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アンケートの自由記述が読み切れない|AIで意見を分けて改善の順番を決める

AI活用

アンケートの自由記述を、最初の一行から最後の一件まで人が読み通す必要は、もうありません。やるべきことは読み切ることではなく、意見を似たもの同士に分けて、それぞれが何件あるかを数えることです。分けて数えた瞬間に、それまで「いろいろな声がありました」としか言えなかった束が、「どこから直すか」を決められる材料に変わります。この記事では、同じ回答の束を、人が最後まで読んで力尽きた状態と、AIで分類して件数化した状態の二通りに並べて、そのあと何を先に直すかを決めるところまでを追いかけます。

「全部読みます」と引き受けた日から、資料は静かに止まる

アンケートを回収した直後は、たいてい気分が良いものです。紙でもフォームでも、答えが返ってきたという事実そのものが嬉しい。ところが自由記述の欄を開いた途端、空気が変わります。二百件を超えたあたりから、読み方が明らかに変わっていくからです。

最初の二十件は一件ずつ丁寧に読み、気になった言葉をメモに書き写します。五十件を過ぎると、書き写す手が止まって、目だけが文字を追うようになります。百件を越えると「だいたい同じようなことが書いてある」と感じ始め、最後の数十件は、正直なところ読んだというより通り過ぎているだけです。そして読み終わったときに手元に残っているのは、途中で目に飛び込んできた強い言葉が数件と、なんとなくの印象だけになります。

その状態で報告書を書くと、どうしても「概ね好評だが、一部に改善を求める声があった」という一文になります。悪意も手抜きもありません。人の読み方は、量が増えると必ずこうなります。にもかかわらず、この一文からは何の行動も生まれません。誰も反対しないけれど、誰も動けない。自由記述が「読まれた資料」ではなく「読まれたことになっている資料」に変わるのは、たいていこの瞬間です。

しかも中小企業では、この作業を専任者が持っていることはまずありません。総務の方が請求書の処理の合間に開き、店長が閉店後に開き、社長が日曜の夜に開く。そこに数時間を注いだ結果が「概ね好評」で終わるのは、あまりに割に合わない話です。

同じ回答束を、二通りの状態で並べてみる

山積みの自由記述が、話題ごとの束に分けられて件数が見える状態になるイメージ

仮に、来店客に配ったアンケートの自由記述が二百件あったとします。人が最後まで読んだときに手元に残るのは、印象に強く残った長文が数件と、読んでいる途中で「これは多いな」と感じた体感です。一方、AIに意見の種類ごとに分けさせて件数を出した場合に残るのは、たとえば駐車のしにくさに触れた回答が二十数件、待ち時間に触れたものが十数件、説明が分かりにくいというものが十件前後、といった形の一覧です。同じ二百件を材料にしているのに、次に何をするかの決めやすさがまったく違います。

比べるところ人が最後まで読んで力尽きた状態AIで分けて件数を出した状態
手元に残るもの印象に残った数件の文章と、なんとなくの体感意見の束と、それぞれが何件あるかの数字
判断の根拠語気の強さ、読んだ順番、最後に読んだ内容どの困りごとが何件出ているかの分布
抜け落ちやすいもの一行だけの短い指摘、遠慮がちな言い回し文章の温度、書き手の言い回しの機微
会議での使われ方「一部に厳しい意見もありました」で終わる「上位三つのどれから着手するか」を話せる
回答が増えたとき読む時間が件数に比例して増えていく分け方の指示づくりに手間がほぼ集約される

ここで大事なのは、AIのほうが優れていると言いたいわけではない、ということです。表の三行目にあるとおり、分けて数えると文章の温度は確実に落ちます。だからこそ、件数の一覧を見たあとで、上位に来た束の中の原文を五件だけ読み直す、という戻り方が要ります。全部は読まない。けれど、優先度が高いと分かった束の中だけは、必ず自分の目で読む。この行き来ができるようになると、量に押しつぶされずに現場の声の質感も拾えます。

分ける軸を決めるのは人、分ける作業だけをAIに渡す

自由記述の分類でうまくいかない一番の原因は、軸の作り方にあります。よくあるのが、良い意見と悪い意見の二つに割ってしまうやり方です。これをやると、褒め言葉のあとに要望が続いている回答をどちらに入れるかで手が止まりますし、割り終わったところで「悪い意見が四十件ありました」としか言えず、結局どこを直せばいいのか分かりません。

分ける軸は、良し悪しではなく「どこの話をしているか」で切ります。受付でのやり取り、電話のつながりやすさ、待ち時間、説明の分かりやすさ、価格に対する納得感、設備や建物、購入後の連絡といった具合です。同じ「不満です」でも、受付の話なのか設備の話なのかで、直す担当も直す方法もまったく違うからです。

この軸を最初から完璧に作ろうとしないことも大切です。実務的にやりやすいのは、まず二十件ほどをAIに読ませて「この回答群はどんな話題に分かれそうか」を出させ、その案を人が現場の感覚で直す進め方です。出てきた案には、たいてい現場では一括りにしている二つが分かれていたり、逆に分けるべきものが混ざっていたりします。そこを直すのは、その仕事を知っている人にしかできません。軸が決まったら、残りの全件をその軸に沿って分けさせます。

分け終わったあとに一つだけ確認すべき数字があります。「その他」に入った件数です。ここが全体の二割を超えているなら、軸が現場に合っていないサインだと考えてください。その他の中身を眺めると、たいてい見落としていた話題がひとかたまり隠れています。また、一件の回答が二つの話題に触れているのは普通のことなので、一件を一つの箱に押し込めず、複数のラベルが付くことを許す設計にしておくと、あとで数えたときの納得感が上がります。

件数が出ると、声の大きさと数の多さが別々に見えてくる

分けて数えることの本当の効果は、作業時間の短縮よりも、むしろ会議の中身が変わることにあります。

自由記述をそのまま持ち込んだ会議では、ほぼ確実に、一番長くて一番語気の強い一件が場を支配します。書き手が本気で怒っているぶん文章は具体的で、読み上げると全員が黙ります。その結果、その一件への対応が最優先事項として決まってしまう。ところが件数化してみると、その話題は全体で二件しかなく、一方で一行だけ静かに書かれた「駐車場に停めにくい」という指摘が二十件以上あった、ということが起こります。声の大きさと、困っている人の多さは、まったく別の量なのです。

だからといって、件数が少ない意見を切り捨ててよいわけではありません。安全に関わること、法令に触れかねないこと、それを放置すると信用そのものが崩れるようなことは、一件でも最上位に置くべきです。件数はあくまで、これまで「なんとなくの強い印象」で決めていた優先順位に、もう一つの物差しを足すためのものです。物差しが二本あるだけで、話し合いは「誰が強く言ったか」から「何を先に直すか」に移ります。

件数の出し方について一点だけ補足すると、全体の母数と一緒に見せることを忘れないでください。二十八件という数字は、二百件中なら無視できませんが、三千件中なら意味合いが変わります。割合を添えるだけで、会議での判断がぶれにくくなります。

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直す順番は、件数だけでは決まらない

分けた意見を件数と直しやすさで並べ替え、着手する順番を決めるイメージ

分類と件数化が終わると、次に迷うのが着手の順番です。ここで件数の多い順にそのまま並べてしまうと、たいてい先頭に「建物や設備をどうにかしてほしい」という、すぐには手を付けられない話が来ます。そして最初の一歩が踏み出せないまま、その一覧もまた眠ることになります。

順番を決めるときに見るのは、件数に加えて、直したときにどれくらい効くか、そして自分たちの手でどれくらい早く直せるか、の三つです。この三つを掛け合わせると、多くの場合、上位に来るのは意外なほど地味な項目になります。案内の張り紙を一枚増やす、電話の一次受けの言い回しを揃える、待ち時間の目安を先に伝える、といった類のものです。件数が二十件あって、今週中に手が届いて、直せば確実に体験が変わる。この条件を満たす項目は、順番の先頭に置く価値があります。

実務では、分けた束を三つの箱に振り分けるやり方が動かしやすいと感じます。今週から手を付ける箱、今期のうちに段取りを組む箱、そして今回はやらないと決める箱です。三つ目があることが重要で、ここに入れた項目は「忘れた」のではなく「今回は選ばなかった」ものとして記録に残ります。次の集計のときに件数が伸びていれば、そこで初めて上げればいい。この判断を残しておくと、半年後に同じ議論を一からやり直さずに済みます。

なお、この順位付けそのものをAIに出させたくなりますが、そこは人の仕事として残すことをおすすめします。どれが早く直せるか、どれが自社の体力で無理なくできるかは、社内の事情を知っている人にしか判断できません。AIには分類と件数、それから各束の要点の要約までを任せ、決めるのは人。この線引きを守るほうが、結果として運用が続きます。分類や集計をその都度の手作業から仕組み側に寄せていく考え方は、AIエージェントによる業務の自動化の発想と地続きです。

沖縄の小さな会社でつまずきやすい、渡す前の下ごしらえ

実際にやってみると、分類の精度よりも先に、入り口のところで手が止まることがよくあります。

まず多いのが、氏名や連絡先の欄と自由記述が同じ表に並んでいるケースです。景品の抽選や後日の連絡のために氏名を書いてもらう設計はよくありますが、そのままの表をAIに読ませる必要はどこにもありません。自由記述の列だけを取り出して渡すのが基本です。あわせて、本文の中に「◯◯さんに対応してもらった」と担当者名が書かれていることも珍しくありません。宿泊業でも介護の現場でも、スタッフの名前が具体的に出てくるのはむしろ自然なことですが、集計の目的は個人の評価ではないので、名前は伏せたうえで「接客対応」の話題として扱うほうが健全です。健康状態や家庭の事情に触れた記述が混ざる業種もあり、その扱いは社内でどこまで共有してよいかを先に決めておく必要があります。取り扱いの線引きに迷うなら、集計を始める前に一度整理しておくほうが確実です。

次に、紙で回収している場合の読み取りです。手書きの文字を画像から起こす工程が挟まると、そこで一定の誤読が生まれます。特に地名や施設名は間違えられやすく、県内の地名は変換の癖が出ることもあります。分類のあとで上位の束の原文を見返す運用にしておけば、明らかな誤読はそこで気づけます。

それから、要約に頼りすぎないことです。AIに「この束の意見をまとめて」と頼むと、読みやすい文章が返ってきます。読みやすいぶん、元の回答にあった条件や留保が落ちていることがあります。「土曜の午前だけ待ち時間が長い」という指摘が、要約では「待ち時間が長い」になってしまうと、直す対象が変わってしまいます。まとめた文章は、あくまで原文へ戻るための入口として扱ってください。

一度で終わらせず、次のアンケートの設問に返す

ここまでの流れを一回やり切ると、たいてい気持ちが満たされて、次の実施のときにまた同じ苦労を繰り返すことになります。もったいないのは、今回の分類結果が次の設問設計に使える資産だという点が見過ごされることです。

今回の集計で上位に来た三つか四つの話題は、次回のアンケートでは選択肢にしてしまってかまいません。そのうえで自由記述の欄は必ず残します。選択肢だけにすると、こちらが想定していない新しい困りごとが永久に拾えなくなるからです。選択肢で量を測り、自由記述で想定外を拾う。この役割分担にしておくと、二回目以降の集計はぐっと軽くなります。

もう一つ、「その他ご意見・ご要望」という大きな箱を一つだけ置く設計は、そろそろ見直してよいと思います。場面を分けて「来店してから会計までで気になったこと」「ご購入後の連絡について」のように問いを二つか三つに割るだけで、返ってくる文章が具体的になり、分類の精度も自然に上がります。回答者にとっても、何を書けばいいか分からない大きな空白より答えやすくなります。

そして、分けた結果と決めた順番は、必ず同じ場所に残してください。表計算のファイルでも社内の共有ドキュメントでも構いませんが、前回の上位項目と件数、着手すると決めたもの、今回はやらないと決めたものが並んでいると、次の集計は比較から始められます。件数が減っていれば手を打った効果が見え、変わっていなければ打ち方が足りなかったと分かる。ここまで来て初めて、アンケートは配って終わりの行事ではなく、改善の進み具合を測る道具になります。自社の回答をどう分けるか、どこから手を付けるかで迷ったときは、お問い合わせから現状の集計方法を添えてご相談ください。進め方は業種や回答量によって変わるため、内容を伺ったうえでの整理になります。

まとめ

自由記述が読み切れないのは、担当者の根気が足りないからではありません。人が文章を読むという行為が、量に対してそもそも向いていないだけです。向いていない作業を根性で続けるかぎり、手元に残るのは強い言葉の記憶と「概ね好評」という結論だけで、そこからは何も動きません。

やり方を変える起点は単純です。全部読むのをやめて、どこの話かで分け、それぞれが何件あるかを数える。分けるのはAIに任せ、軸を決めることと、上位の束の原文を読み直すこと、そして直す順番を決めることは人が持つ。件数と、効きの大きさと、自分たちの手で早く直せるかどうか。この三つで並べ替えれば、来週から動かせる項目が必ず先頭に来ます。

そして今回やらないと決めたものも記録に残し、次のアンケートでは上位項目を選択肢に格上げして、自由記述は想定外を拾うために残す。この往復が回り始めると、集計にかかる時間は回を追うごとに軽くなり、代わりに「何を先に直したか」という記録が積み上がっていきます。県内でAIを業務に取り入れる考え方については沖縄の中小企業のAI活用もあわせてご覧ください。読み切れないほど声が集まったのは、答えてくれた人がいたからです。その束を眠らせないための、いちばん現実的な扱い方がここにあります。