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自動化できる仕事が思いつかない|1週間の作業ログから候補を10個出す手順

自動化の相談で最初に出てくる言葉は、たいてい「うちは何を自動化したらいいのか、そもそも思いつかない」です。これは発想力の問題ではありません。毎日やっている作業は体に馴染みすぎていて、意識に上がってこないだけです。だから解き方も決まっていて、思い出そうとするのをやめて、1週間ぶん記録する。そのうえで繰り返し回数と1回の所要時間を掛け合わせて並べ替え、任せてよい列と人が持つ列に仕分ける。この記事は、その3つの実作業をそのまま手順書にしたものです。最後に、沖縄セールスパートナー社内でこの手順を回して出てきた候補10個の書き出し例を表で載せます。紙とペンがあれば、読者の会社でも同じことが再現できます。

なぜ「思いつかない」が正常なのか

机の上に置かれた5列の記録用紙とペンのイラスト

県内の中小企業を回っていると、社長や事務の責任者にその場で「自動化したい作業を3つ挙げてください」と聞く場面があります。返ってくるのはだいたい2つか3つで、しかも内容がよく似ています。請求書の作成、給与計算、あとは「エクセルのなんとか」。悪い答えではないのですが、これはその人が「面倒だ」と口に出したことがある作業のリストであって、実際に時間を食っている作業のリストではありません。

時間を食っている作業ほど、面倒だと感じにくいという逆転が起きます。毎朝9時前に受信メールを開き、迷惑メールを消して、問い合わせだけ別フォルダに移して担当者へ転送する。5分かかっていても、5分は「かかった」という記憶に残りません。月曜の朝に先週の売上をエクセルへ転記する15分も、バタバタの中ではその15分だけを切り出して覚えていない。逆に年2回の棚卸しは丸一日潰れるので強く記憶に残り、「自動化したい作業」として真っ先に挙がります。ところが年2回なら、半分に減らしても年間で半日の効果しか出ません。

つまり記憶から引っ張る限り、頻度の低い大物ばかりが候補に上がり、頻度の高い小物は永久に見つからない。ここを構造的にひっくり返すのが記録用紙です。記憶に頼らず、起きた順に書く。書いたものだけが候補になる。この割り切りが手順の全部だと言ってもいいくらいです。

記録用紙は1枚、列は5つだけにする

用意するのはA4のコピー用紙かノート1ページで十分です。エクセルのシートでも構いませんが、パソコンを開いていないと書けない形式にすると、電話対応や来客対応といった「パソコンから離れているときの作業」が丸ごと抜け落ちます。沖縄の会社は来客と電話が多く、この抜け落ちが致命的になりやすいので、私たちは紙を推しています。デスクの右手、マウスの横に置いておく。それだけです。

列は5つに固定します。日付、作業名、かかった時間、使ったもの、気持ち。作業名は「請求書」ではなく「A社の請求書をfreeeで作ってPDFにしてメールに添付した」くらいまで具体に書きます。あとで工程を分解するとき、この粒度でないと切り分けられないからです。かかった時間はストップウォッチで測る必要はなく、5分・10分・30分の3段階で丸めて構いません。1分単位の正確さより、1週間書き続けられることのほうが何倍も重要です。

「使ったもの」は、その作業で開いたシステムやファイルを書く欄です。kintone、freee、Gmail、共有フォルダのエクセル、LINE、紙の台帳。ここが自動化の可否を左右します。システムをまたぐ作業ほど転記が発生していて、転記が発生している作業ほど機械に向いているからです。最後の「気持ち」は一言でよく、「単調」「気を使う」「判断が要る」「電話しながらで焦る」程度。これが後半の仕分けで効いてきます。

書くタイミングは、作業が終わった直後に1行。ためると必ず書けなくなります。1日の終わりにまとめて書こうとした人は、経験上3日目で脱落します。逆に、直後に1行だけなら20秒で済むので続きます。1週間書くと、多い人で60行、少ない人でも25行くらいになります。この行数の差自体が情報で、25行しか出ない人は「作業をひとかたまりで捉えすぎている」ことが多く、後述の分解で行数が倍に増えます。

1週間に満たないなら、その週はやり直す

期間を1週間にするのには理由があります。会社の仕事には週次の波があり、月曜だけの作業、金曜だけの作業が必ず存在するからです。3日で切り上げると、月末処理どころか週次処理すら取りこぼします。逆に1か月続けようとすると記録が雑になり、後半は「いつもの作業」としか書かれなくなる。7日間が、続く長さと網羅性の折り合う点です。

できれば月初か月末を含む週は避けて、普通の週で取ることをおすすめします。月次処理は誰でも思いつく大物なので、記録用紙を使わなくても候補に挙がります。記録用紙にやってほしい仕事は、普通の週の、誰も意識していない小物を拾うことです。月次の作業は「これは月1で2時間」と別枠でメモしておけば足ります。

それから、記録は複数人で同時に取ってください。社長ひとりが取ると、社長の作業しか出ません。事務2名、営業2名、現場1名といった具合に、職種の違う人が同じ週に取る。同じ会社でも、事務が「単調」と書く作業を営業が「気を使う」と書くことがあり、その食い違いが後で効きます。人数が少ない会社なら全員で構いません。用紙を配るときには「評価には一切使わない」と明言しておくこと。人事評価の匂いがした瞬間に、記録は美化されて使い物にならなくなります。

書き終えたら、1行を工程に割る

1週間分が溜まったら、まず行を分解します。たとえば「見積書を作って送った・30分」という1行は、そのままでは自動化の可否を判断できません。中身は、①過去の類似案件をフォルダから探す②雛形をコピーして日付と宛名を直す③単価を確認する④PDFにする⑤メールの文面を書く⑥送信して控えを保存する、という6工程に分かれています。30分の内訳は、①と④と⑥で15分、③で5分、②と⑤で10分といったところです。

ここまで割ると景色が変わります。「見積書作成」は自動化できないが、「過去案件を探す」「PDF化して控えを保存する」は自動化できる。単価の確認は人の判断が要るので残す。メール文面は下書きを機械が出して人が直す形にできる。1行を丸ごと「できる・できない」で判定していると、判断が要る工程が1つでも混ざった瞬間に「できない」になってしまい、候補が全滅します。工程に割ってから判定するのが、候補を10個出すための最大のコツです。

分解の目安は、「使ったもの」欄に書いたシステムが切り替わるところで線を引くことです。フォルダを開く、freeeを開く、Gmailを開く。切り替わりの回数だけ工程がある、と考えるとほぼ合います。この切り替わりこそが転記であり、人が手でつないでいる部分だからです。逆にひとつのシステムの中で完結している工程は、自動化するならそのシステムの機能側で考えることになります。

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繰り返し回数×1回の所要時間で並べ替える

繰り返し回数と所要時間を掛けて並べ替えるイメージのイラスト

工程に割ったら、それぞれに2つの数字を入れます。1か月あたりの繰り返し回数と、1回あたりの所要時間(分)。1週間の記録なので、週次の作業は4倍、日次の作業は20倍して月換算にします。月1の作業は1のまま。掛け算した結果が、その工程が月に食っている分数です。この数字の大きい順に並べる。それだけです。

並べ替えると、たいていの会社で見慣れない順位が出てきます。上位に来るのは「1回3分だが日に5回ある」類の工程で、月換算すると300分、5時間になります。一方、最初に「自動化したい」と口に出していた月次の大物は、2時間×1回で120分。順位は逆転します。ここで思いつきの候補より記録の候補が上に来るという体験をすることが、この手順の本当の価値です。数字が出てしまえば、社内で優先順位を議論するときに感覚のぶつけ合いになりません。

注意点を2つ。ひとつは、所要時間に切り替えコストを足すこと。電話が鳴って中断した、他の作業から戻ってくるのに手間取った分は記録に残りにくいのですが、実際には発生しています。1回3分の作業でも、1日5回別々のタイミングで発生するなら、体感は3分では終わっていない。厳密に測る必要はないので、頻度が高く細切れの工程は所要時間を少し多めに見ておくくらいでちょうどよいはずです。

もうひとつは、時間だけで決め切らないこと。分数は並べ替えの軸としては優秀ですが、ミスが起きたときの影響が大きい工程は、時間が短くても上に持ち上げて構いません。金額の転記、宛先の選択、公開前の最終確認。こういう工程は「短いのに神経を使う」と気持ち欄に書かれているはずなので、そこを手がかりに拾います。逆に、気持ち欄に「単調」とだけ書かれていて分数が大きい工程は、迷わず最上位の候補です。

任せてよい/人が持つ、の2列に仕分ける

並べ替えたら、上から順に2列へ振り分けます。線の引き方はシンプルで、判断が入るかどうか間違えたときに外へ出てしまうかどうかの2点で見ます。判断が入らず、間違えても社内で気づいて直せる工程は、任せてよい列。人の判断が要る、あるいは間違いがそのまま顧客に届く工程は、人が持つ列です。

ここで多くの会社が迷うのが、メールやチャットの送信、請求データの登録といった「外に出る」工程です。私たちが自社のBotを作るときに一貫して守っているのは、下書きまでは機械、送信は人の承認という線引きです。文面を作る、宛先候補を出す、添付を用意するところまでは任せてよい列に入れて、最後に人が目で見て承認ボタンを押す。この形にすると、時間の削減はほぼそのまま得られるのに、外へ出る事故の経路は塞がったままになります。仕分けに迷ったら、工程をもう一段割って「下書き」と「送信」に分け、前半だけ任せてよい列に入れてください。

もうひとつ、判断が入る工程でも判断の材料集めは任せられることが多い、という視点を持っておくと候補が増えます。どの案件を優先するかは人が決めるとしても、決めるために必要な一覧を毎朝そろえるのは機械の仕事です。県内の会社では、朝礼の前に担当者が各システムを開いて数字を拾い、ホワイトボードに書く手順が残っていることがありますが、拾って並べるところまでは任せられて、何を重点にするかの一言だけ人が足せばいい。仕分けは工程単位でやる、と繰り返しているのはこのためです。

仕分けの結果、任せてよい列が5つ以下しか出ない場合は、まだ分解が粗い可能性が高いです。もう一度、行を工程に割る作業に戻ってください。反対に任せてよい列が20を超えたら、上から5つに印を付けて、残りは一旦置いておきます。全部やろうとして止まるのが、この手の取り組みで一番多い終わり方です。AIエージェント・業務自動化の取り組みでも、最初に手を付ける数は絞ることを前提にしています。

自社で出た候補10個の書き出し例

参考までに、私たち自身がこの手順を回して書き出した候補を10個載せます。会社の規模も業種も違えば中身は変わりますが、書き出しの粒度と、数字の入れ方の見本として使えるはずです。所要時間は記録用紙から丸めた概算で、月換算は週次を4倍、日次を20倍しています。

#工程(分解後)月の回数1回月換算仕分け
1受信メールを見て、問い合わせだけ担当へ知らせる約100回3分約300分任せてよい
2顧客からの依頼内容を要点だけにまとめ直す約60回5分約300分任せてよい
3請求書PDFを見て会計システムへ登録する約40回6分約240分任せてよい(登録内容は人が確認)
4案件の進捗を管理システムへ転記する約40回5分約200分任せてよい
5過去の類似案件・資料をフォルダから探す約30回6分約180分任せてよい
6アクセス解析の数値を集めて資料の形に並べる約12回15分約180分任せてよい
7返信メールの下書きを作る約50回4分約200分任せてよい(送信は人)
8資料の「まとめ・次の一手」を書く約12回20分約240分人が持つ
9見積の単価・条件を決める約20回10分約200分人が持つ
10値引き・特例の可否を判断する約8回15分約120分人が持つ

この表を眺めると分かるのですが、上位に並んでいるのは派手な工程ではありません。見て、拾って、別の場所へ移す。それだけの工程が上から6つ続きます。一方で下の3つ、まとめを書く・単価を決める・可否を判断するは、時間としては決して小さくないのに人が持つ列に入っています。ここを機械に渡さないと決めておくことが、結果的に上の6つを安心して渡せる条件になります。

7番のように、同じ「メールを返す」という行の中で仕分けが割れているのも見てほしい点です。下書きを作る部分は任せてよい列、送信は人が持つ列。1行を丸ごと判定していたら、この工程は「顧客に出るものだから無理」で終わっていました。

候補が出たあと、何を決めれば動き出すか

10個並んだ時点でやることは、実は多くありません。上位から順に、その工程が今どのシステムの間を渡っているかを1行で書き足すだけです。1番なら「メール→担当者への連絡」、3番なら「PDF→会計システム」。この矢印が、そのまま実現方法の当たりになります。どちらの端にもAPIや取り出し口があるものは比較的つなぎやすく、片方が紙や人の口頭だけで完結しているものは、先にそこをデジタルに載せる話が必要になります。

費用や期間は、この矢印の中身と、社内のシステムの状態によって大きく変わります。同じ「請求書の登録」でも、既にクラウド会計を使っている会社と紙の台帳の会社では前提がまるで違うので、相場として一律に言える数字はありません。そのあたりは実物を見ないと判断できないので、記録用紙と候補10個を持ち込んでもらうのが一番早いです。順番の付け方や、どこまで任せるかの線引きも含めて、ご相談はこちらから受け付けています。

最後にもうひとつ。この手順は一度やって終わりにせず、半年から1年に一度、同じ記録用紙で取り直すことをおすすめします。上位の工程を機械に渡すと、その分の時間が空いて別の作業が増えます。増えた作業は当然、記録を取っていないので誰も意識していない。1年後の記録用紙には、今回とは違う行が上位に並んでいるはずです。

まとめ

自動化できる仕事が思いつかないのは、発想の問題ではなく、記憶が高頻度の小さな作業を保存してくれないからです。だから1週間、作業が終わった直後に1行ずつ、日付・作業名・時間・使ったもの・気持ちの5列で記録する。溜まったら1行を工程に割り、システムが切り替わるところで線を引く。月あたりの繰り返し回数と1回の所要時間を掛けて並べ替え、判断が入るか・間違いが外に出るかの2点で、任せてよい列と人が持つ列へ仕分ける。

この手順を踏むと、思いつきで挙げた大物より、誰も口に出していなかった小さな繰り返しが上位に来ます。そして仕分けを工程単位でやれば、「顧客に出るから無理」と切り捨てていた作業も、下書きまでは渡せることが見えてきます。必要なのは紙1枚と、直後に20秒書く習慣だけです。まずは今週、デスクの右手に1枚置くところから始めてみてください。