社に共通している。続くようになると、報告そのものが資産に変わる。三か月分をまとめて読ませれば、その生徒がどの単元で毎回止まっているのかが、担当が替わっても見えるようになる。

継続と退塾の見極め──小さな変化が、並んで見えるようにする

生徒ごとの記録が時系列に並び、小さな変化に気づけるイメージ

退塾の相談は、ある日突然やってくるように見えて、たいていその前に予兆がある。欠席が月に一度から二度に増える、宿題の提出が飛びはじめる、保護者からの返信が以前より短くなる、送迎の時間がしょっちゅう変わる。生徒が二十人なら教室長の勘で拾えるが、百人を超えると、目の前にいる子のことで手一杯になって、静かに離れていく子ほど見えなくなる。

ここでAIにやってもらうのは、生徒ごとの出欠と報告の記録を時系列に並べ直し、「先月と比べて変わったこと」を数行にまとめることだ。出てくるのは、たとえば「欠席が先月1回から今月3回、うち2回は金曜」「宿題の未提出が2週続いている」「保護者からの返信が以前より短い」といった事実の並びである。この三行が週に一度、名簿順に並ぶだけで、勘に頼らずに気づける範囲がはっきり広がる。

大事なのは、そこで結論を出させないことである。「退塾しそう」と機械に断定させてしまうと、その一言が独り歩きして、講師の接し方まで変わってしまう。出させるのはあくまで変化の指摘までで、面談を入れるのか、担当を替えるのか、しばらく様子を見るのかは教室長が決める。金曜の欠席が続いている理由が部活の遠征なのか、家庭の送迎の都合なのか、勉強がつらくなっているのかは、記録の外にある話だ。声のかけ方に至っては、その家庭との関係を知っている人にしか選べない。気づく仕事は機械に、決める仕事と伝える仕事は人に。この順番を崩さないほうが、結果としてうまく回る。

どこまで任せて、どこから人が決めるか

ここまでの四つの局面を並べると、任せられる範囲がはっきりしてくる。共通しているのは、AIが触るのは「集める・そろえる・並べる」までで、その先の判断と、人に向けた発信は必ず人を通る、という形になっていることだ。塾以外の業種でも考え方は同じで、身近な業務からの入り方は沖縄の中小企業のAI活用でも触れているとおりである。

局面いま時間がかかっていることAIに任せられること人が決めること
体験申込入り口ごとに散った問い合わせを探す要点を抜き出して一覧に整える誰がいつ折り返すか、何を提案するか
入塾面談面談後の清書と、前回内容の掘り起こし録音から要点と次の約束を要約するコースの提案、費用や見込みの伝え方
指導報告報告の催促と、体裁を整え直す作業走り書きを保護者向けと内部向けに整形指導方針の変更、担当の組み替え
継続・退塾生徒ごとの変化を見比べる時間記録を時系列に並べ、変化を指摘する面談を入れるか、どう声をかけるか

始め方としては、四つを同時に動かさないほうがいい。どれか一つを選び、最初の一か月はAIが出したものを人が必ず一度読む。そこで見つかる直しの多くは、学年の取り違えや教科名の表記といった小さなもので、直し方をそのつど伝えれば精度は上がっていく。逆に、一か月経っても毎回大きく書き直しているなら、その局面はまだ任せる段階ではないというだけの話で、いったん引き上げればいい。

講師が入れ替わっても、記録のほうは残るようにする

塾にとっていちばんの資産は、生徒一人ひとりが「どこでつまずいて、何がきっかけで分かるようになったか」の履歴だと思う。ところがこの履歴は、往々にして担当講師の手帳や個人のやりとりの中にある。非常勤の講師が就職で抜ける、大学を卒業して県外に出る——沖縄の塾では毎年のように起きることで、そのたびに履歴が静かに消える。次の担当が同じ質問を最初からやり直し、保護者に「前もお話ししたんですが」と言わせてしまう。

これを防ぐのに必要なのは、立派なシステムよりも、置き場をひとつに決めることと、書き方の言葉をある程度そろえることだ。表記ゆれを吸収して形を整えるところはAIが引き受けられるので、講師には「観察したことを短く書く」だけを求めればいい。担当が替わるときには、その生徒の記録をAIに要約させて引き継ぎの下敷きにする。用意するのは、どこでつまずいてきたか、何が効いたか、家庭が気にしていること、直近三か月の様子、の四点でいい。

そのうえで、人が読んで抜けているところを口頭で足す。「この子は褒めると崩れるので淡々と進めたほうがいい」といった勘どころは、たいてい記録に書かれていないからだ。属人性をゼロにする必要はないし、良い講師の勘は残ってほしい。消えないようにしておく、というだけで十分に効く。

まとめ:戻ってきた二時間を、どこに使うか

ここまで挙げたのは、どれも一つひとつは十分か二十分の話だ。それでも、体験申込の折り返し、面談の清書、指導報告の催促、生徒ごとの様子の見比べを一週間分たし合わせると、教室長ひとりで二時間前後になる塾は珍しくない。まとめて浮かせようとせず、局面ごとに一つずつ削っていくほうが、現場は無理なくついてくる。まずは体験申込の受け皿を一か所にするところからでもいい。どの局面が重いかは塾の規模や指導形態によって変わるので、そこは実態を見ながら決めることになる。

実際の一歩目は、道具を選ぶことではなく、いまの一週間で何にどれだけ時間を使っているかを書き出すことだ。一週間分でいい。探し物に何分かけたか、催促に何回動いたかが並べば、どこから手を付けるべきかはたいてい自分で分かる。道具の話はその後で足りる。

そして、戻ってきた二時間の使い道こそが本題である。面談をもう一件入れる、伸び悩んでいる生徒の教材を組み直す、離れかけている家庭に一本電話を入れる。いずれも人にしかできない仕事で、しかも塾の評判を左右する仕事だ。事務のために削られていた時間が、そちらに戻る。自分の教室ならどこから手を付けられそうか、現状の流れを一度整理してみたいということであれば、お問い合わせから気軽に声をかけてほしい。何をどこまで任せられるかは、教室の状況によって変わるので、まずは今の一週間の使われ方を見るところからになる。