総会の議案書と議事録に毎回3日|マンション管理会社がAIで1日に縮めるまで
マンション管理会社のフロント担当にとって、通常総会の準備は一年のうちでも机に向かう時間がとくに長い仕事です。理事会の記録をめくって議案書を組み、招集通知を出し、当日のメモから議事録を起こす。1物件あたり延べ3日ほどかかっているという声は、決して珍しくありません。結論を先に書くと、この3日のうちAIに任せられるのは「集める・下書きする・整える」作業です。ここを置き換えると、延べ1日前後まで縮められる見込みがあります。一方で、議決の数や賛否、金額、署名者のように内容を「確定させる」部分は、AIを入れた後も人が責任を持って決める必要があります。
この記事では総会の準備を、理事会の記録集め、議案書づくり、招集の案内、当日の記録、議事録の確定という5つの工程に分けます。工程ごとに、今のやり方とかかる時間、AIを入れた後のやり方とかかる時間を並べて見ていきます。また、それぞれの工程の最後には「ここは人が決める」という線を書いておきます。紹介する時間はあくまで一例で、物件の規模や議案の数、理事会の進め方によって大きく変わります。
3日はどこへ消えているのか。準備を5つの工程に分けて見る

「総会の準備に3日」とは言っても、まとまった3日間を使っているわけではありません。実際には、ほかの物件の漏水対応や業者との日程調整、入居者からの電話の合間に、細切れの作業が差し込まれています。手を付けるたびに「前回どこまでやったか」「去年の議案書はどのフォルダにあったか」を思い出すところから始まるので、作業そのものより、探し直して頭を切り替える時間がかさんでいきます。
沖縄の管理会社には、さらに地域ならではの事情が重なります。決算期が近い物件をいくつも担当していると、総会の時期が一度に集中します。台風シーズンの前に、外壁や鉄部の修繕を総会で決めておきたいという管理組合も少なくありません。那覇や浦添の物件では、本土にお住まいのオーナーや投資用に所有している方の割合が高いこともあり、委任状や議決権行使書のやり取りは郵送が中心です。そのため、どうしても準備を早めに始める必要があります。
こうして中身を分けてみると、時間を使っているのは「考える」作業ではなく、「探す・写す・揃える」作業だとわかります。生成AIが得意なのはまさにこの部分です。逆に、何を総会に諮るか、いくらで修繕するかといった判断はAIの仕事ではありません。地域の中小企業でAIをどこに使うかという全体像は、沖縄の中小企業のAI活用の記事でも整理しています。
工程ごとの「今」と「AI導入後」を一枚の表で並べる
まずは全体を一覧で見てみます。次の表は、議案が5本前後の中規模マンションを1物件担当した場合を想定した一例です。時間はフロント担当1人あたりの延べ作業時間で、理事長とのやり取りの待ち時間は含めていません。
| 工程 | 今のやり方 | 時間の目安 | AIを入れた後のやり方 | 時間の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 理事会の記録集め | 1年分の議事録・メール・LINEを開いて決定事項を手で拾う | 約4時間 | 記録をまとめて読ませ、決定・継続審議・報告に仕分けた一覧を作らせる | 約1時間 |
| 議案書づくり | 前年の議案書を書き換え、説明文を一から書く | 約8時間 | 前年の議案書と一覧を土台に、構成と説明文の下書きを作らせる | 約3時間 |
| 招集の案内 | 通知文・行使書の様式・送付先の確認を個別に作業する | 約4時間 | 議案書から通知文と議案の要旨を作らせ、名簿の照合を補助させる | 約1時間 |
| 当日の記録 | 進行を手伝いながら手書きでメモし、後で清書する | 約2時間 | 了承を得て録音し、文字起こしと要旨の整理を任せる | 約30分 |
| 議事録の確定 | 録音を聞き直して起こし、理事長と修正をやり取りする | 約6時間 | 文字起こしと議案書から規約の様式に沿った下書きを作らせる | 約2.5時間 |
合計すると、今のやり方はおよそ24時間で、1日8時間として3日分です。AIを入れた後はおよそ8時間で、1日分になります。ただし、表の右側の時間には、AIが作った下書きを人が読んで直す時間も含めています。AIに出させて終わりにするのではなく、確認する時間を最初から見込んでおくことが、この表を現実の数字にするための前提です。
工程1 理事会の記録集め。1年分のメモを探し回らない
今のやり方では、年度内に開いた理事会の議事録を1回分ずつ開き、総会に諮る事項を拾い出していきます。議事録がWordで残っていればまだ楽ですが、手書きをスキャンしたPDFや、理事長とのLINE、メールのやり取りの中でしか決まっていないこともあります。結局、全部に目を通すことになり、半日ほどかかります。
AIを入れた後は、その年度の議事録や関連するメールの本文をまとめて読み込ませます。そのうえで「総会に上程する事項」「継続審議の事項」「報告にとどめる事項」に仕分けた一覧を作らせ、各項目にどの回の理事会で出た話かを書き添えさせます。出典が付いていれば、担当者は一覧を見ながら原本の該当箇所だけを確かめれば済みます。手書きのPDFは読み取りの精度が落ちることがあるため、そこだけは原本を開いて確認する前提にしておきます。
人が確定させるところ:ある事項が理事会で「承認済み」なのか「継続審議」なのかの判定です。議事録に「前向きに検討する」と書かれているものを、AIが「決定」と読み違えることがあります。総会に上げるかどうかは、最後に理事長と担当者が確認して決めます。
工程2 議案書づくり。前年の議案書を土台に下書きを起こす
いちばん時間がかかるのがこの工程です。前年の議案書のファイルをコピーし、年度や日付を書き換えます。会計のデータから決算と予算の数字を写し、修繕工事の議案では業者の見積もりを比べた説明文を書きます。説明文は理事会での経緯を踏まえて書く必要があり、1本ずつ言い回しに迷うので、丸1日かかることもあります。
AIを入れた後は、前年の議案書と工程1の一覧、理事会で配った資料を渡して、議案の並びと各議案の説明文の下書きを作らせます。たとえば、潮風の当たる物件で鉄部塗装の周期を早める長期修繕計画の見直し議案なら、「なぜ前回の計画より早いのか」を、建物に詳しくない区分所有者にも伝わる言葉で書かせます。本土に住んでいて建物を見る機会の少ないオーナーにとって、この説明文は賛否を決めるための大事な材料になります。ここを丁寧に作れることは、時間の短縮以上の効果があります。
注意したいのは数字の扱いです。決算や予算の金額は会計システムから出力した表をそのまま貼り付け、AIに足し算や按分の計算をさせないようにします。AIの仕事は文章の下書きにとどめ、数字は元のデータを動かさないという分担にしておけば、確認の手間も小さく済みます。
人が確定させるところ:議案に載せる金額、決算と予算の数字、修繕積立金や管理費を改定する場合の額、それぞれの議案が普通決議と特別決議のどちらにあたるかです。決議の要件は管理規約と法令によって決まり、法改正の動きもあります。必ず最新の規約と法令を確認し、迷う場合は専門家に相談したうえで決めてください。
工程3 招集の案内。通知文と議決権行使書を一度で揃える

今のやり方では、招集通知の文面、議案の要旨、委任状と議決権行使書の様式、返信用の案内をそれぞれ別のファイルで作ります。さらに、区分所有者の名簿と送付先を照らし合わせます。売買で所有者が変わった住戸や、送付先を県外の住所に変えてほしいという依頼を反映し忘れないよう、名簿を何度も見直すうちに半日が過ぎてしまいます。
AIを入れた後は、工程2で固めた議案書から、招集通知の本文と議案の要旨をまとめて作らせます。要旨は議案書と食い違いやすい部分なので、同じ議案書を元に一度に作ることでずれを減らせます。名簿の照合では、前年の送付リストと今年の名簿の差分を一覧にさせるといった補助的な使い方が向いています。高齢の区分所有者が多い物件では、通知に添える案内を短くやさしい言葉で書いた版も作らせると、問い合わせの電話が減ることがあります。
人が確定させるところ:開催の日時と場所、発送日、送付先の名簿です。発送日が規約で定めた招集期間を満たしているかどうかは、担当者がカレンダーで数えて確かめます。また、名簿のような個人情報をAIのサービスに入力してよいか、入力した内容が学習に使われない設定になっているかは、導入前に社内のルールとして決めておく必要があります。
工程4 当日の記録。メモを取る担当から、話を聞く担当に戻る
総会の当日、フロント担当は受付で出席を確認し、委任状の数を数え、議長の進行を手伝いながら質疑のメモを取ります。手が足りないので、メモは要点の走り書きになりがちです。終わった後に録音を聞き直して清書すると、2時間ほどかかります。
AIを入れた後は、冒頭で出席者に了承を得たうえで録音し、終わった後に文字起こしと発言の要旨の整理を任せます。担当者は当日、質問の意図をくみ取ることや、次の理事会に持ち越す事項をその場で確認することに集中できます。ただし、集会室や公民館を借りて開く総会では、空調の音が大きかったり、発言が重なったり、方言まじりの早口になったりして、文字起こしの精度が落ちる場面もあります。誰の発言だったかだけは、手元に短くメモしておくと後で迷いません。
人が確定させるところ:出席者の数、委任状と議決権行使書の数、各議案の賛成・反対・棄権の数、そして可決か否決かです。これらは文字起こしから数えるものではありません。会場で集計した票の記録を正本とし、議長が宣言した結果と突き合わせて確定させます。
工程5 議事録の確定。下書きから署名までの往復を短くする
今のやり方では、録音とメモを頼りに議事録を一から書き起こし、理事長に確認を依頼します。戻ってきた修正を反映して、また確認をお願いする。この往復が何度か続き、作業時間だけで6時間ほどかかります。理事長が仕事で忙しい時期だと、返事を待つ間に担当者の記憶も薄れていきます。
AIを入れた後は、当日の文字起こしと議案書、集計表を渡し、管理規約で決まっている議事録の様式に沿った下書きを作らせます。質疑応答は発言の趣旨が変わらない範囲で要約させ、議決の結果の欄は空けておいて、人が集計表から書き込みます。理事長への確認依頼の文面も合わせて作らせておくと、送るまでの手間が省けます。下書きの質がそろっていれば修正も少なく済み、往復の回数を減らせます。
人が確定させるところ:議事録にどの発言を残すかの判断です。特定の住戸の滞納やトラブルに触れた発言をどこまで書くかは、AIには決められません。要約によって発言のニュアンスが変わっていないか、議決の数字が集計表と合っているか、議長や署名する人は誰かといった点も、担当者と理事長が確認して確定させます。
まとめ 1日に縮まるのは「確定」以外の時間
総会の準備を5つの工程に分けてみると、3日のうち多くの時間は、記録を探し、前年の文書を写し、様式を揃えることに使われていました。AIに任せるのはこの部分で、どの工程にも「人が確定させるところ」が残ります。議決の数と賛否、金額、決議の種類、発送日、議事録に残す発言。ここを人が握っているからこそ、それ以外の作業を安心してAIに渡せます。
導入するなら、まずは担当物件のうち1件で、工程1と工程2だけを試してみるのが現実的です。前年の議案書や議事録がどれだけ電子データで残っているかによって、縮まる時間は変わります。どの工程から手を付けるのがよいか、社内の名簿や記録をどう扱うかは、物件の数や今の業務の流れによって答えが違います。
沖縄セールスパートナーでは、業務の流れに合わせてAIの使いどころを設計するお手伝いをしています。総会準備のような定型業務をどう組み替えるかについては、AIエージェント導入支援のページをご覧ください。費用や進め方は内容によって異なりますので、まずはお問い合わせから、今の作業の様子をお聞かせください。