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海況で中止の連絡に追われるダイビングショップへ|AIで予約と同意書を1つに

海が荒れそうな日の前の晩、ダイビングショップのスタッフはLINEと電話とメールを行き来しながら、翌日のお客さまに一人ずつ中止の連絡を入れています。先に結論をお伝えします。この負担の根っこは海況そのものではありません。予約台帳、健康状態の申告や同意書、中止や日程変更の連絡という3つの情報が別々の場所にあることが原因です。3つを1つの流れにまとめれば、連絡文の下書き、一斉送信、申告内容の整理はAIに任せられます。空いた時間で、スタッフは開催の判断と安全確認に集中できます。ただし、船を出すかどうかを決めるのも、お客さまの体調を見て潜ってよいかを決めるのも、最後まで人の仕事です。この記事では、沖縄の小さなショップの前日夕方から当日朝までを順に追います。そのうえで、どこをAIに渡し、どこを人が握るべきかを整理します。

夕方17時、タンクを洗いながら「明日どうする」を考える

夕方にタンクを洗いながら翌日の海況予報を確認するダイビングインストラクター

午後のダイビングから戻り、器材を洗ってタンクを片付けたころ、オーナーのインストラクターはスマートフォンで風と波の予報を見比べ始めます。風向きはどう変わるか。うねりは残りそうか。予定のポイントがだめでも、反対側に回れば出せるか。ボートを出さずにビーチエントリーに切り替える手もあります。こうした判断は、長年その海を見てきた人の経験に支えられています。数字だけでは決まりません。

たとえば冬場、北寄りの風が強まる予報なら、風をまともに受ける側の海岸は荒れやすくなります。一方で、風裏になる側なら潜れることもあります。ただ、ポイントを変えると移動時間が延び、集合時間や港が変わることもあります。「午前便は出して、午後便は朝の様子を見て決める」といった分け方をすれば、選択肢は増えます。その分、誰にどの時点で何を伝えるかは複雑になります。

判断に迷えば、船長や同業のショップと電話で様子を確かめることもあります。結論が出るのは18時を回ってから、という日も珍しくありません。そして本当に手間がかかるのは、実はここからです。明日の予定を変えると決めた瞬間から、「誰に、何を、どうやって伝えるか」という長い作業が始まります。

判断のあとに始まる、夜まで続く連絡の作業

まず、明日の参加者を洗い出します。ところが予約の入口は1つではありません。電話で受けたもの、LINE公式アカウントに届いたもの、予約サイト経由のもの、ホテルのツアーデスクから回ってきたもの。それぞれが紙のノート、スプレッドシート、予約サイトの管理画面に散らばっています。名前と人数をそろえるだけで、画面を何度も切り替えることになります。

連絡する中身も人によって違います。全面中止なら全員に伝えますが、ポイント変更なら集合時間が変わる人にだけ伝えます。体験ダイビングのお客さまには、返金か別の日への振替かを案内します。観光で来ている方は滞在日数が限られているので、「明後日なら空いていますか」と聞かなければなりません。ライセンス講習の途中の方には、残りの日程の組み直しも必要です。文面を少しずつ書き換えながら、LINE、メール、電話を使い分けていきます。

具体的に考えてみます。明日の参加者が、体験ダイビングの家族連れ2組、ファンダイブのリピーター3人、講習2日目の1人だったとします。連絡の中身は少なくとも3通りに分かれます。体験の2組には振替の候補日と返金の案内、リピーターには午後便への変更の打診、講習中の方には残りの日程の組み直しです。1人あたり5分で済んだとしても、全員分を送り終えるころには1時間近くたっています。返信が来るたびに台帳を書き直す手間も加わります。

21時を過ぎても既読がつかない人がいると、落ち着きません。翌朝、何も知らずに集合場所へ来てしまうかもしれないからです。結局、宿泊先のホテルに電話をかけたり、夜遅くにもう一度メッセージを送ったりします。翌日の準備や休息に充てたい時間が、こうして連絡の作業に消えていきます。

予約・申告と同意書・連絡履歴がばらばらだと何が起きるか

前日夜の大変さを生んでいる3つの情報を、もう少し分けて見てみます。1つ目は予約台帳です。誰が、何日に、どのコースで、何本潜るかが書かれています。2つ目は健康状態の申告と同意書です。紙のまま当日に記入してもらうショップもあれば、PDFをメールで送って印刷して持ってきてもらうショップもあります。3つ目は連絡の履歴です。LINEのトーク、メールの送受信、電話のメモがそれぞれ別の場所に残ります。

この3つがつながっていないと、ほころびが出ます。日程を変えたお客さまの同意書が、古い日付のまま保管されている。申告書の気になる項目にチェックが入っていたのに、事前に医師の確認が要ると伝えておらず、当日の朝に参加できないと分かる。スタッフが2人いても、どちらがどのお客さまに連絡したかが分からず、同じ人に二度送ったり、逆に誰も送っていなかったりする。どれも小さなことですが、お客さまの旅程と安全に直接関わります。

振替が絡むと、さらに追いにくくなります。「明後日の午前に変更」とLINEで決まったのに、予約サイト側の日付は元のまま。ホテル経由の予約なら、ツアーデスクにも変更を伝える必要があります。お客さま、ショップ、仲介先の三者で記録が食い違うと、当日の人数が合わない、送迎の車が足りないといった形で表に出てきます。

小さなショップほど、オーナーの頭の中が実質的な台帳になっています。忙しい時期でも回っているのは、その人が全部を覚えているからです。裏を返せば、オーナーが船に乗っている間や体調を崩したときに、ほかの人が状況をつかめません。沖縄の中小企業で同じような構造がよく見られることは、沖縄の中小企業のAI活用についてまとめた記事でも触れています。

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当日朝7時半、受付カウンターで時間が溶けていく

翌朝、天候が回復して予定どおり出られることになったとします。集合場所には、眠そうな顔のお客さまが次々にやって来ます。受付では申告書と同意書を書いてもらい、記入漏れを確かめ、ウェットスーツやフィンのサイズを聞きます。並行して、ログ付けの確認やライセンスカードのチェックもあります。紙の字が読みにくかったり、申告の項目の意味が伝わらなかったりすると、そのたびに説明が要ります。

海外からのお客さまが混じっていれば、項目を英語などで説明する時間も加わります。ボートの出港時刻は決まっているので、受付が長引けばブリーフィングの時間を削ることになります。本来いちばん丁寧にやりたい安全の説明が、押せ押せの中で駆け足になってしまうわけです。

申告書で「はい」に丸が付いた項目があれば、その場で詳しく聞き取る必要があります。最近の通院や服薬、耳抜きへの不安など、内容によっては参加を見送ってもらう判断も出てきます。その判断を出港直前の数分でするのは、お客さまにとってもスタッフにとっても負担です。前の日に分かっていれば、医師の確認をお願いしたり、別のプランを提案したりする余裕が持てます。

前日の夜に連絡を入れるのと同じ流れで申告書も事前に出してもらえていれば、朝の受付は内容の確認と体調の聞き取りだけで済みます。中止の連絡と同意書は一見別の仕事に見えますが、「予約ごとに、お客さまとやり取りする」という点では同じ線の上にあります。

予約を起点に、申告と連絡を1本の線でつなぐ

予約・健康申告と同意書・連絡履歴を1つの記録につなぎ、AIが一斉連絡する流れのイメージ

考え方はシンプルです。予約を受けた時点で、参加者ごとの記録を1つ作ります。その記録に、健康状態の申告、同意書の提出状況、連絡の履歴をすべてぶら下げていきます。予約が確定したら、申告と同意書のフォームへの案内を自動で送ります。前日には未提出の人だけを一覧にして、もう一度お願いします。予約の入口がいくつあっても、行き着く先を1つにそろえるのが出発点です。

中止や変更を決めたときも、この記録が生きます。スタッフは「明日の午前便は中止、午後は判断を朝7時に持ち越し」と入力するだけです。AIが対象のお客さまを抜き出し、予約内容や使う言語に合わせて連絡文の下書きを人数分作ります。スタッフが文面を確かめて承認すれば、それぞれの連絡手段で一斉に送られます。返信に書かれた振替の希望日もAIが読み取り、台帳に反映する案として並べます。未返信の人は一覧で分かるので、電話が必要な相手だけに絞って連絡できます。

下書きは、たとえば体験ダイビングのお客さまなら「明日の午前のボートは、北風と波の影響で中止とさせていただきます。ご滞在中の別の日への振替、またはご返金のどちらかをお選びください。振替は○日・○日の午前に空きがあります」といった形になります。講習中の方には残りの日程の候補を、リピーターには午後便の集合時間を差し込みます。空き枠は台帳から引くので、すでに埋まった日を案内してしまう心配もありません。スタッフは文面を一つずつ書く代わりに、並んだ下書きを読んで直すだけになります。

申告書の内容についても、AIができるのは「該当する項目がある」「記入が抜けている」と目印を付けるところまでです。その人が潜ってよいかを判断するわけではありません。こうした、決まった手順を自分で進める仕組みはAIエージェントと呼ばれます。ショップ側の使い方に合わせて、どこまで任せるかを調整できるのが特徴です。

AIに渡す作業と、人が手放さない判断の線引き

ここまでの流れを、業務ごとに分けて整理します。線を引く基準は「取り返しがつくかどうか」です。連絡文は送る前なら何度でも直せます。一方で、海に出す判断や潜らせる判断は、一度実行すると元に戻せません。

業務AIに任せる部分人が判断する部分
開催の可否予報情報の整理、前回同じような条件だった日の記録の提示出す・出さない・ポイント変更の最終判断
中止・変更の連絡対象者の抽出、文面の下書き、多言語化、一斉送信、未返信者の洗い出し文面の最終確認と送信の承認、電話で伝えるべき相手の見極め
振替・返金希望日の取りまとめ、台帳への反映案の作成個別の事情を踏まえた振替・返金の扱い
健康申告・同意書未提出者の抽出、記入漏れの指摘、該当項目への目印参加の可否、医師確認の要否、当日の体調の聞き取り
当日の受付・出港参加者リストと器材サイズの一覧化ブリーフィング、安全説明、現場での最終確認

表を見ると、AIの役割は「集める・そろえる・下書きする・送る」に集中しています。逆に、海を見て決めること、人の顔を見て決めることは、すべて右側の列に残ります。この区切りをはっきりさせておくと、スタッフが「AIが勝手に送ってしまった」と不安になることもありません。お客さまにとっても、最終的な判断を人が下している安心感は変わりません。

始める前に、送信ボタンを押す人を決めておく

仕組みを入れる前に、いくつか確かめておきたいことがあります。まず、いま予約がどの経路から何件ずつ入っているかを書き出します。予約サイトと連携できるかどうかは使っているサービスによって違い、自動で取り込めない場合もあります。次に、同意書と申告書の書式です。指導団体や保険の決まりに沿って作られていることが多いので、勝手に書き換えず、電子化してよいかを確認しておきます。健康に関する情報はとくに慎重に扱う個人情報なので、どこに保存し、誰が見られるようにするかも先に決めます。

最初から全部をつなごうとしなくても構いません。たとえば「LINEで予約を受けた体験ダイビングだけ」「中止連絡の下書きだけ」のように、範囲を絞って1か月ほど試すやり方もあります。実際に使ってみると、お客さまの返信の傾向や、電話でないと伝わらない相手が見えてきます。そこから対象のコースや連絡手段を広げていけば、現場のやり方を大きく崩さずに済みます。

そしていちばん大事なのが、誰が送信を承認するかです。オーナーが船の上にいる時間帯は誰が見るのか。夜遅くの変更は誰の判断で送るのか。ここをあいまいにしたまま自動化すると、便利さより不安が勝ってしまいます。導入するなら、繁忙期や台風の多い時期に入る前に試しておくと、慌てずに済みます。費用や進め方はショップの規模や今の運用によって変わるため、一律には言えません。気になる方はお問い合わせから、いまの予約と連絡の流れをそのまま聞かせてください。

まとめ:海を見る時間を、スタッフの手に戻す

海況による中止の連絡に追われる夜は、天気のせいだけで生まれているわけではありません。予約台帳、健康状態の申告と同意書、連絡の履歴が別々の場所にあることが、作業を何倍にも膨らませています。予約を起点にこの3つを1本の線でつなげば、対象者の抽出、文面の下書き、一斉送信、未返信の確認、申告の整理はAIに任せられます。開催の判断、潜ってよいかの判断、当日の安全確認は、これまでどおり人が担います。連絡に使っていた夜の時間を、翌日の海を見て安全に案内する準備に回すこと。それが、この仕組みを入れるいちばんの理由です。