工程表の組み直しに毎週半日かかる工事会社へ|遅れの影響をAIで洗い出す
工程表の組み直しに毎週半日を溶かしている会社は、たいてい「線を引き直す作業」が重いのだと思っています。ところが実際に手を止めているのは、線そのものではありません。基礎が一日ずれたときに、次に入る鉄筋屋はいつ来られるのか、生コンの手配は取り直しか、足場の解体日は動くのか、施主への報告はどの段階で入れるのか──この「遅れが誰にどこまで波及するかを思い出す作業」に時間が吸われています。だとすれば、AIに任せるべきところもそこです。工程表を自動で描かせるのではなく、遅れを一行入力したら、影響の及ぶ範囲と連絡すべき相手を洗い出させる。この記事では、手書きやExcelの工程表を使い続けたまま、その洗い出しだけをAIに肩代わりさせる進め方を、沖縄の現場で実際に起きる遅延要因に沿って書いていきます。
半日かけて直しているのは、線ではなく「段取りの伝え方」
工程表の組み直しを見ていると、線を引くこと自体は十分もあれば終わっています。長いのはその前後です。カレンダーを見ながら「来週は旧盆で職人が捕まらないな」と考え、電話帳をめくって協力会社の担当者を探し、前に送ったメールを開いて言い回しを確認し、施主に出した工程表のどの版を渡していたかを思い出す。半日というのは、この行ったり来たりの合計です。
しかも、この時間は会社の中で一人か二人に集中します。現場監督が三つ四つの現場を掛け持ちしていれば、工程表を触れるのはその人だけで、手が空くのは夕方以降になる。結果として組み直しが翌朝にずれ、協力会社への連絡がさらに半日遅れ、前日に言ってもらえれば動かせた職人が動かせなくなる。遅れが遅れを呼ぶ構造は、工程表の精度ではなく連絡が出るまでの時間で決まっているのが実情です。
ここを踏まえると、最初に手をつけるべきなのは工程管理システムの導入ではありません。今の工程表のまま、遅れが出た瞬間に「影響範囲の下書き」と「連絡文の下書き」が数分で手元に出てくる状態をつくること。それだけで、組み直しにかかる半日のうち、かなりの部分が前倒しで片づきます。
一本の遅れが、どこまで転がっていくか
たとえば外構工事で、コンクリート打設の予定日に雨が続いて二日止まったとします。表面上の影響は打設が二日後ろにずれるだけですが、実際にはそこから枝分かれします。養生期間が二日ずれるので、型枠のばらしも二日後ろ。その職人は翌週別の現場に入る予定が入っていて、押し出すと今度はそちらの現場が止まる。足場の解体を頼んでいたリース業者には、解体日が動くなら賃料の期間が変わるので早めに一報が要る。舗装業者は前日昼までの連絡が条件になっていたかもしれない。施主には、引き渡し日が動くのか動かないのかを、動かないなら「動かない」ことを伝えなければ不安が残る。
この枝分かれを頭の中だけで追えるのは、現場を全部把握している一人だけです。その人が現場に出ていれば、把握は夜まで持ち越されます。逆に言えば、この枝分かれさえ紙に書き出せれば、あとは担当者でも事務でも手分けして連絡できる。工程表の組み直しがボトルネックなのではなく、枝分かれを書き出す作業が一人に張りついているのがボトルネックだということです。
AIが得意なのはまさにこの部分です。何がどう繋がっているかを一度きちんと書いて渡しておけば、「基礎が二日遅れた」という一行から、後ろに続く工程と、その工程を担っている相手と、連絡の期限を並べて返してきます。判断はしません。並べて出すだけです。ですが、半日の大半はその並べる作業だったはずです。
組み直しを三つに割る──遅れの入力、影響範囲の抽出、連絡文の下書き

やることを一気にAIへ渡そうとすると、だいたい失敗します。「この工程表を見て組み直して」と頼むと、もっともらしい表は出てくるものの、現場の事情──あの職人は水曜しか空いていない、あの業者は前日連絡が必須──が反映されないまま、使えない案が返ってくるからです。そこで、作業を三つに割ります。
一つ目が遅れの入力。何が、いつから、何日、なぜ止まったのかを、決まった形で短く書き出す工程です。二つ目が影響範囲の抽出。入力した遅れに対して、後ろにずれる工程、関係する協力会社、期限が迫っている連絡先を洗い出させます。三つ目が関係先への連絡文。抽出した相手ごとに、伝える内容を下書きさせる工程です。
三つに割る理由は、AIが間違えたときにどこで間違えたかが分かるからです。連絡文がおかしければ文面の指示を直せばいい。影響範囲が抜けていれば、工程のつながりの書き方を直せばいい。一体で回していると、どこを直せば良くなるのか分からず、「AIは使えない」で終わってしまいます。分けておけば、一つずつ現場に合わせて育てられます。
手書きとExcelの工程表は、そのまま出発点にしていい
この話をすると、まず工程管理ソフトを入れるべきかと聞かれます。結論から言えば、急ぎません。手書きのバーチャート工程表でも、Excelで枠を塗っている工程表でも、出発点としては十分です。手書きなら写真を撮って読ませればよく、Excelならそのファイルを渡せば読めます。大事なのは形式ではなく、工程と工程のつながりが書いてあるかどうかです。
ただし一つだけ、最初に手間をかける価値がある準備があります。それは、工程どうしのつながりを一度だけ文章で書き出しておくことです。「型枠ばらしは打設の翌々日以降」「外部足場の解体は外壁の仕上げ完了後」「舗装は前日昼までに連絡」といった具合に、普段は頭の中にある決まりごとを、箇条書きでいいので三十行なり五十行なり書いておく。この一枚があるかないかで、AIの返す影響範囲の質はまったく変わります。
もう一つ、協力会社ごとの連絡条件も同じ紙にまとめておきます。何日前までに言えば動けるのか、連絡手段は電話かメールかLINEか、担当者は誰か。これは工程表には書いていない情報ですが、組み直しに半日かかる原因の半分はここにあります。工程表をデジタル化するより、この一枚を作るほうが先です。沖縄の中小企業でAIをどう業務に組み込むかという観点でも、手元の紙を整えるところから始めるほうが続きます。
雨天・資材待ち・人手──要因ごとに、伝え方を変える
遅れの入力は、要因によって添えるべき情報が違います。ここを揃えないと、AIは「何日ずれるか」しか見ず、現場として本当に困る部分を見落とします。沖縄の現場でよく出る四つの要因について、入力の仕方を整理します。
雨天の場合は、止まった日数だけでなく再開後に乾燥や養生の時間が必要かどうかを必ず添えます。「二日雨で止まった」だけだと二日ずれで返ってきますが、実際には地盤が乾くまで重機が入れず三日四日になることがある。台風であれば、止まる日数に加えて足場の養生シートの巻き取りと復旧の日数も入力します。資材待ちなら、入荷予定日そのものより「予定日が確定しているのか、未定なのか」が重要です。未定のまま組み直すと、また来週同じ作業をやることになります。
| 遅延の要因 | 入力時に必ず添える情報 | 抽出させたい影響 |
|---|---|---|
| 雨天・台風 | 止まった日数/再開後の乾燥・養生に要する日数/足場養生の復旧有無 | 後続工程のずれ/重機・仮設の再手配/施主への状況報告の要否 |
| 資材待ち | 入荷予定日が確定か未定か/代替品で進められるか | 先行してできる工程の有無/職人の入場日の組み替え |
| 人手の確保が難しい | 不足している職種/確保できる見込みの週/他現場との掛け持ち状況 | 他現場への波及/工程の順序を入れ替えられる箇所 |
| 検査・立会い待ち | 待っている相手(行政・施主・元請)/次の候補日 | 待ちの間に進められる工程/候補日ごとの引き渡しへの影響 |
人手の不足は、他現場との関係を入力するかどうかで結果が変わります。一つの現場だけ見れば「来週に回せばいい」で済む話が、掛け持ちを入力すると「来週はもう埋まっているので再来週」と返ってくる。検査や立会い待ちは、待っている相手を明示するのが肝心です。行政の検査なら候補日は先方都合で、施主の立会いなら土日も選択肢に入る。同じ「待ち」でも動かし方がまったく違います。
影響範囲は「どの工程が」ではなく「誰が困るか」まで出させる

影響範囲を抽出させるとき、多くの人は「どの工程が何日ずれるか」を求めます。これだけだと、出てきた表を見ながら結局また電話帳をめくることになります。指示の段階で、ずれる工程ごとに、関係する会社と担当者、いつまでに連絡が必要かを並べて出すところまで求めてください。そのために、前の章で作った連絡条件の一枚を一緒に渡します。
あわせて出させておくと効くのが、「連絡しなくていい相手」です。組み直しのたびに全社へ一斉に連絡すると、受け取る側は「また変わったのか」と慣れてしまい、本当に動いてほしいときに反応が鈍くなります。今回の遅れでは日程が動かない業者はどこかを明示させ、そこには送らない。この引き算のほうが、現場の信用を保つ意味では大きいかもしれません。
もう一点、抽出結果は必ず人が見て直す前提で運用します。AIは工程表と連絡条件の紙に書いてあることしか知りません。「あの親方は最近腰を痛めていて長丁場は無理」といった、書いていない事情は反映されない。出てきた一覧に赤を入れて直す形にしておけば、その赤入れがそのまま紙の更新材料になります。半年も回せば、抜けはかなり減っていきます。
連絡文はAIが下書きし、送るのは人が決める
三つ目の工程が連絡文です。ここは誤解されやすいのですが、AIに自動で送らせる話ではありません。相手ごとの下書きを用意させ、送るかどうか・何を足すかは人が決める。工事の連絡は一文の温度で受け取られ方が変わりますし、施主への報告は会社の姿勢そのものです。自動送信は仕組みとして持たないほうが、現場としては安心して使えます。
下書きの指示で効くのは、相手ごとに文体と情報量を変えさせることです。長く付き合っている協力会社には「打設が水曜にずれました。ばらしは金曜以降でお願いします」と短く。初めて組む業者には経緯を一行足す。施主には、遅れの事実と、引き渡し日への影響の有無と、次に連絡する時期の三点を必ず入れる。この三点を型として指示に書いておくと、担当者が誰であっても報告の水準が揃います。
実務では、LINEで済ませる相手とメールで残す相手が混在しているはずです。下書きも媒体ごとに分けて出させると、そのまま貼れる形になって手戻りが減ります。どこまで自動化し、どこを人の手元に残すかは会社の体制や現場の数によるので、その線引きはAI業務効率化の相談の中で一緒に決めていく部分です。
まとめ
工程表の組み直しに毎週半日かかっているとき、削れるのは線を引く時間ではなく、遅れがどこまで波及するかを思い出し、誰に何を伝えるかを組み立てる時間です。手書きやExcelの工程表はそのまま使い、工程のつながりと協力会社の連絡条件を一枚にまとめたうえで、遅れの入力・影響範囲の抽出・連絡文の下書きという三つに分けてAIに渡す。この形なら、既存のやり方をほとんど変えずに始められます。
最初から全現場でやる必要もありません。動きの多い現場を一つ選び、次に遅れが出たときに試してみる。出てきた一覧に赤を入れ、抜けていた条件を紙に足す。これを何度か繰り返すうちに、半日かかっていた作業がどのくらいまで縮むのかが見えてきます。効果の出方は現場の数や協力会社の構成によって変わるので、そこは実際の工程表を見ながらの相談になります。自社の工程表で試せるかどうか気になる場合は、お問い合わせからご相談ください。