RPAと生成AI、どちらで自動化する?|定型作業を仕分ける4つの質問
RPAと生成AI、どちらを入れれば事務作業が楽になるのか。結論から言うと、どちらかが優れているという話ではありません。作業ごとに向いているほうを選ぶものです。毎回同じ形のデータを同じ画面に打ち込む作業はRPAに向いています。形がばらばらの書類を読む、文章を書く、内容を見て振り分ける、といった作業は生成AIに向いています。ただ、現場の作業はこの2つが一本の流れの中に混ざっていることがほとんどなので、作業を分けて考えることが出発点になります。
この記事では、まず両者の違いを一言でまとめます。次に、作業を仕分けるための4つの質問を判定フローとして紹介し、沖縄の中小企業でよく見かける事務作業5つを実際に仕分けてみます。最後に、両方を組み合わせて使う型をまとめました。「うちの作業はどっちだろう」と迷っている方が、自社の業務に当てはめて読めるように書いています。
一言でいえば、RPAは「手順をなぞる」、生成AIは「中身を読む」

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、人がパソコンで行っているクリックやコピー&ペースト、画面の切り替えといった操作を、決めた順番どおりに再現する仕組みです。言い換えれば「手順をなぞる道具」です。手順さえ決まっていれば、疲れることなく同じ操作を何百回でも繰り返せます。その代わり、手順書に書いていないことはしません。入力欄の位置が少しずれた、システムの画面が更新された、といった小さな変化でも止まってしまうことがあります。
生成AIは、文章や画像、PDFの中身を読み取って、要約・分類したり、新しく文章を書いたりする仕組みです。こちらは「中身を読む道具」です。取引先ごとに書式が違う書類でも、どこに何が書いてあるかをある程度読み取れます。問い合わせへの返信のように正解が一つではない文章も作れます。ただし、毎回まったく同じ答えを返すとは限らず、もっともらしい間違いを混ぜることもあります。
まとめると、RPAは「決まった形のものを、決まったとおりに」処理するのが得意で、生成AIは「形が決まっていないものを、おおむね妥当に」処理するのが得意です。生成AIで何ができるかを全体から知りたい方は、沖縄の中小企業向けのAI活用の解説もあわせてご覧ください。
得意と苦手を並べると、向き不向きが見えてくる
違いをもう少し具体的にするために、仕分けのときに見るポイントごとに両者を並べてみます。
| 見るポイント | RPA | 生成AI |
|---|---|---|
| 得意な入力 | 列や項目が決まったExcel・CSV、毎回同じ画面 | 書式がばらばらのPDF・メール・手書きメモ |
| 判断・文章 | 「○○なら△△」と書けるルールの判断だけ | 要約、分類、言葉にしにくい判断、文章作成 |
| 画面操作 | 得意(クリック・入力・転記) | 基本的には担当しない |
| 結果のぶれ | 同じ入力なら毎回同じ結果 | 同じ入力でも表現や結果が多少変わる |
| 止まりやすい場面 | 画面や書式の変更 | 前提の情報が足りないとき、あいまいな指示 |
こうして見ると、両者の得意・苦手はほぼ反対になっていて、片方の苦手をもう片方が補える関係です。RPAは結果がぶれない代わりに変化に弱く、生成AIは変化に強い代わりに結果がぶれます。どちらか一方だけで業務全体をまかなおうとすると、どこかで無理が出ます。
迷ったらこの順番で。作業を仕分ける4つの質問
ここからが本題です。自動化したい作業を一つ思い浮かべて、次の4つの質問に順番に答えてみてください。
1つ目は「入力の形は毎回同じか」です。基幹システムから出てくるCSVや、列が決まった社内のExcelなら「同じ」です。一方、取引先ごとに書式が違う請求書、FAXで届く注文書、人によって書き方が違う日報は「ばらばら」です。同じならRPAの候補になり、ばらばらなら中身を読み取る工程で生成AIの出番があります。
2つ目は「判断や文章が要るか」です。「金額が一定以上なら上長に回す」「支払期日が今月なら一覧に入れる」のように条件として書ける判断なら、RPAでも処理できます。一方、「この問い合わせは急ぎかどうか」「お客様の温度感に合わせて返信する」のように言葉で条件を書きにくい判断や、文章を一から作る作業は、生成AIが受け持つ部分です。
3つ目は「画面操作が必要か」です。最終的に会計ソフトや予約管理システムの画面に入力しなければならないのかを確認します。そのシステムにCSVの取り込み機能や外部連携の仕組みがあれば、まずそれを使うほうが安定します。そうした手段がなく、人が画面で打ち込むしかない場合にRPAの出番になります。
4つ目は「間違えたときの影響」です。振込、取引先への送信、ホームページへの公開のように取り返しのつかない作業は、RPAと生成AIのどちらを使う場合でも、途中に人の確認を入れます。特に生成AIの出力は、人が確認することを前提に組みます。社内向けのメモ整理のように影響が小さい作業なら、ある程度任せきりにしても構いません。
流れとしては、1つ目と2つ目で「読む・考える工程」があるかを見て、3つ目で「手を動かす工程」があるかを見て、4つ目で「人がどこで確認するか」を決めます。この順番で答えていくと、作業ごとにどちらを使うかがほぼ決まります。
身近な事務作業5つを、実際に仕分けてみる
では、沖縄の中小企業でよく見かける作業に当てはめてみます。
作業1は、毎朝、レジや予約システムから前日の売上データをダウンロードしてExcelに貼り、日報を作る作業です。入力の形は毎回同じで、判断は「店舗ごとに合計する」程度のルールです。ダウンロードや貼り付けという画面操作があり、社内向けの資料なので間違えたときの影響も比較的小さめです。4つの答えがすべてRPA寄りになる、典型的なRPA向きの作業です。システム側に自動で出力する機能があるなら、RPAより先にそちらを確認する価値があります。
作業2は、取引先から届く請求書PDFを会計ソフトに入力する作業です。取引先によって書式がばらばらで、勘定科目を選ぶという判断もあります。会計ソフトへの入力は画面操作で、しかも支払いに直結します。4つの質問への答えがきれいに分かれるので、RPAだけでも生成AIだけでも収まりません。生成AIが請求書から取引先・日付・金額を読み取り、人がその結果を確認し、入力はRPAか会計ソフトの取り込み機能が担う、という分担になります。
作業3は、ホームページからの問い合わせメールに一次返信する作業です。問い合わせの文面は毎回違い、返信には文章が必要です。画面操作はほとんどありませんが、返信は相手に届くので影響は大きめです。この作業は生成AIに返信の下書きを作らせ、人が読んで直してから送る形が合っています。観光シーズンに問い合わせが集中する業種なら、この下書きだけでも負担はかなり変わるはずです。
作業4は、宿泊施設やアクティビティ事業者が、複数の予約サイトから入った予約を自社の台帳に転記する作業です。サイトごとに形式は違いますが、同じサイトの中では毎回同じ形なので、1つ目の答えは「サイトごとに見れば同じ」です。転記は画面操作で、ダブルブッキングにつながるので影響も大きいといえます。基本はRPAで転記し、台帳との照合結果を人が確認します。ただ、備考欄に書かれた「誕生日のお祝い」「食物アレルギーあり」のような自由記述を拾いたいなら、その部分だけ生成AIに読ませると、見落としを減らせます。
作業5は、建設業や設備業の現場日報や電話メモから、翌日の段取りやタスクを抜き出す作業です。書き方は人それぞれで、要約と抽出が必要です。画面操作はほぼなく、抜け漏れは起こりえますが、最終的には人が段取りを組むので致命的にはなりにくい作業です。これは生成AI向きで、RPAの出番はほとんどありません。
5つ並べてみると、RPAだけ、あるいは生成AIだけで完結するのは作業1と作業5くらいです。残りは、一つの作業の中に両方の工程が混ざっています。
判定が割れる作業は「つなぎ目」で切る
作業2や作業4のように答えが割れる作業は、一続きの作業として見るのをやめて、工程に分けて考えます。たとえば「受け取る→読む→判断する→入力する→確認する→送る」のように分けると、工程ごとに4つの質問の答えがはっきりします。読む工程は生成AI、入力する工程はRPA、確認する工程は人、という具合です。
ここで大事なのが、工程と工程のつなぎ目に「決まった形の表」を置くことです。生成AIが読み取った結果を文章のままRPAに渡すと、RPAは扱えずに止まってしまいます。生成AIには「取引先名・日付・金額・品目」のように項目を決めた表の形で出力させ、RPAはその表だけを見て動くようにします。こうしておけば、生成AIの出力がぶれても表の段階で人が気づけますし、RPAは毎回同じ形の入力を受け取れます。
組み合わせて使う3つの型

実際に組み合わせるときの形は、だいたい次の3つに分けられます。
1つ目は「AIが読んで、RPAが打つ」型です。請求書や注文書、申込書のように、形がばらばらの書類を決まったシステムに入力する作業で使います。生成AIが項目を抜き出して表に整え、人が確認し、RPAが入力します。紙やFAXでのやり取りが残っている取引先が多い会社ほど、この型が役に立ちます。
2つ目は「RPAが集めて、AIがまとめる」型です。複数のシステムから売上や問い合わせの件数をRPAで集め、それを生成AIが「先週より何が増えたか」といったコメント付きの報告文にまとめます。数字の集計はRPA、言葉にする部分は生成AIという分担で、週次の会議資料づくりなどに向いています。数字そのものは生成AIに計算させず、集計済みの値を渡すのがポイントです。
3つ目は「AIが下書きし、人が決め、仕組みが送る」型です。お客様への案内文や返信のように相手に届くものは、生成AIが案を作り、人が内容を承認し、送信は決まった仕組みが行います。生成AIに直接送信まで任せないことで、間違えたときの影響を抑えられます。
どの型も、間に人の確認が入る位置をあらかじめ決めておくことが前提です。こうした組み合わせを業務の流れとしてまとめたいときは、AIエージェントの導入支援のページで考え方を紹介しています。
仕分け表を社内でつくるときに押さえたいこと
4つの質問は、経営者が一人で答えるより、実際にその作業をしている人と一緒に答えるほうが正確になります。事務担当の方が毎日感じている「ここだけは毎回形が違う」「この判断はベテランにしかできない」という感覚こそ、1つ目と2つ目の質問の答えだからです。作業ごとに、月に何回あるか、1回に何分かかるか、間違えたら誰が困るかを一枚の表に書き出すだけで、どこから手をつけるかの判断材料になります。
もう一つ、自動化した後に誰が面倒を見るかも決めておきます。RPAはシステムの画面が変わると止まるので、利用しているシステムの更新情報を誰が受け取るのかを決めておく必要があります。生成AIは出力を確認する担当者がいなければ、間違いがそのまま流れてしまいます。少人数の会社では、この「見る人」を決められるかどうかで、仕分けの結論が変わることもあります。
まとめ
RPAは手順をなぞる道具、生成AIは中身を読む道具です。どちらを使うかは、「入力の形は毎回同じか」「判断や文章が要るか」「画面操作が必要か」「間違えたときの影響」の4つの質問で作業ごとに決められます。実際の事務作業は両方の工程が混ざっていることが多いので、工程に分けてつなぎ目に決まった形の表を置き、組み合わせて使うのが現実的です。
自社の作業をどう仕分ければよいか判断に迷う場合や、組み合わせの設計まで相談したい場合は、お問い合わせからお気軽にご連絡ください。進め方や費用は業務の内容によって変わるため、現状をうかがったうえで一緒に整理します。