決算前の資料集めで税理士を待たせる会社へ|AIで提出物の一覧を1か月前に
決算が近づくと、税理士事務所から「通帳のコピーはまだですか」「この支払いの中身を教えてください」と何度も連絡が来ます。社長は現場に出ていて、経理担当は毎月の請求処理で手一杯です。気づけば申告期限の直前になり、紙袋に詰めた書類を慌てて事務所へ持ち込むことになります。沖縄の中小企業では、こうした決算期を毎年くり返している会社が少なくありません。
先に結論を書きます。この詰まりの多くは、資料そのものが無いことよりも、足りないと気づくのが遅いことから起きています。決算月の1か月前に提出物の一覧を作り、足りないものを早めに洗い出しておけば、税理士を待たせる時間は減らせます。一覧づくり、依頼文の下書き、前年との見比べは、AIに向いている作業です。この記事では決算月から逆算して「1か月前・2週間前・1週間前・提出後」の4つの時点に分け、AIに任せる作業と人が確かめる作業を並べていきます。
税理士を待たせてしまうのは「探し始めるのが遅い」から
決算の資料集めが遅れる会社を見ていると、原因はだいたい同じです。資料が社内のあちこちに散らばっていて、誰が何を持っているのかを決算の直前になって初めて確かめ始めます。通帳は社長の車のダッシュボード、リース契約書は総務の引き出し、現場で立て替えた領収書は各担当の財布の中、という具合です。那覇の事務所と、中部や北部、離島の現場を行き来している会社なら、書類が物理的に離れた場所にあることも珍しくありません。
しかも税理士が求める資料には、社内で完結しないものが混ざっています。金融機関の残高証明書、借入金の返済予定表、取引先との残高の確認などは、頼んでから届くまでに日数がかかります。直前に気づくと、こちらがいくら急いでも間に合いません。社長が「そんな書類が要るのか」と初めて知るのが期限の10日前、というのはよくある話です。
そこで効いてくるのが、前もって一覧を持っておくことです。毎年求められる資料の大半は同じで、変わるのは「今年あった出来事」に関わる分だけです。前年の依頼内容と今年の動きを突き合わせれば、必要な資料の見当は早い段階でつきます。この突き合わせを人が毎年ゼロから思い出すのは大変ですが、材料をそろえてAIに渡せば、たたき台はすぐにできます。
決算1か月前|前年の依頼を材料に、AIで今年の提出物一覧を起こす

最初の時点は決算月のちょうど1か月前です。ここでは、前年に税理士から届いた依頼メールや資料リスト、前期の試算表の勘定科目一覧をAIに読ませて、「今年も必要になりそうな資料」の一覧を作らせます。前年のやりとりがLINEやメールに散らばっていても、貼り付けてまとめてもらえば、預金・売掛金・在庫・固定資産・借入金・保険といった区分ごとに整理された表が返ってきます。
そのうえで、今年あった出来事をAIに伝えます。「社用車を1台買い替えた」「新しく銀行口座を開いた」「春にパートを2人採用した」「宮古島の現場用に倉庫を借りた」といった内容です。AIはそれぞれに関係しそうな資料、たとえば売買契約書や車検証の写し、口座の残高証明書、賃貸借契約書などを候補として一覧に足していきます。前年には無かった項目が、この段階で目に見える形になります。
ここで人が確かめるべきなのは、一覧の各行に「誰が持っているか」と「いつまでに出せるか」を書き込むことです。AIは社内の誰がどの書類を保管しているかを知りませんし、口頭だけで決めた契約や、まだ帳簿に載っていない出来事も拾えません。社長や現場の責任者に一覧を見せ、「これ以外に今年変わったことはないか」を一度聞いておくと、抜けがかなり減ります。棚卸しをする会社なら、実施日と担当者もこの時点で決めておきましょう。決算日当日にあわてて数えるより、段取りを先に固めたほうが数字の確かさも上がります。
決算2週間前|足りない資料の「頼み方」をAIに下書きさせる
一覧ができたら、2週間前の時点で「まだ手元に無いもの」に印を付けます。ここからは依頼の作業です。金融機関への残高証明書の申し込み、取引先への残高確認のお願い、社内の各担当への領収書やカード明細の提出依頼など、相手ごとに文面が変わるので意外と手間がかかります。この下書きをAIに任せます。
「取引先の建設会社に、決算日時点の買掛金残高の確認をお願いしたい。丁寧に、ただし期日ははっきり」と伝えれば、AIは用件と期日と返信の方法が入った文面を作ります。社内向けなら「現場の班長あてに、今月中に立て替えた領収書を写真で送ってほしい。返事が来ない前提で、短く」と指示すれば、LINEで送りやすい長さに整えてくれます。沖縄では付き合いの長い取引先ほど電話ひとつで済ませがちですが、決算の資料は後から「言った・言わない」になりやすいので、要点を文字で残しておくと安心です。
この段階で人が確かめるのは、宛先と事実関係、それに送り方です。取引先名や日付、金額の書き方が合っているかは必ず目で見て確かめます。付き合いの深い相手には文面を送る前に電話を一本入れる、といった加減もAIには判断できません。もうひとつ気をつけたいのが、AIに渡す情報の範囲です。口座番号や個人の住所、従業員のマイナンバーなどは入力しない、社外のサービスに何を渡してよいかは社内でルールを決めておく、といった線引きは、道具を使い始める前に済ませておきましょう。
決算1週間前|前年との差分をAIに点検させ、説明の要る箇所を先に拾う
資料がおおむね集まった1週間前には、見方を変えて「数字の点検」に入ります。今期の試算表と前期の試算表をAIに並べて渡し、勘定科目ごとに大きく増減したところを挙げてもらいます。たとえば「外注費が前年の倍近くになっている」「旅費交通費が増えている」「雑収入に見慣れない入金がある」といった具合です。AIはそれぞれについて、税理士が聞いてきそうな質問の候補と、説明に必要な資料の候補も一緒に出してくれます。
税理士の手が止まるのは、資料が無いときだけではありません。数字の動きに説明が無いときも、確認の連絡が来て、そのぶん時間がかかります。先に「外注費の増加は、今期から那覇の案件を協力会社に一部出したため」「旅費は石垣島の工事で出張が続いたため」と短いメモを添えておけば、往復のやりとりを1回か2回は減らせます。このメモの下書きもAIに任せられます。
ただし、AIが挙げた増減はあくまで「確かめる候補」です。本当の理由を知っているのは社内の人間ですし、その支出をどの科目で処理するのが適切か、経費として認められるかといった判断は税理士の領分です。AIのメモをそのまま出すのではなく、事実と違うところを直し、判断が要る点は「ご相談したい点」として分けて書いておくと、税理士も確認しやすくなります。
ここまでの流れを、時点ごとにまとめると次のようになります。
| 時点 | AIに任せる作業 | 人が確かめる作業 |
|---|---|---|
| 1か月前 | 前年の依頼と今年の出来事から提出物一覧を作る | 保管者と提出期日を書き込む/一覧に無い出来事を聞き取る |
| 2週間前 | 不足資料の依頼文を相手ごとに下書きする | 宛先・日付・金額の確認/電話を入れるかの判断/渡す情報の線引き |
| 1週間前 | 前年との差分を洗い出し、説明メモを下書きする | 増減の本当の理由を書き直す/判断が要る点を税理士への相談事項に分ける |
| 提出後 | 税理士とのやりとりを要約し、次年度の一覧に反映する | 保管場所の決定/次回の担当者と開始日を決める |
提出後|税理士とのやりとりを、来年の一覧の元にする

資料を渡したら終わり、にしないのがこの仕組みの大事なところです。提出後も、税理士からの追加の質問や差し戻しはたいてい届きます。そのやりとりをメールやLINEから集め、AIに「どの資料が遅れたか」「何を聞かれたか」「次回は最初から用意しておくべきものは何か」の3点で要約させます。
この要約を、1か月前の時点で使った提出物一覧に書き足しておけば、翌年はそこから始められます。たとえば「残高証明書の申し込みが遅れ、届くまでに1週間かかった」と記録しておけば、来年は申し込みを1か月前の作業に前倒しできます。「現場の領収書が最後に固まって出てきた」なら、月ごとに写真で送ってもらう運用に変える、といった改善にもつながります。毎年少しずつ一覧を育てていくことで、決算の準備が特定の担当者の記憶に頼らなくなります。
人が決めるのは、書類とデータをどこにどう保管するかです。紙で残すもの、スキャンして共有フォルダに置くもの、会計ソフトに添付するものの区分は、会社の運用や法令上の保存の決まりに関わるため、保存の方法は税理士に確かめたうえで決めましょう。あわせて、来年の決算準備を誰がいつ始めるかを、この時点で予定表に入れておくと安心です。
AIに任せない線引き|判断と最終確認は、人と税理士が持つ
ここまで読むと、AIが決算の準備をほとんど肩代わりしてくれるように見えるかもしれません。ですが、この記事でAIに任せているのは「一覧を作る」「文面を下書きする」「差分を拾う」「やりとりをまとめる」という、材料を整える作業だけです。数字を確定させること、税務上の扱いを決めること、申告の内容に責任を持つことは、これまでどおり会社と税理士の仕事です。
AIは、それらしい理由や、ありそうな科目名を自信ありげに書くことがあります。前年との差分メモに「おそらく〇〇のため」とあっても、事実を確かめないまま税理士に渡せば、かえって確認の手間を増やしてしまいます。AIの出したものは必ず人の目を通してから外に出す。この一点を社内の約束にしておくだけで、道具としての使いやすさは大きく変わります。
また、決算の資料には取引先の情報や従業員の給与など、慎重に扱うべき中身が多く含まれます。どのAIサービスを使うか、入力したデータがどう扱われるか、社内の誰が使ってよいかは、会社ごとの事情によって答えが変わります。迷う場合は、税理士や社内の情報管理の担当者と相談しながら決めるのが確実です。
自社の決算の流れに合わせて仕組みにするには
最初から全部を仕組みにする必要はありません。まずは次の決算で、1か月前の一覧づくりだけでもAIでやってみてください。前年の税理士からのメールを集めて貼り付け、今年の出来事を書き足すだけでも、直前に慌てる場面はかなり減るはずです。うまくいけば、翌年は依頼文の下書きや差分の点検へと広げていけます。
一方で、会計ソフトのデータや共有フォルダの書類をAIが直接読み、決まった日に一覧と不足資料を担当者へ知らせるところまで自動にしたい、という会社もあるでしょう。そうした仕組みは、使っている会計ソフトや書類の置き場所、社内の体制によって作り方が変わります。沖縄セールスパートナーでは、業務の流れに合わせてAIが下準備を進めるAIエージェントの導入支援を行っています。沖縄の中小企業でのAI活用の全体像は沖縄の中小企業のAI活用の記事でも紹介しています。自社の決算準備のどこから手を付けるべきか整理したい場合は、お問い合わせからご相談ください。費用や進め方は内容によって変わるため、現状をうかがったうえでご提案します。
まとめ
決算の資料集めで税理士を待たせてしまうのは、多くの場合、足りない資料に気づくのが遅いためです。決算月の1か月前に前年の依頼と今年の出来事から提出物の一覧を作り、2週間前に不足分の依頼を出し、1週間前に前年との差分を点検して説明を用意し、提出後にやりとりを翌年の一覧へ書き足す。この4つの時点のうち、材料を整える作業はAIに任せ、事実の確認と判断は人と税理士が持つ、という分け方が進めやすい形です。今年の決算を、来年の準備がいちばん楽になる決算にするつもりで、まず1枚の一覧から始めてみてください。