AIに書かせた文章がどこも同じ顔になる|自社らしさを残す3つの手当て
生成AIで下書きを作るようになってから、自社のお知らせも、提案書の前段も、SNSの投稿も、どこかで読んだことがあるような文章になった。沖縄県内の中小企業からそういう相談を受けることが増えました。結論から言えば、原因はAIの文章力ではありません。自社らしさの材料を渡さないまま書かせていることが原因です。
しかも「同じ顔になる」という感覚は、ぼんやりした印象論ではありません。分解すると、語彙が平均化する・主語が自社でなくなる・具体が消える、という三つの症状に整理できます。症状が三つなら、手当ても三つで足ります。この記事では症状と手当てを対にして並べ、最後にお知らせ文・提案文・SNS投稿で手当ての強さをどう変えるかを、一枚の早見表にまとめます。
「どこも同じ顔」は、AIの実力不足ではなく材料不足のサイン
生成AIが当たり障りのない文章を返すのは、欠陥ではなく仕様に近い性質です。大量の文章から「この文脈でいちばんありそうな続き」を選んでいるので、何も指定しなければ、いちばんありそうな言葉づかい、いちばんありそうな論の運びに収束します。業種を「建設業」とだけ伝えれば建設業の平均が、「観光業」とだけ伝えれば観光業の平均が返ってくる。誰が書いても似るのは当然なのです。
ここで多くの担当者がやってしまうのが、プロンプトに「もっと自然に」「親しみやすく」「独自性を出して」と形容詞を足す対処です。これはほとんど効きません。形容詞は判断基準ではなく感想なので、AIの側では「親しみやすい文章の平均像」に置き換わるだけだからです。結果として、親しみやすさまで平均化した文章が出てきます。
効くのは形容詞ではなく材料です。自社が普段使っている言葉、現場の人が実際に口にした一言、他社では書けない数字と手順。この三つを渡せるかどうかで、出力は目に見えて変わります。そして渡すべき材料は、症状ごとにきれいに対応しています。以下、順に見ていきます。
症状その1|語彙が平均化して、誰の口からも出そうな言葉になる

最初の症状は語彙です。「お客様に寄り添い」「最適なソリューションをご提案」「安心・安全な施工」——読んだ瞬間に意味が滑っていく言葉が並びます。間違ってはいないし、失礼でもない。ただ、社名を入れ替えても成立してしまう。そこが問題です。
特に県内の企業では、この平均化が実害になりやすい場面があります。たとえば台風接近時の営業案内。全国平均の言葉で書くと「悪天候が予想されるため」という表現になりますが、県内のお客様が知りたいのは、暴風警報が出たらどうなるのか、解除後いつから通常営業なのか、離島への配送はどう扱うのかという具体です。言葉が平均化すると、その土地では当たり前に共有されている前提まで一緒に抜け落ちてしまいます。
手当ては、自社の言い回し集を作ってAIに渡すことです。大げさな作業ではありません。過去のお知らせやメール、社長の挨拶文から、自社が実際に使っている言葉を三十ほど拾って一枚のメモにします。「お客様」と書くのか「お客さま」なのか。「弊社」か「当社」か。工事の連絡で「着工」と言うのか「工事に入ります」と言うのか。逆に、社内で誰も使わない言葉——「ソリューション」「シナジー」「DX推進」などは、使わない語として並べておきます。使う語と使わない語を両方渡すのがコツで、禁止リストのほうが効き目が早いことも多いです。
このメモを毎回プロンプトの冒頭に貼るだけで、出力の表面は一段自社に近づきます。手間としてはいちばん軽いのに、効果がいちばん分かりやすい手当てです。
症状その2|主語がいつの間にか自社でなくなる
二つ目は主語の症状です。書き出しは自社の話だったのに、読み進めるうちに「近年、多くの企業では」「一般的に中小企業においては」と、誰が言っているのか分からない解説になっていく。AIが一般論を語りはじめると、文章の立ち位置が業界解説記事のほうへずれていきます。
これが起きると、読み手は書き手を信用しにくくなります。お知らせ文なら「この会社が責任をもって伝えている」という感触が薄れ、提案文なら「うちの状況を分かったうえでの提案ではないな」と感じさせます。文章が丁寧なだけに、かえって距離を感じさせるのが厄介なところです。
手当ては、実際の現場の一言を混ぜることです。原稿を書く前に、担当者や職人さん、店舗スタッフに一つだけ聞いておきます。「この作業で、いちばん気をつけているところは何ですか」「お客様からよく聞かれることは何ですか」。返ってきた言葉を、できるだけ加工せずにプロンプトへ入れます。「夏場は接着剤が乾くのが早いから、朝いちで段取りを決める」「雨戸の相談は、台風が来る前の週に一気に来る」——こうした一言が一つ入るだけで、文章の主語は自社に戻ります。
大事なのは、きれいな言葉に直さずに渡すことです。整った表現に直してから渡すと、それはもう平均の言葉なのでAIが吸収してしまいます。話し言葉のまま渡して、本文中では引用のように扱う。そうすると、その一文だけは他社に書けない文になります。
症状その3|具体が消えて、説明だけが残る

三つ目の症状がいちばん深刻です。読み終えたあとに、何をしてくれる会社なのかが思い出せない。書いてあることは全部正しいのに、判断材料が一つもない。これは具体が消えた状態です。
AIは数字や固有名詞を知らないので、渡さなければ書きようがありません。その結果、「迅速に対応します」「豊富な実績があります」「お客様に合わせて柔軟にご提案します」といった、検証できない表現で埋まります。読み手の立場に立てば、この三行から得られる情報はゼロに近い。
手当ては、数字と固有の手順を必ず入れることです。ただし、ここは同時にリスク管理の話でもあります。断定できない数字を出すのは避けるべきで、料金の相場や補助金の可否、実績の件数などは「内容によります」「事前にご相談ください」と正直に書いたほうが、結果的に信用されます。書くべきなのは、確実に言い切れる自社の数字と手順のほうです。
たとえば「お問い合わせから現地確認までの流れが三段階あること」「初回の打ち合わせでお持ちいただくと話が早い書類」「見積りの前に必ず現地を見る、という自社の決まりごと」。こうした手順は他社と必ずどこか違いますし、間違いなく言い切れます。県内であれば「離島への納品は便の都合で日程の調整が必要になる」といった、地理的な前提も立派な具体です。数字と手順が二つか三つ入るだけで、文章は一般論から自社の説明に変わります。AIを業務に組み込む考え方も基本は同じで、AIに判断させるのではなく、自社にしかない情報をどう渡すかが成否を分けます。
三つの手当てを、毎回使える形に固定する
ここまでの手当ては、思い出したときだけやっても続きません。毎回の作業に埋め込んでしまうのが現実的です。
おすすめは、プロンプトを三段構成で固定してしまうことです。一段目に言い回し集(使う語・使わない語)、二段目に今回の現場の一言、三段目に今回使える数字と手順。そのあとに「この材料を使って、お知らせ文を八百字で」と用件を書く。テキストファイル一枚をテンプレートとして共有フォルダに置き、担当者はコピーして二段目と三段目だけ書き換える運用にすれば、誰がやっても一定の品質になります。
言い回し集は、最初から完璧を目指さなくて構いません。運用しながら「この言葉は違う」と気づいたものを足していくほうが、実態に合ったものになります。三か月も回せば、そのメモ自体が自社のトンマナの定義書になっていきます。逆に言えば、この一枚を作らないまま社内にAI利用を広げると、部署ごとにバラバラの平均文が量産されることになります。
手当てを強くしすぎると、別の問題が起きる
一方で、三つの手当てを常に全開にすればよいわけでもありません。強くしすぎたときの副作用も知っておくべきです。
言い回し集を細かく指定しすぎると、文章が硬直して読みにくくなります。同じ言い回しが何度も出てきて、かえって機械的な印象になることもあります。現場の一言も、入れすぎれば話があちこちに飛びます。数字と手順を詰め込みすぎると、読み物としては正確でも重くなり、SNSのように短い接点ではまず読まれません。
さらに、生成AIは渡した材料を勝手に一般化したり、渡していない数字を補って書いてしまうことがあります。出力をそのまま公開しない、という一線だけは運用ルールとして残してください。特に金額・納期・補助金の条件のように、間違えると相手に迷惑がかかる項目は、公開前に人が必ず確認する。ここだけは自動化の対象から外しておくのが安全です。手当ては強さを調整するもので、常に最大にするものではない、と考えるのが実務的です。
お知らせ文・提案文・SNS投稿で、手当ての強さを変える
では、どの文章にどの手当てをどれくらい効かせるのか。ここは文章の目的で決まります。お知らせ文は「正確に伝わること」、提案文は「この会社に頼む理由が分かること」、SNS投稿は「立ち止まってもらえること」が目的なので、必要な材料の比重が変わります。
| 文章の種類 | 自社の言い回し集 | 現場の一言 | 数字と固有の手順 | 公開前の確認 |
|---|---|---|---|---|
| お知らせ文(休業案内・工事連絡など) | 強め(表記ゆれを完全に統一) | 弱め(不要なら入れない) | 強め(日付・対象・連絡先は必須) | 必ず人が確認 |
| 提案文・提案書の前段 | 中くらい(硬くなりすぎない範囲で) | 強め(判断の理由が伝わる) | 強め(手順と前提条件を明記) | 必ず人が確認 |
| SNS投稿 | 中くらい(禁止語だけ厳守) | 強め(一言がそのまま主役) | 弱め(数字は一つに絞る) | 要点だけ確認 |
表の使い方としては、迷ったときに「今回はどの列を強くするか」を先に決めてからプロンプトを組み立てる、という順番がおすすめです。お知らせ文で現場の一言を無理に入れると読みにくくなりますし、SNS投稿で手順を全部書くと最後まで読まれません。強弱をつけることが、そのまま自社らしさの出し方になります。
なお、この配分は業種によっても変わります。工事や設備のように説明責任が重い業種では数字と手順の比重が上がり、飲食や小売のように空気感が価値になる業種では現場の一言の比重が上がる。自社にとっての配分がまだ見えない段階であれば、実際の原稿を並べて相談するのが早いので、お問い合わせから具体的な文章を持ち込んでいただく形でも構いません。
まとめ|自社らしさは、AIの側ではなく渡す情報の側にある
AIに書かせた文章がどこも同じ顔になるのは、語彙が平均化し、主語が自社から離れ、具体が消えるからです。逆に言えば、自社の言い回し集を渡し、現場の一言を混ぜ、数字と固有の手順を入れる。この三つで、同じ顔の状態からはおおむね抜け出せます。
どれも新しい技術の話ではなく、自社の中にすでにある材料を集めて渡すだけの作業です。最初の一枚のメモを作るのに半日かかったとしても、その後の原稿すべてに効き続けます。沖縄の中小企業でのAI活用を考えるうえでも、出発点は同じところにあります。まずは直近のお知らせ文を一本、三段構成のプロンプトで書き直してみるところから始めてみてください。