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沖縄の士業事務所のAI活用|書類作成・調査・顧客対応を生成AIで効率化

AI活用

沖縄の士業事務所で生成AIを使うかどうかを考えるとき、順番を間違えると話が前に進みません。先に決めるべきなのは「どの業務に使うか」ではなく、どこまでをAIに任せて、どこから先は必ず人が目を通すかという線引きです。士業の仕事は、最後に名前を出して顧客に渡す人が責任を負う構造になっています。だから、何度でも直せる下調べや下書きの工程と、渡した瞬間に責任が生じる工程を、同じ扱いにしてはいけません。

この線を最初に引いてしまえば、生成AIは事務所の中でかなり自由に使えます。逆に、線引きのないまま「便利そうだから」と使い始めると、顧客情報の扱いが曖昧になり、出力をそのまま流用する人が出て、結局「うちの仕事には合わない」という結論で終わります。ここでは、守秘義務と確認責任という士業特有の前提を押さえたうえで、事務所として決めておきたい使い方のルール、そして実際に任せて差し支えのない三つの仕事を順に見ていきます。

任せてよい仕事と、人が締める仕事を分ける基準

区別の基準は、業務の種類ではありません。間違いが顧客の目に触れる前に直せるかどうか、これ一点です。相続の相談を受けて、必要になりそうな戸籍や添付書類の見当をつける段階は、間違っていても所内で気づけば何の害もありません。ところが同じ案件で、申請書に日付や氏名を入れて提出する段階になると、一文字の誤りが顧客の不利益に直結します。前者は任せられる仕事、後者は人が締める仕事です。

この基準で自分の一日を振り返ると、意外に前者の時間が長いことに気づきます。条文や制度の当たりをつける、過去の似た案件を思い出す、顧客への説明の言い方を考える、メールの一通目を書き出す。どれも成果物そのものではなく、成果物に至るまでの助走です。沖縄の事務所は所員が少なく、この助走を代表者本人がこなしていることが多いので、ここが軽くなると効き方が大きい。

一方で、後者は減りません。むしろAIを使うほど、人が締める工程の重みは増します。下書きが早く上がってくるのだから、確認に回せる時間が増えるという理解が正しい向き合い方です。

まず決めるのは、何を入力しないかという線

顧客情報を外に出さない線引きを表すイラスト

士業にとって最初の関門は精度ではなく守秘義務です。顧客から預かった情報は、事務所の外に出さないという前提で預かっています。生成AIの多くは外部のサービスであり、入力した文章はいったん事務所の外に出ていきます。ここを曖昧にしたまま使い始めるのが、一番避けたい形です。

実務的な整理は難しくありません。顧客が特定できる情報は入力しない、と決めるだけで大半は片づきます。氏名、住所、生年月日、会社名、マイナンバーや登記の情報、通帳や決算書の数字。これらを外して、事案の骨格だけを言葉にします。たとえば「県内在住の相談者、相続人のうち二名が県外、被相続人名義の土地が複数の字にまたがっている」といった書き方です。この程度に抽象化すれば、論点を洗い出す相談相手としては十分に働きます。

もう一つ、法人契約のサービスを使うかどうかも事務所として決めておきたい点です。入力内容を学習に使わない設定を選べるものもありますが、設定名や条件はサービスごとに違い、時期によっても変わります。どの契約でどう扱われるかは各社の規約を確認するのが確実で、判断に迷うなら導入前に相談してから決めた方が早い部分です。いずれにしても、規約がどうであれ「顧客が特定できる情報は入れない」という所内ルールは残しておくのが安全です。

出力の責任は、AIに移らない

生成AIの文章は驚くほど整っています。だから危ないのです。条文の番号がそれらしく並び、要件が箇条で示され、結論まで書いてある。読んでいて引っかかりがないぶん、確認が甘くなります。しかし、そこに書かれた条文が改正前のものだったり、実務では通らない運用だったり、そもそも存在しない条文だったりすることがあります。

言い方を変えると、生成AIの出力はもっとも尋ねやすい相談相手の口頭意見です。参考にはするが、顧客に伝える前に一次資料で確かめる。この扱いを崩さないことが、士業がAIを使う際の唯一の必須条件だと考えていいでしょう。条文なら現行法の条文そのもの、手続きなら所管の窓口や公式の案内、様式なら最新の様式。裏取りの手間を惜しむと、AIを使わない方が速かったという結果になります。

沖縄の場合、県や市町村ごとの運用差、離島での窓口対応の違い、農地や所有者不明土地のように地域事情が絡む論点が多く、一般的な説明が当地の実務とずれることが起こります。AIが出した一般論と、実際の窓口の運用は別物として扱う。この感覚は、県内で長く実務をしている人ほど自然に持っているはずです。

所内で共有しておく、四つの取り決め

ルールは短いほど守られます。事務所として決めておきたいのは、入力してよい情報の範囲、裏取りの義務、顧客に出す前の確認者、そして使ったことを記録に残すかどうか。この四つを紙一枚にまとめて、所員全員が同じ理解でいる状態にしておけば、あとは各自が自由に使って構いません。

工程AIに任せる部分人が必ずやること
制度・論点の下調べ関係しそうな論点や検討漏れの洗い出し現行法・公式の案内での裏取り
書類の下書き骨組みと一次案の文章化事案への当てはめ、数値と固有名詞の照合
顧客向け説明資料専門用語のかみ砕き、構成の整理断定の度合いの調整、最終的な言い切り
提出・押印・申請任せないすべて人が実施

表の一番下が空欄でないことが大事です。任せない工程を明記すると、ルールが禁止事項の羅列ではなく役割分担の話になり、所内で受け入れられやすくなります。

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下調べは、答えではなく問いを出させる

調査でAIを使うときのコツは、答えを求めないことです。求めるのは検討すべき論点の一覧です。「この事案で見落としがちな点を挙げてほしい」「ほかに確認すべき書類はないか」という形で尋ねると、経験のある人でも案件の入り口で見落としやすい枝を拾ってくれます。出てきた枝を自分で一つずつ潰していく。この使い方なら、誤った条文が混じっていても実務上の害がありません。

たとえば那覇の事務所で、県外に出た相続人を含む相続の相談を受けたとします。相続人の所在確認、必要となる戸籍の範囲、遺産に含まれる不動産の名義の状態、共有になっている土地の扱い。頭の中では順番に並んでいても、初回相談の場で全部を口に出せるとは限りません。相談の前に論点を一覧にしておくと、その場で聞き漏らしが減り、二度目の来所を減らせます。離島の顧客で、来所そのものが負担になる案件ほど効きます。

建設業許可や外国人従業員の在留に関する手続きのように、要件が細かく分かれている分野でも同じです。要件そのものは必ず公式の案内で確認しますが、「何を確認しに行くべきか」の見当をつける段階でAIを挟むと、調べ始めが速くなります。

下書きは、白紙をなくすために使う

AIが作った下書きを人が確認して仕上げる流れのイラスト

文章を書く仕事で一番時間を食うのは、実は書いている時間ではなく、書き出す前に止まっている時間です。顧客への報告書、契約書のたたき台、行政への説明文、少し込み入った内容のメール。何を書くかは頭にあるのに、一行目が出てこない。ここに生成AIを入れると、白紙が埋まった状態から始められるようになります。

やり方は単純で、事案を抽象化したうえで「こういう内容を、この相手に、この分量で伝える文章の骨組みを作ってほしい」と頼みます。返ってきた文章はそのままでは使えません。表現が硬すぎたり、逆に断定しすぎていたり、当地の実務に合わない前提が混じっていたりします。それを直していく作業は、白紙から書くより明らかに軽い。所内で「一次案はAI、二次案から人」という運び方を共有しておくと、若い所員でも書き出しに詰まらなくなります。

ただし、顧客に渡す文書では固有名詞と数値の照合を人が必ず行います。AIが生成した文章には、もとの指示になかった数字や日付がまぎれ込むことがあります。文章の流れを整えるうちに、それらしい具体が補われてしまうためです。読み流さず、名前と日付と金額に関わる箇所は一つずつ元資料と突き合わせる。この一手間を所内の作業手順に組み込んでおくのが安全です。

顧客への説明を、専門用語なしで組み直す

士業の仕事のうち、生成AIとの相性が意外に良いのが、顧客への説明づくりです。制度の中身を正確に理解している人ほど、正確に話そうとして専門用語が増え、相手に届かなくなります。ここでAIに「この内容を、経理担当が一人だけの会社の社長に説明する言い方に直してほしい」と頼むと、噛み砕かれた表現が返ってきます。中身の正しさは自分が担保できるので、言い換えの部分だけを借りる形になり、リスクが小さい。

沖縄の顧問先は、宿泊や飲食、小売のように季節で忙しさが大きく振れる業種が多く、説明のために顧客の時間を長く取れない場面がよくあります。夏の繁忙期に一時間の説明はまず入りません。だからこそ、A4一枚に収まる説明資料や、要点を三つに絞った案内文の価値が高くなります。作成の下ごしらえを任せられるなら、資料の質を落とさずに顧客ごとの手当てができます。

この使い方で注意するのは、断定の度合いです。かみ砕く過程で、条件付きの説明が言い切りに変わってしまうことがあります。「内容によって変わる」「要相談」と留保すべき箇所が、断定に置き換わっていないか。顧客に渡す前に、そこだけは自分の目で確かめます。制度の適用や費用に関わる部分は特にです。

少人数の事務所こそ、線引きを紙に残す

県内の士業事務所は、代表者と数名という規模が多く、業務のやり方が個人の頭の中に入っています。生成AIの使い方も同じで、代表者だけが上手に使っている状態になりがちです。それでも成果は出ますが、所員が増えたときや、誰かが辞めたときに、ルールごと消えてしまいます。

だからこそ、入力してよい情報の範囲と、人が締める工程の一覧は、短くても紙に残しておく価値があります。新しく入った人に最初に読ませるものが一枚あるだけで、危ない使い方はほとんど起きません。業務そのものを自動化する段階に進むかどうかは、その後の話です。定型のやりとりや振り分けまで任せる方向を検討したくなったら、AIエージェントの考え方も併せて見てみると判断しやすくなります。どの範囲までを自分の事務所でやるかは、扱っている案件の性質によって変わるので、一律の正解はありません。

まとめ

士業事務所の生成AI活用は、便利な機能を探す話ではなく、責任の所在を変えないまま、助走の部分だけを軽くする取り組みです。顧客が特定できる情報は入力しない。出力は一次資料で裏を取る。顧客に渡すものは人が締める。この三つを守っている限り、下調べ、下書き、説明資料づくりの三領域では今日から使い始められます。

逆に、この三つのどれかを崩した瞬間に、AIは事務所の信用を削る道具に変わります。使う・使わないの判断より先に、線をどこに引くかを決めておくこと。その一手間が、沖縄の小さな事務所が安心してAIを使い続けるための条件です。自分の事務所の業務でどこまで任せられるかを整理したい場合は、お問い合わせから現状の業務内容をお知らせいただければ、線引きの考え方から一緒に整理できます。