販促の広告文が毎回思いつかない小売・飲食へ|AIで3案つくり選ぶ手順
販促のたびに広告文で手が止まるなら、順番を変えるだけで抜けられます。文章から考えるのをやめて、「誰に」と「なぜ今それを売りたいのか」を先に自分の言葉にする。そこまで決まっていれば、AIは3案でも5案でも数分で出してきます。書けないのは文才の問題ではなく、材料を渡す前に完成品を求めているからです。この記事では、ある1回の販促を最初から最後まで追いながら、どの順で何を言葉にし、AIにどう指示を出し、出てきた案のどれを捨ててどれを残すのかを、時系列でそのまま書いていきます。
沖縄の小売・飲食で「広告文が思いつかない」が起きている場面

那覇の商店街にある雑貨店、国際通りから一本入った定食屋、うるまや名護の郊外型の店。規模も業種も違うのに、詰まり方はよく似ています。今週末にセールをやると決めた。写真も撮った。あとはInstagramとチラシに載せる文章だけ。そこで手が止まって、結局「季節限定商品が入荷しました。ぜひご来店ください」と打って投稿する。先月も先々月も、ほぼ同じ文面だったことに気づいているけれど、直す時間がない。
これは書く力の話ではありません。県内の中小企業では、販促の文章を書くのはたいてい店長や社長本人か、レジと発注のあいだに手を空けた人です。専任の担当がいる会社のほうが珍しい。つまり文章を考える時間は、常に他の業務から削り取ってきた15分か20分しかない。その15分で「誰に向けて何を言うか」から考え始めるから、毎回ゼロからのスタートになり、結果として無難で当たり障りのない一文に落ち着きます。
もうひとつ、地方の小売・飲食に特有の事情があります。お客さんの顔が見えすぎることです。常連の名前も、どの商品を誰が買っていくかも把握している。だからこそ「みなさま」に向けた文章を書こうとすると急に手が止まる。頭の中にいる具体的な数人と、文章の宛先である不特定多数がかみ合わないまま書き始めるので、どちらにも刺さらない言葉になる。この記事の手順は、その「頭の中の数人」をむしろ最初に外へ出してしまうところから始まります。
ステップ1|書き出す前に、客層と売りたい理由を紙に落とす
今回題材にするのは、県内でよくある一場面です。仮に、住宅街寄りの立地にある小さな惣菜店が、夏場に売れ行きの落ちた煮物系の弁当を立て直したい、という販促だとします。AIを開く前にやることは一つだけ。メモアプリでもレシートの裏でもいいので、次の三つを日本語の文として書き出します。箇条書きの単語ではなく、必ず文にするのがコツです。
一つ目は「誰に」。この店の場合、「平日18時ごろに仕事帰りに寄る、40〜60代のひとり暮らしか夫婦世帯。自分で作ると余るから、少量で野菜が摂れるものを探している」。二つ目は「なぜ今それを売りたいのか」。「夏に揚げ物と冷やし麺に流れて煮物の回転が落ちた。материалの仕入れは変えていないので、売れれば利益率はむしろ良い」。三つ目は「買ってもらえない理由の心当たり」。「夏に煮物は重いという印象がある。ショーケースでも地味で目に入らない」。
この三つを文にしただけで、実はもう広告文の骨は決まっています。夏に重そうに見える煮物を、少量で野菜が摂れる惣菜として、仕事帰りのひとり客に向けて言い直す──それが今回言うべきことです。多くの人が広告文で詰まるのは、この作業を頭の中だけで済ませようとするからです。頭の中の材料はAIに渡せません。渡せる形にした瞬間、AIは急に使い物になります。
書き出しにかかる時間はせいぜい5分です。そして重要なのは、この5分ぶんのメモは次回以降も使い回せるという点。客層の記述は半年やそこらで変わりません。二回目からは「なぜ今売りたいのか」だけを書き換えれば済むので、実質2分の作業になります。
ステップ2|AIへの最初の指示文は、条件と禁止事項を同時に渡す
ここでようやくAIに向かいます。よくある失敗は「惣菜店の広告文を考えて」とだけ打ち込むこと。返ってくるのは、どの店にも使えて、どの店の役にも立たない文章です。AIは渡された情報の範囲でしか具体的になれないので、ステップ1で書いたメモをほぼそのまま貼り付けます。
実際の指示文はこうなります。「あなたは惣菜店の販促を担当するライターです。以下の条件で、Instagram投稿用の広告文を3案作ってください。/客層:平日18時ごろに仕事帰りに寄る40〜60代のひとり暮らしか夫婦世帯。自分で作ると余るので少量で野菜が摂れるものを探している。/売りたい商品:煮物系の弁当。夏に売れ行きが落ちている。/買われない理由の推測:夏に煮物は重いという印象がある。ショーケースで地味に見える。/条件:3案はそれぞれ切り口を変えること。1案目は商品の中身を具体的に説明する方向、2案目は買う人の生活場面から入る方向、3案目は買われない理由に正面から答える方向。/禁止:最上級表現、『絶対』『必ず』などの断定、割引率や金額の記載。1案あたり120字前後。」
この指示文で効いているのは後半です。「3案はそれぞれ切り口を変える」と方向まで指定しているため、似たような3案が並ぶのを防げます。何も言わないと、AIは同じ発想の言い換えを3つ返してきがちで、それだと選ぶ意味がありません。そして禁止事項。金額や割引率をAIに書かせないのは、単純に事実誤認の混入を防ぐためです。数字は必ず人間が最後に手で入れる、と決めておくほうが安全に運用できます。
AIの活用範囲をもう少し広げて考えたい場合は、AIエージェントでできることもあわせて見ておくと、どこまでを任せてどこからを自分で持つかの線引きがしやすくなります。
ステップ3|出てきた3案を、机の上に並べて声に出す

3案が返ってきたら、画面でスクロールしながら比べないでください。短くていいので紙に印刷するか、メモアプリに三つ並べて貼り、上から順に声に出して読みます。この工程を飛ばす人が非常に多いのですが、広告文は目で追うと全部よく見えます。AIの文章はとくにそうで、文法が整っているぶん、読み飛ばすと全部それっぽく感じられる。声に出すと、言いにくい言い回しや、自分の店では絶対に使わない語彙がすぐ引っかかります。
惣菜店の例で実際に返ってきそうな3案を挙げます。1案目「かつおだしでじっくり炊いた大根と厚揚げ、島にんじんの煮物を詰めました。冷蔵庫に常備しておける惣菜弁当です」。2案目「仕事帰り、家に着いて包丁を出す気力が残っていない日に。温めるだけで野菜のおかずが3種類そろいます」。3案目「夏に煮物は重い、と思われがちですが、当店の煮物は塩分と油を控えめに炊いています。食欲が落ちる時期こそ、消化のいい和のおかずを」。
読み上げた時点で、たいてい優劣がはっきりします。1案目は正確だけれど、これは商品説明であって広告文ではない。3案目は理屈が通っているけれど、投稿として少し説教くさい。2案目だけが、読んだ人の頭に自分の帰り道の景色が浮かぶ。この「読んだ人の頭に景色が浮かぶか」が、店頭販促の文章では最も実務的な判断基準になります。
没にする案の見分け方は、店主が口に出せるかどうか
選ぶ基準を、もう少し実際に使える形にしておきます。私たちが県内の店舗の販促をお手伝いするときに使っている見方は単純で、その文章を、店主本人がレジ前でお客さんに口頭で言えるかどうかです。言えないなら没にします。「圧倒的なコストパフォーマンス」も「最高品質の素材を厳選」も、面と向かって言う人はいません。言わない言葉が書いてあると、読む側は無意識にそれを広告の常套句として処理し、内容ごと素通りします。
この基準で切ると、AIが出しがちな案の半分は自動的に落ちます。残ったものについては、次の三点を見ます。一つ目、その文章が自分の店以外でも成立してしまわないか。「新鮮な食材にこだわっています」は県内の何百軒の飲食店でそのまま使えるので、書いていないのと同じです。二つ目、お客さんの行動が一つに定まるか。読んだ人が「今日の帰りに寄ろう」と思えるのか、それとも「へえ」で終わるのか。三つ目、言い切りすぎていないか。効果や品質を断定した表現は、後で自分の首を絞めます。
| 判断の観点 | 残す案の特徴 | 没にする案の特徴 |
|---|---|---|
| 口に出せるか | レジ前で店主が普通に言える言葉づかい | 「圧倒的」「最高品質」など日常で使わない語 |
| 自分の店だけの内容か | 商品名・調理法・立地など固有の情報が入る | 他店にそのまま貼り替えても成立する |
| 読後の行動 | いつ・どこで買うかの場面が浮かぶ | 感心して終わり、次の動作につながらない |
| 断定の有無 | 効果や品質を「〜な方に」と条件付きで書く | 効きます・必ず・No.1などの言い切り |
もう一つ、意外と見落とされる没の理由があります。季節や在庫の前提が変わったら使えなくなる文章です。惣菜店の例なら「夏の食欲が落ちる時期に」と書いた案は、9月の中旬にはもう使えません。悪いことではないのですが、その一文が入った時点で使用期限が決まると意識しておくと、あとで文章の在庫管理が楽になります。
ステップ4|残した1案を、その店の言葉に直す
ここまでで2案目が残りました。ただし、AIの出力をそのまま投稿することは基本的にありません。手を入れる箇所は決まっていて、固有名詞と、自分の店で普段使っている言い回しの二つです。
先ほどの2案目、「仕事帰り、家に着いて包丁を出す気力が残っていない日に。温めるだけで野菜のおかずが3種類そろいます」。ここに実際の商品名と、店で日常的に使っている表現を入れていきます。「包丁を出す気力が残っていない」は少しライター的な言い回しなので、店主が普段口にする「今日はもう作りたくない日」に置き換える。「野菜のおかずが3種類」は事実確認をして、実際に何が入っているかを書く。結果として「今日はもう作りたくない、という日に。大根と厚揚げ、島にんじんの煮物を詰めた弁当です。温めるだけで、和のおかずが三品そろいます」といった形になります。
この直しは3分で終わりますが、投稿の印象は明確に変わります。AIが書いた文章とそうでない文章の差は、多くの場合ここに出ます。固有名詞が入っているか、その店の人が実際に使う言葉になっているか。逆に言えば、AIには構成と発想を担当してもらい、最後の語感だけは人が握る、という分担が現実的です。
なお、この作業は文字数の調整も兼ねます。Instagramの投稿とチラシ、店頭POPでは適した長さが違うので、残した1案を土台に長短二種類つくっておくと、次の販促でそのまま流用できます。AIに「この文章を、店頭POP用に40字以内で言い直してください」と頼めば数秒です。
ステップ5|反応を見て、次回の指示文に持ち帰る
投稿して終わりにすると、この手順は毎回ゼロからのやり直しになります。やることは大げさな分析ではなく、投稿から一週間後に二つだけ記録することです。その投稿の保存数やコメントなど普段より動いた指標と、店頭でお客さんが実際に口にした言葉。後者のほうが重要です。「インスタ見たよ、あの煮物のやつ」と言われたなら、その言い方こそが次回の指示文に足すべき材料になります。
惣菜店の例で、もし常連から「作りたくない日っていうの、あれよく分かる」と言われたとします。次回AIに指示するときは、条件のところに一行足します。「過去に反応が良かった切り口:調理する気力がない日の代替、という文脈」。これを積み上げていくと、指示文そのものが自分の店の資産になっていきます。半年も続ければ、その店の客層と刺さり方が言語化された、他では使えない指示文ができあがります。
逆に、まったく反応がなかった場合も情報です。そのときは案を選び直すより先に、ステップ1の客層の記述を疑ってください。文章の問題ではなく、想定した客層が実際とずれていることのほうが多い。読み手が違えば、どんなに良い文章でも届きません。
反応の見方や、そもそも投稿がどれだけ見られているかを数字で押さえたい場合は、ブログの他の記事でも計測まわりの話を扱っています。感覚だけで判断し続けるより、少しでも数字を横に置いたほうが、次の指示文の精度は上がります。
この手順を、3人以下の店でどう回し続けるか
ここまでの流れを一度やり切ると、所要時間はだいたい20分から30分です。ただ、続けるとなると話が変わります。県内の小売・飲食は、そもそも販促に割ける人手が限られている前提で考えないと、二回目で止まります。
現実的なのは、ステップ1のメモを一枚の共有ファイルにして、店の全員が触れる場所に置いておくことです。客層の記述、過去に反応が良かった切り口、使ってはいけない表現、店で普段使っている言い回し。この四つを書いた一枚があれば、販促の担当が誰に変わっても同じ品質の指示文が出せます。属人化を防ぐという意味でも、この一枚は文章そのものより価値があります。
もう一つ、AIに頼む範囲を欲張らないことです。画像の選定、投稿の時間帯、ハッシュタグの選定まで一度に任せようとすると、指示文が長くなりすぎて精度が落ちます。この手順で扱うのは広告文の本文だけ、と割り切ったほうが結果的に速い。他の要素は、本文が安定してから一つずつ足していけば十分です。
そして、うまくいかない部分は無理に自社で抱え込まないという判断もあります。どこまでを自分たちでやり、どこからを外に出すかは業種や体制によって変わるので、判断に迷う段階であればお問い合わせから状況を聞かせてください。内容によってご提案できることが変わります。
まとめ|広告文の悩みは、書く工程ではなく前の工程にある
広告文が毎回思いつかないのは、文才でも語彙力でもなく、書き始める前に決めておくべきことを決めていないからです。客層と、今それを売りたい理由と、買われていない理由の心当たり。この三つを日本語の文にしてAIに渡せば、切り口の違う3案は数分で出てきます。そこから先は、店主本人が口に出せるかどうかで没を決め、残した1案に固有名詞と自分の店の言い回しを入れる。投稿後は、お客さんが実際に口にした言葉を次の指示文に持ち帰る。
この一周を回すたびに、指示文には自分の店の情報が溜まっていきます。三回目にはAIの初稿の精度が明らかに上がり、五回目には手直しがほとんどいらなくなる。AIに文章を書かせているというより、自分の店の売り方を言語化する作業をAIに手伝わせている、と捉えたほうが実態に近いはずです。今週の販促から、いきなり文章を書き始めるのをやめて、5分のメモから始めてみてください。