沖縄セールスパートナー株式会社

BLOGブログ

外国人スタッフへの指示が伝わらない現場へ|AIで手順書と連絡を多言語に

AI活用

外国人スタッフに指示が伝わらないとき、原因を「日本語能力」に求めてしまいがちですが、現場を細かく見ていくと、多くは日本語の出し方のほうに問題があります。結論から書きます。朝礼・作業指示・急な変更連絡という三つの場面について、伝えたい内容をいったん短く区切った「やさしい日本語」に直し、その同じ原稿から各国語へ訳す。この二段構えをAIに任せるだけで、聞き返しと手戻りはかなり減らせます。

大事なのは、翻訳ツールを増やすことではありません。翻訳の手前に、日本語を整える工程をひとつ挟むことです。ここを飛ばして原文のまま機械翻訳にかけると、日本語のあいまいさがそのまま各言語に転写され、かえって誤解が増えます。たとえば「なるべく早めにお願いします」を機械翻訳に通すと、言語によっては「できれば」という含みが消えて強い命令になったり、逆に「手が空いたときで構わない」という緩い依頼に振れたりします。どちらに転ぶかは訳す側の都合で決まってしまい、送った本人には見えません。

以下では、沖縄の中小企業でよく聞く話を合成した「伝わらなかった一日」を三場面に分けて、AIを挟む前と後で何が変わるのかを追っていきます。特別なシステムの導入は出てきません。使うのは、ふだんの走り書きと、スマホで撮った写真と、送信する前にいったんAIへ通すという習慣だけです。

その日、伝わらなかったのは言葉そのものではなかった

朝礼で説明する管理者と、要点の一部しか伝わっていない多国籍のスタッフを表したイラスト

舞台は、従業員二十人ほどの食品加工の会社だとします。工場に立つのは日本人の社員が半分、あとはベトナムやネパール、インドネシアから来たスタッフ。在籍年数は半年の人から四年目の人までばらばらで、全員が日常会話には困らない程度の日本語を持っています。休憩室では冗談も通じますし、家族の話もします。だからこそ現場の側には「言葉は通じている」という感覚があり、伝わらなかったときに理由がわからず、つい相手の理解力や集中力の話にしてしまう。

ところがその日の失敗を後から並べ直すと、詰まっていたのはどれも同じ場所でした。一文が長い。主語がない。「一応」「なるべく」「様子を見て」といった、日本人同士なら空気で埋められる言葉が要所に入っている。つまり、聞き手の語学力ではなく話し手の言い方のほうに毎回同じ癖があり、その癖が一日に三回、別々の場面で顔を出していたわけです。

もう少し踏み込むと、日本語を学ぶ順番の問題もあります。教科書で先に身につくのは「〜してください」「〜があります」といった型で、現場で実際に飛び交うのは「〜しといて」「〜しとかんと」「〜のほう、お願い」といった縮約や省略のほうです。加えて、否定と依頼が重なる言い方——「まだやらなくていいよ」「触らないでおいて」——は、聞き取れても「やる/やらない」がとっさに反転しやすい。日常会話が成立していることと、作業指示が正確に届くことは、まったく別の能力なのだと考えたほうが実態に合います。

だから改善の方向も、相手の日本語を伸ばす話にはなりません。伸びるのは伸びるとして、それは数年かかります。今日の手戻りを止めたいなら、一日三回出てくる話し手の癖を、原稿の段階で吸収してしまうほうが早い。AIはそこにちょうど収まります。

朝礼——同じ五分を聞いていたのに、残ったものが違った

朝礼はいつも五分。今日は納品先が一件増えること、午後から機械のメンテナンス業者が入ること、暑いので休憩をこまめに取ること。この三つを工場長が立て板に水で話し、途中で昨日の野球の話をひとつ挟んで、最後に「じゃあ今日もよろしく」で締める。日本人スタッフは要点を三つとも拾っていますが、外国人スタッフのメモには「納品」「暑い」しか残っていない。メンテナンスの話は、雑談との区別がつかなかったのです。

これは注意力の問題ではありません。音声は流れて消えますし、聞きながら書くには、聞き取り・意味の把握・書き取りを同時にこなす必要があります。母語でない言語でこれをやると、どうしても一拍遅れ、遅れているあいだに次の話題が始まる。しかも朝礼には「ライン」「ロット」「先入れ先出し」「歩留まり」といった、教科書に出てこない現場語が混ざります。一語わからないところで思考が止まり、その数秒で一つ分の情報が丸ごと落ちる。落ちたことにも気づけません。

ここでAIを挟むと、朝礼そのものを変えずに済みます。工場長が前の晩に思いつくまま打ち込んだ走り書き——「明日、A社ぶん追加。午後2時ごろ業者、ライン止まるかも。熱中症気をつけて」——をそのまま渡し、一文一情報に割った短い日本語に直してもらう。出てくるのは「あした、A社のしごとが 1つ ふえます」「ごご2時ごろ、きかいの てんけんが あります。ラインが とまるかもしれません」「あついです。1時間に 1回、水を のんでください」といった、漢字にふりがなを添えた三行です。

頼み方にはコツがあり、毎回同じ条件を付けておくと出力が安定します。一文は四十字以内、一文にひとつの情報だけ、主語を必ず書く、時刻は「午後」ではなく「14:00」のように数字で、否定文と二重否定は使わない、カタカナ語は言い換えるか括弧で補う。この六つを定型文にして先頭に貼るだけで、担当者が誰であっても同じ品質の原稿が出ます。文章のうまい下手が関係なくなるのは、意外に大きい効果です。

この三行を各言語に訳して前日の夜に共有しておけば、朝礼は読み上げと確認の場に変わります。全員がすでに一度読んでいるので、工場長が話すのは背景や理由のほうでよくなり、聞き返しも「業者は何時まで?」「止まっているあいだ、私たちは何をしますか」のように具体的になる。同じ五分でも、残るものがまったく違ってきます。

作業指示——「いい感じにやっといて」が通じない構造

二つ目の場面は、午前の作業指示です。ベテランが新しいスタッフに「そこ、いつもの感じで並べといて」と言って持ち場に戻る。悪気はまったくなく、日本人の後輩なら実際にそれで通じていた指示です。三十分後に見に行くと、向きが揃っていない。ベテランは「見て覚えろって言ったのに」と思い、スタッフは「言われたとおりに並べた」と思っている。どちらも嘘をついていません。

この種のずれは、注意しても直りません。「いつもの感じ」という基準が、そもそも文章のどこにも存在しないからです。存在しないものは訳せませんし、翻訳アプリを入れたところで「いつもの感じ」は「usual feeling」に相当する何かになるだけで、向きも間隔も伝わりません。ここで効くのは、口頭指示を叱ることではなく、頻度の高い作業を写真つきの短文に落としておくことです。

やり方は素朴で構いません。スマホで工程ごとに一枚ずつ、正しい状態を撮る。可能なら、よくある失敗の状態も一枚撮って並べる。人は文章より先に写真を見るので、正解と不正解が二枚あるだけで理解の速度が変わります。そのうえでベテランに口で説明してもらい、その音声を文字にして、AIに「一文一動作、二十字前後、命令形、専門用語は初出で説明を付ける」と指示して整えてもらう。工程が十あっても、手順書の下書きは半日でできます。作業を一番よく知っているのはベテラン本人で、足りないのは文章にする時間と根気のほうですから、そこだけをAIに肩代わりさせる形です。

そして同じ原稿から各国語版を作る。この「同じ原稿から」が肝で、日本語版だけ後から更新して翻訳版が古いまま、という事故を防げます。手順が変わったら日本語を直し、そこから全言語を作り直す。運用としてAIをどう業務の流れに組み込むかは、AIエージェント導入の考え方のほうでも触れています。

もうひとつ、社内用語の一覧を先に作っておくと訳がぶれません。「先入れ先出し」「二次汚染」「治具」「段取り替え」のように、その会社でしか通じない言葉と、業界では当たり前でも学習者には難しい言葉を三十語ほど拾い、日本語のやさしい説明と各言語の訳を対で決めておく。以後はこの一覧をAIに一緒に渡すだけで、同じ言葉が毎回同じ訳になります。訳語が回ごとに変わることの害は、思っているより大きいものです。

あわせて読みたい

複数店舗の日報と売上報告に追われる店長へ|AIで月末の集計を30分に 複数店舗の日報と売上報告に追われる店長へ|AIで月末の集計を30分に関連する話題をこちらでも解説しています。

急な変更連絡——夕方の一本が、翌朝の手戻りになる

三つ目が、いちばん被害の大きい場面です。夕方五時、取引先から「明日の納品、朝いちを昼に変えてほしい」と電話が入る。事務所は現場のリーダーに伝え、リーダーはその場にいた二人に伝え、二人は帰り際にほかのメンバーに伝える。この伝言リレーの途中で「朝いちの分は準備しなくていい」という部分だけが抜け落ちて、翌朝、誰かが六時から仕込みを始めてしまう。材料も光熱費も人件費も、そのぶんまるごと無駄になります。

変更連絡が危ないのは、内容が短いぶん差分だけが伝わり、前提が伝わらないからです。「昼に変更」という言葉は、それ単体では何をやめて何をやるのかを含んでいません。日本人同士なら文脈で補いますが、補うための文脈こそが、日本語で仕事をしていない人にとっていちばん手に入りにくい情報です。しかも変更連絡は帰り際や休憩中に飛ぶことが多く、聞き返しづらい時間帯に重なります。

伝言が一段挟まるごとに、情報は必ず痩せます。三段も経由すれば、最初にあった「理由」「期限」「やめること」のうち、残るのはたいてい一つです。それも、伝えた人がいちばん印象に残った一つであって、受け手に必要な一つとは限りません。人を責めても直らない種類の劣化です。

AIを挟むなら、変更連絡こそテンプレートにする価値があります。事務所が打つのは「明日の納品 朝→昼」の一行だけ。そこから「なにが 変わりますか」「いつまでに やりますか」「やらなくて よいことは なんですか」という三点を埋めた短文に展開させ、全言語で同時に配る。伝言リレーが一段も挟まらないので、途中で情報が痩せません。

三点のうち実務でいちばん効くのは、三つ目の「やらなくてよいこと」です。ふつうの連絡文には、この欄がありません。しかし手戻りの原因は、たいてい「やらなくてよくなった作業を、変更を知らない人が続けてしまう」ことにあります。欄として最初から用意しておけば、書く側も「そういえば朝の仕込みは不要だ」と気づく。翌朝の六時に誰も無駄働きをしない、それだけで十分に元は取れます。

三つの場面をつないでいたのは、やさしい日本語という土台

一つの原稿からやさしい日本語版と各国語版を同時に作る流れを表した図

ここまでの三場面を並べると、共通していたのは翻訳の不在ではありません。日本語の段階ですでに情報が欠けていた、という一点です。長い一文、抜けた主語、含みのある副詞。これらは日本語のまま機械翻訳にかけても直りませんし、むしろ訳文では別の意味に固まってしまうことすらあります。やさしい日本語への言い換えは、外国人スタッフのためというより、原稿の欠陥を先に見つけるための工程だと考えたほうが実態に近いはずです。

実際、やさしい日本語に直す過程で「これ、日本人スタッフにも伝わってなかったな」と気づく会社は少なくありません。一文を短く割ると、書き手自身が決めていなかった部分——誰がやるのか、いつまでなのか、例外はあるのか——が空欄として浮かび上がるからです。新人やパート、たまにしか入らない応援の社員にとっても、同じ文章がそのまま役に立ちます。多言語化の副産物として、日本語の指示の質が上がる。この順番を押さえておくと、導入の効果が読みやすくなります。

やさしい日本語の作法自体は、覚えることが少ないのも利点です。一文を短く切る。主語を省かない。時刻と数量は数字で書く。「〜しないでください」より「〜してください」の形にする。「対応」「実施」「確認」のような漢語を「する」「やる」「見る」に置き換える。敬語は一段だけにする。この程度で、読みやすさは目に見えて変わります。人が全部覚える必要はなく、条件としてAIに渡しておけば済みます。

逆に、やさしい日本語にしてはいけないものもあります。契約書、就業規則、労災や食品衛生にかかわる文書は、正確さを削ってはいけない領域です。この場合は原文を残したうえで「要点だけをやさしい日本語で添える」形にし、判断が必要な場面では必ず原文と担当者に戻す、と決めておきます。すべてを易しくするのではなく、易しくしていい範囲を先に決めるのが安全です。

一つの入力から、やさしい日本語と各国語を同時に作る

運用の形はごく単純です。入力は、担当者がいつもどおりに書いた乱れた日本語ひとつ。そこからAIに、①一文一情報のやさしい日本語、②ふりがな付きの掲示用、③必要な言語の訳文、を一度に出させる。出口が三つあっても入力は一つなので、現場が覚えることは増えません。増えるのは「送る前にいったん通す」という一手間だけです。時間にして一分もかかりません。

場面AIを挟む前AIを挟んだ後
朝礼口頭で五分、メモは日本語の走り書き前夜に要点三行のやさしい日本語+各国語版を共有。朝礼は確認と背景の説明にあてる
作業指示「いつもの感じで」が通じる前提。基準が文章化されていない写真つき一文一動作の手順書。同じ原稿から全言語を生成し、更新も同時
急な変更連絡電話一本を伝言リレー。差分だけが伝わり前提が欠ける「変わること/期限/やらなくてよいこと」の三点を全言語へ同報

出力の置き場も、あらかじめ用途で分けておくと迷いません。掲示用は文字を大きくして休憩室の壁へ、日々の連絡はチャットへ、手順書は現場の該当工程のそばへ。同じ文章でも、目に入る場所が違えば読まれ方が変わります。壁に貼るものは三行まで、と決めてしまうのも有効です。情報を減らすのではなく、その場に必要な分だけを切り出す、と考えます。

注意点として、訳文の品質を人が一切見ない運用はおすすめしません。安全・衛生・法令にかかわる文言や、金額や期日が入る連絡は、母語話者のスタッフ本人に一度読んでもらう仕組みを残しておく。とはいえ、ゼロから翻訳を頼むのと、できあがった訳文を確認してもらうのとでは負担がまるで違います。前者は業務を止めて何十分もかかりますが、後者は一分で終わります。負担が軽ければ、確認は続きます。

三か月続いた会社と、二週間で止まった会社の分かれ目

この手の仕組みは、作った直後がいちばんうまくいきます。問題はその先で、止まってしまう会社にはだいたい共通点があります。整えた文章を置く場所が人によって違う、更新する人が決まっていない、そして手順が変わったときに日本語版だけ直してしまう。三つ目が起きた瞬間から、現場は翻訳版を信用しなくなり、結局また口頭に戻ります。一度失った信用は、貼り紙を増やしても戻りません。

逆に続いている会社は、置き場所を一か所に決め、更新の担当を一人に絞り、変更があれば必ず日本語の原稿から作り直す、という三点だけを守っています。凝った仕組みは要りません。むしろ最初は朝礼か変更連絡のどちらか一方だけに絞り、二週間回してから広げるほうが定着します。三場面を同時に始めると、担当者の負担が一気に増えて、忙しい週に真っ先に切り捨てられるからです。

効果の測り方も、難しく考える必要はありません。二週間のあいだ、同じ指示について聞き返された回数と、やり直しになった作業の件数を、手帳の隅に正の字で書いておく。それだけで、続ける価値があるかどうかは判断できます。数字が減っていれば現場は自然に受け入れますし、減っていなければ、原因は文章ではなく別のところ——人員配置や工程そのもの——にあると分かります。

自社の場合にどこから手を付けるのが現実的かは、業種や人員構成、扱う言語の数、そして現場に一人でも文章を整える余力のある人がいるかどうかで変わります。判断に迷う場合はご相談いただければ現場に合わせて一緒に考えます。

まとめ

外国人スタッフに指示が伝わらない現場では、翻訳を足す前に見るべきものがあります。朝礼で三つの要点のうち一つしか残らないのも、「いつもの感じで」が別の形になるのも、夕方の変更連絡が翌朝の手戻りになるのも、出発点は同じ——日本語の段階で情報が欠けていることです。欠けたまま訳せば、欠けたものがそのまま各言語に配られます。

だからこそ、やさしい日本語への言い換えと多言語化を、別々の作業にせず同じ入力から同時に作る。この形にしておけば、更新のたびに版がずれることもなく、現場が覚える手順も一つで済みます。沖縄でAIをどう業務に効かせるかという全体像については沖縄の中小企業のAI活用もあわせてご覧ください。まずは自社の朝礼のメモを一枚、そのまま短い日本語に割ってみるところからで十分です。割った瞬間に、決めていなかったことがいくつ出てくるか——たいていは、それが最初の収穫になります。