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欲しい答えが返ってこない生成AI|指示の出し方を4つの型で直す

AI活用

「生成AIを使ってみたけれど、当たり障りのない文章しか返ってこなかった」。県内の会社を回っていると、この一言をよく聞く。先に結論を書いておくと、返ってくる答えが薄い原因はAIの性能ではなく、こちらが渡した指示文に役割・前提・出力形式・見本の四つが抜けていることがほとんどだ。しかもこの四つは特別なテクニックではなく、新しく入った社員に仕事を頼むときに口頭で自然と伝えている内容とほぼ同じで、それを文字にして渡していないだけである。

この記事では、実際に「使えない」と判断されがちな指示文を一つそのまま置いて、そこに四つの型を一段ずつ足していく。足すたびに返ってくる答えがどう変わるかを追いかけ、最後に社内の誰が使っても同じ水準になる指示テンプレ一枚に落とす。読み終えたときに、明日の自分の業務でそのまま試せる形になっていることを目指す。

諦める直前の指示文を、そのまま置いてみる

よくあるのは、こんな一行である。「求人票の文章を書いて。」これだけ打ち込んで送信し、返ってきた文章を三行読んで「やっぱりうちには使えない」と画面を閉じる。実際に返ってくるのは、風通しの良い職場です、アットホームな雰囲気でお待ちしています、未経験の方も安心して働けます、といった一式だ。日本語として破綻はしていないが、社名を差し替えればどこの会社でも通ってしまう。そのまま求人票に載せたところで、応募者の画面では他の何十件と同じ景色にしか映らない。

ここで起きていることは単純で、AIは渡された情報の範囲で、いちばん外れの少ない答えを組み立てている。業種も、勤務地も、募集の背景も、誰に読ませたい文章なのかも書かれていないのだから、最大公約数の文章が出てくるのは当然だ。人に置き換えれば、廊下ですれ違った社員に「求人票よろしく」とだけ言って通り過ぎたようなもので、戻ってきた紙が一般論で埋まっていても文句は言えない。頼み方が悪かった、で終わる話である。

逆に言えば、直す場所ははっきりしている。別のAIに乗り換える前に、こちらが渡していない四つを渡せばいい。ここから先は、この「求人票の文章を書いて。」という一行に、一段ずつ足していく。

型①「役割」——誰として答えるかを決める

短い指示文に役割の型を足して、伝わる形へ整えていくイメージ

最初に足すのは役割だ。「あなたは、県内の中小企業の採用を長く担当してきた採用担当者です。応募者が抱く不安に先回りして答える文章を書きます。」この二文を指示文の冒頭に置くだけで、返ってくる文章の立ち位置が変わる。さっきまで会社を宣伝していた文章が、応募する側が何を気にするのかを起点に組み立て直される。

変化としていちばん分かりやすいのは語彙である。役割を与える前は「やりがいのある仕事です」で終わっていたところが、入社後の最初の三か月はどんな仕事から始めるのか、未経験だと何が大変なのか、といった、面接で実際に聞かれる問いを先に拾いにいくようになる。役割は、AIにとって答えの探し方を決めるスイッチのようなもので、同じ質問でも開ける引き出しが変わる、と考えると腑に落ちやすい。

ただし、役割だけを足しても中身は薄いままだ。ベテランの採用担当者になりきったところで、その会社のことを何も知らなければ書けるのは一般論の上等版でしかない。役割は方向を決める型であって、材料を渡す型ではない。実際この段階で返ってくる文章の感想は、たいてい「読みやすくはなったが、まだうちの話ではない」に落ち着く。効き目が大きいのは、次の型だ。

型②「前提」——自社と商圏の事情を渡す

二つ目は前提である。ここで渡すのは、社内では当たり前すぎて誰も口に出さない情報だ。たとえば住宅設備の工事を請け負っている会社なら、社員は十数名、那覇と浦添を中心に現場を回っていて、朝はいったん事務所に集合してから社用車で出る。年に数回は離島の現場があり、旧盆と慰霊の日は現場が止まる。直近の入社者は既存社員の紹介と、県外から戻ってきた人が半々。募集の背景は退職の補充ではなく受注が増えたこと。運転免許は必須で、資格は入社後に取ってもらう想定——このくらいの粒度で書き出して、指示文に貼る。

すると返ってくる文章に、朝の集合から現場までの一日の流れや、離島出張が年に数回ある前提での家庭との折り合い、旧盆前後の働き方といった、その会社でしか書けない具体が入りはじめる。応募者が本当に知りたいのはここで、通勤にどれだけかかるのか、土曜はどうなのか、車は自分で出すのかといった生活の話を先に埋めてくれる求人票は、それだけで他と別物に見える。四つの型のなかで、前提はいちばん投資対効果が高い。

渡すときのコツは、良い話だけを選ばないことだ。繁忙期は残業が出る、夏場の現場はきつい、といった条件も一緒に渡したほうが、結果として応募者に刺さる文章になる。都合の悪い部分を伏せた前提からは、伏せたぶんだけ当たり障りのない文章しか出てこないし、そこを隠したまま採用しても面接や入社後に食い違いが出る。AIに正直に話すことは、そのまま募集要項の精度に返ってくる。

もう一つ、渡してよい情報の線引きは先に決めておきたい。社員個人の評価や健康の話、未公開の取引条件、顧客から預かった図面や名簿は入れない。会社案内やホームページにすでに載っている範囲、それと社内で共有しても差し支えのない業務の流れ。この二つに限ると決めておけば迷わない。何をどこまで渡すかの考え方は沖縄の中小企業のAI活用でも整理している。

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型③「出力形式」——形を決めると中身が締まる

三つ目は出力形式だ。「見出しを三本、それぞれ本文は百五十字程度。最後に応募方法へつなぐ段落を一つ。箇条書きは使わず地の文で書く。」と書き足す。形式の指定というと体裁の話に聞こえるが、実際に締まるのは中身のほうである。

字数を切ると、AIは詰め込めない。百五十字しかなければ、書くことを選ばなければならず、選べば優先順位が出る。何も指定しないときにだらだらと続いていた美辞麗句が落ちて、事実が残る。見出し三本という枠も同じで、この会社の魅力を三つに絞るとどれか、という判断がそこで起きる。形を決めることは、AIに考えさせる場所を作ることに近い。

もう一つの効果は、比較と修正がしやすくなることだ。同じ器に入れて出させれば、二案目、三案目との差分が一目で分かる。「二案目の見出し二本目だけ採用して、あとは一案目」といった指示も出せる。器がばらばらだと、どれが良かったのかを言葉にするところから始めなければならない。求人媒体の入力欄が何字までなのか、印刷して現場の休憩室に貼るのか、その後工程に合わせて器を決めておくと、手戻りがほぼなくなる。

型④「見本」——良い例と悪い例を一つずつ見せる

四つ目は見本である。過去に手応えのあった自社の文章を一本まるごと貼り付けて、「このトーンに寄せて書いて」と添える。あわせて、避けたい言い回しも挙げておく。アットホーム、風通しの良い、やりがい、成長できる環境——このあたりを名指しで禁止すると、文章の顔つきがはっきり変わる。

見本が効くのは、トーンが言葉で説明しにくいものだからだ。「堅すぎず、軽すぎず、地に足のついた感じで」と何行書いても、その「感じ」は伝わらない。実物を一本見せれば一発である。文末の長さ、漢字とひらがなの割合、専門用語をどこまで残すか、そういった無数の要素をまとめて渡せるのが見本という型で、説明を積み重ねるより速い。

手元に良い見本がない、という会社は多い。そのときは他社の求人票をそのまま貼るのではなく——他人が書いた文章をまるごと素材にするのは避けたい——社内報や年始の挨拶文、お客さまに送ったお礼のメールなど、自社の言葉づかいが出ているものを使う。文章の種類が違っても、その会社らしい話し方は十分伝わる。逆に、悪い例として貼るなら、去年出して反応がいまひとつだった自社の求人票がちょうどいい。何がダメだったかまで書き添えれば、同じ轍は踏まなくなる。

四つを重ねた指示文と、答えの変わり方

役割・前提・出力形式・見本の4つを重ねて1枚の指示テンプレにまとめるイメージ

四つを一つにまとめると、指示文は二十行ほどになる。役割の二文、前提の十数行、依頼の一文、出力形式の三行、見本の貼り付け。書くのに五分かかる。その五分をかけたあとに返ってくる文章は、固有名詞と条件欄を突き合わせて直すくらいで、社内回覧に出せる状態になっていることが多い。最初の一行だけを送っていたときと比べて、こちらの手数はほとんど変わらないのに、出てくるものがまるで違う。

そして重要なのは、五分かけた指示文がそのまま資産として残ることだ。次に別の職種で募集をかけるときは、前提の欄を差し替えるだけでいい。営業の求人にも、パートの募集にも、同じ骨格が使える。使い捨ての一行と、貯まっていく二十行。この差が半年後にはっきり出る。

足す型指示文に加える一行の例返ってくる答えの変化
①役割あなたは県内中小企業の採用を長く担当してきた採用担当者です会社の宣伝から、応募者の不安に答える視点へ切り替わる
②前提社員十数名/那覇・浦添中心/離島出張は年数回/募集は受注増のため一日の流れや働き方など、自社でしか書けない具体が入る
③出力形式見出し三本・各百五十字・箇条書きなし・最後に応募方法へ長さと構造が安定し、二案目との比較や部分修正ができる
④見本去年の社内報のこの文章のトーンで/「アットホーム」は使わない言葉づかいが自社に寄り、決まり文句が消える

表に並べると、四つがそれぞれ別の仕事をしているのが分かる。役割は方向、前提は材料、出力形式は器、見本は手ざわり。どれか一つでも欠けると、欠けた分だけ人が後から埋めることになる。時間がないときの優先順位を付けるなら、前提、見本、出力形式、役割の順だ。前提を一段落貼るだけでも、返ってくるものの手触りは変わる。

社内の誰が使っても同じになる、指示テンプレ一枚

ここまでの内容を、埋めるだけの一枚にする。項目は五つだけでいい。

役割:あなたは〇〇として、△△の立場に立って書きます。
前提:業種/規模感/営業エリア/一日の流れ/今回の背景/触れてほしくないこと。
依頼:何を、誰に向けて、何のために作るのか。
出力形式:長さ/構成/使ってよい形式/どこで使うか。
見本:寄せたい自社の文章を一本/避けたい言い回しを二つ三つ。

これを共有フォルダに置いて、埋めてから送る、という運用にする。ワードでもテキストでも構わない。埋める作業そのものが仕事の整理になっていて、書いているうちに「そもそも誰に向けた求人だったか」が固まる、という副産物もある。

ただしテンプレを配っただけでは定着しない。前提の欄を毎回一から書くのが面倒で、二週間もすると元の一行に戻る人が出る。そこで、会社の基本情報だけを書いた前提シートを別に一枚作り、コピーして貼れるようにしておく。あわせて、うまくいった指示文はチャットのスレッドに残す。誰かが工夫した一行が、翌週には全員の手元にある状態を作るほうが、研修を一度やるより効く。月に一度、使われていない項目を削って身軽に保つと、なお続く。

ここまで回りはじめると、毎回人が指示文を組み立てるより、よく使う手順を業務の側に埋め込んでしまったほうが早い場面が出てくる。決まった書式の文書作成や、社内の問い合わせ対応など、繰り返しが多いところからAIエージェントに寄せていく形だ。何をどこまで任せられるかは業務の内容によるので、そこは実際の手順を見ながらの相談になる。

まとめ

生成AIから欲しい答えが返ってこないとき、疑うべきはAIより先に指示文である。役割で方向を決め、前提で材料を渡し、出力形式で器を決め、見本で手ざわりを揃える。この四つを一段ずつ足していけば、同じAIに同じことを頼んでも、返ってくるものは別物になる。今回は求人票を例にしたが、見積の送付状でも、営業メールでも、社内マニュアルでも、足す順番は変わらない。

まずは手元にある「使えなかった」指示文を一つ引っ張り出して、前提の段落を足すところから試してほしい。それだけで手応えが変わるはずで、変わったなら残りの三つを足す価値がある。社内で回す仕組みまで含めて整えたい場合や、どの業務から手を付けるべきか迷う場合は、内容をうかがったうえでの相談になるので、お問い合わせから現状を聞かせてもらえればと思う。