画像生成AIの素材をチラシに使う前に|権利と表記で社内が決める4点
画像生成AIで作った絵をチラシやポスターに載せる前に、社内で決めておくことは多くありません。似すぎていないか、人物や店舗が写り込んでいないか、ロゴや商標が紛れていないか、その画像の出どころを後から説明できるか。この四点について「うちはこうする」を先に決めておき、担当者は公開前に毎回同じ順番で見る。それだけで、刷り上がったあとに慌てて取り下げる事態のほとんどは手前で止められます。
逆にこの四点が決まっていない会社では、判断がその日の担当者の感覚になります。ある人は気になって作り直し、別の人は気にせず入稿する。何か言われたときに「なぜこれを通したのか」を誰も説明できないのが、いちばん困る状態です。この記事では先に四つのつまずきを並べ、それぞれに社内で決める判断と、担当者が公開前に踏む確認の手順を割り当てていきます。最後にその全部を一枚の確認表にまとめます。
刷り上がってから気づくと、直す先は紙だけでは済まない
取り下げが痛いのは、紙が無駄になるからではありません。同じ絵が何か所にも散っているからです。折込チラシに使ったメインビジュアルは、たいてい店頭のA2ポスターになり、Instagramの投稿になり、LINE公式のリッチメニューになり、Googleビジネスプロフィールの写真欄に入り、名刺サイズのショップカードの裏にも刷られています。数千枚単位の紙を止めるだけでなく、掲載先を一つずつ探して差し替える作業が発生します。
沖縄の中小企業だと、制作を担当しているのは専任の一人か、他の仕事と兼務している人です。外注のデザイナーに入稿データを渡していれば、そちらにも連絡して差し替え版を作ってもらう必要が出ます。印刷所の入稿締切が旧盆前や年末に集中する時期だと、作り直しの日程そのものが取れません。だからこそ、公開前の一回の確認に手をかける価値があります。
ここで大事なのは、確認を「気をつける」で終わらせないことです。気をつけるは手順ではないので、忙しい週には必ず抜けます。何を見るのか、どこまでなら進めてよいのか、迷ったら誰に上げるのか。この三つが決まって初めて、担当者は安心して止められるようになります。
つまずき① どこかで見た絵に似てしまう

画像生成AIは学習した傾向にそって描くので、指示の出し方によっては特定の作風や有名な構図にぐっと寄ります。よくあるのは、プロンプトに「◯◯風」と作風の名前を入れてしまうケースです。有名なアニメやイラストレーターの名前はもちろん、沖縄の販促物でありがちな「紅型風」「やちむん風」といった伝統的な意匠の指定も、実在する作家や工房の作品にかなり近い絵が出てくることがあります。地元で名前の通った作り手ほど、見る人が見れば一発で気づきます。
社内で決めるのは、プロンプトに固有名詞の作風指定を入れないという線です。作風を寄せたいときは「淡い色の手描き風」「琉球の伝統的な色づかいを思わせる配色」といった、特定の誰かを指さない言い方に置き換える。加えて、既存のキャラクター名や作品名、実在の商品名も入れない。ここはルールとして文章で残し、外注のデザイナーに依頼するときの発注メモにも同じ一文を入れておきます。
担当者が公開前に踏む手順は、出来上がった画像を画像検索にかけて、よく似た既存の絵が出てこないか見ることです。完全に同じものが出ることは稀ですが、「これは何かに寄せて描かせたな」と感じる絵は、たいてい似た系統の作品が並びます。そのとき違和感があるなら、プロンプトを直して作り直したほうが早い。似ているからといって直ちに何かに触れるとは限りませんが、判断は内容によりますし、揉めたときに先に来るのは取り下げの手間のほうです。
つまずき② 人物と店舗が実在しそうに写る
生成された人の顔は架空のはずですが、実在の誰かに似てしまうことは起こります。厄介なのは、社内の誰も似ていることに気づけない点です。那覇のお店のチラシに出した笑顔のスタッフ風の人物が、別の地域の実在の人に似ていたとしても、確かめようがありません。加えて、自社の従業員やお客様の写真を参照素材として読み込ませて生成した場合は、その人の顔をもとに新しい絵を作っていることになります。本人の同意をどう取るかは、AIの話というより社内の手続きの話です。
背景も同じです。海沿いの街並みや商店街のアーケードを描かせると、実在の店舗の外観や看板に近いものが混ざることがあります。国際通り沿いや北谷のよく知られた景色は写真素材も多く、それらしい絵が出やすい。自社と関係のない他社の店構えが、自社のチラシの背景に写っている状態は避けたいところです。
決めておくのは二つ。人物写真を入力に使うときは書面かチャットで同意を残すことと、人物が主役になる絵は生成AIではなく実写の素材か契約済みのストックフォトを使うという線引きです。人物が脇役として小さく写る程度なら生成でもよい、といった許容範囲は会社ごとに違って構いません。大事なのは、その線を先に引いておくことです。
公開前に見るのは、顔が特定できる大きさで写っていないか、背景の建物や看板が実在の場所と分かる形で描かれていないか。拡大して、人物の目鼻立ちと背景の奥までひととおり目を通します。判断に迷う写り込みがあれば、その部分だけ塗りつぶすか、構図を変えて作り直します。
つまずき③ ロゴや商標らしきものが紛れ込む
画像生成AIは、文字らしきものを勝手に描きます。多くは崩れた読めない記号ですが、まれに既存の企業ロゴやブランドマークによく似た形が出ます。出やすいのは、テーブルに置かれた缶やペットボトル、紙袋、スマートフォンの背面、Tシャツの胸元、背景の車のエンブレム、商店街の袖看板です。メインの被写体ばかり見ていると、こういう小物は素通りします。
飲食店のチラシで「テーブルに料理と飲み物」という絵を作ると、飲み物の容器にそれらしいマークが乗ることがよくあります。印刷物になると小さくて気づきにくいのに、拡大されたSNS投稿では見えてしまう。同じ絵を紙とSNSの両方に使う前提なら、いちばん大きく表示される状態で確認する必要があります。
社内で決めるのは、生成画像の中に文字とロゴらしきものを残さないという原則です。キャッチコピーも店名も電話番号も、絵の中に描かせるのではなく、デザイン側で後から載せる。これは権利の話であると同時に、崩れた文字が入った販促物は単純に格好がつかない、という品質の話でもあります。文字は必ず外で組む、と決めてしまえば迷いません。
担当者の手順は、画面上で拡大して四隅まで見ること。特に被写体の手元、背景の棚、服のプリント、窓の外です。怪しい形があれば、そこだけレタッチで消すか、その要素が出ないようプロンプトを調整して再生成します。
つまずき④ 出どころを誰も説明できなくなる
三か月後に「このチラシの写真、どこから持ってきたもの?」と聞かれて答えられない。これが四つ目で、いちばん静かに効いてくるつまずきです。作った本人が異動したり退職したりすると、手がかりはファイル名だけになります。生成AIで作ったのか、無料素材サイトから落としたのか、以前の外注先からもらったデータなのか。区別がつかないまま、次の年のチラシにも同じ絵が流用されていきます。
もう一つ、生成AIのサービスは利用規約が変わります。商用利用の可否、生成物の扱い、有料プランと無料プランでの違いは提供元ごとに異なりますし、改定もされます。どのツールでいつ作ったかが残っていれば、後から当時の条件を確認できますが、残っていなければ確認のしようがありません。
決めるのは記録する項目と保存場所です。使ったツール名、生成した日付、プロンプト、参照素材を使ったかどうか、加工したかどうか。この五つを、画像と同じフォルダにテキストで一行ずつ残す。共有ドライブに素材フォルダを切り、案件ごとに入れるだけで十分です。ファイル名に日付とツールの略称を入れておくと、後から探すのが楽になります。
手順としては、書き出したその場でメモを残すこと。「あとでまとめて」は必ず溜まります。生成した直後の三十秒が、半年後の一時間を減らします。
四点を「決める人」と「毎回踏む人」に分ける
ここまでの四点は、性質が二つに分かれます。作風指定を禁じるか、人物が主役の絵に生成を使うか、どこまでの写り込みを許すか、といった許容度の設定は、一度決めれば当分変わらない判断です。これは経営者か管理側が決める。一方、画像検索をかける、拡大して隅まで見る、メモを残すといった作業は、制作するたびに担当者が踏む手順です。
この二つを混ぜると、担当者が毎回ゼロから悩むことになります。逆に分けておけば、担当者は「決まっていることに沿って見るだけ」になり、判断が要るのは想定外のケースだけになります。外注のデザイナーに任せる場合も、発注時に許容度のほうを伝え、確認の手順は社内で受け取ってから踏む、という分け方がすっきりします。AIを業務に組み込むときの考え方は沖縄の中小企業がAIを使いはじめるときの整理でも触れていますが、ツールを選ぶより先に「誰が何を決めるか」を置くほうが、結局は早く回りはじめます。
もう一つ添えておきたいのは、止めた担当者が損をしない空気をつくることです。入稿の前日に「これ、やめたほうがいいと思います」と言える人がいる会社は強い。逆に、差し戻しが後ろ向きに受け取られる職場では、気づいていても黙って通します。四点の確認は、その一言を出しやすくするための道具でもあります。
公開前の確認を一枚の表にして残す

決めたことは、文章のマニュアルではなく一枚の表にしておくほうが使われます。制作の最後に開いて上から見るだけで終わるからです。以下は、ここまでの四点をそのまま並べた形です。中身は自社の許容度に合わせて書き換えてください。
| 確認する点 | 社内で決めておく判断 | 公開前に見るところ | 怪しいときの動き |
|---|---|---|---|
| 似すぎていないか | 作風・作家・作品の固有名詞をプロンプトに入れない | 画像検索にかけて似た既存作がないか | プロンプトを直して作り直す |
| 人物・店舗の写り込み | 人物が主役の絵は実写素材を使う/参照写真は本人の同意を残す | 顔が特定できる大きさか、背景の建物が実在と分かるか | 構図を変える、該当部分を消す |
| ロゴ・商標の混入 | 絵の中に文字とマークを残さない(文字はデザイン側で載せる) | 拡大して四隅・小物・服・看板まで確認 | レタッチで消すか再生成 |
| 出どころの記録 | ツール名・日付・プロンプト・参照素材・加工の有無を残す | 画像と同じ場所にメモがあるか | その場で書き足してから入稿 |
表にしたら、制作フォルダの一番上に置くか、入稿チェックリストに一行として差し込みます。印刷会社への入稿ボタンを押す直前と、SNSに投稿する直前の二か所で開く。掲載先が増えるたびに同じ絵を使い回すので、最初の一回さえ通しておけば、以降は記録を見るだけで済みます。
社内で判断できる範囲と、専門家に回す線
ここまで書いてきたのは、あくまで社内の運用の話です。似ているかどうか、写り込みが問題になるかどうかは内容や使い方によって変わり、一般論で言い切れるものではありません。この記事の四点は「法的に大丈夫だと判断するための基準」ではなく、あとで困りそうなものを公開前に拾い上げるためのふるいだと受け取ってください。
そのうえで、社内で抱え込まずに専門家へ確認したほうがよい場面は、あらかじめ決めておけます。掲出の規模が大きいとき(新聞折込や屋外広告、長期間掲げる看板)、他社の商品やサービスが絵の中に写るとき、人物が主役のビジュアルを継続して使うとき、そしてその絵を会社やブランドの顔として長く使う予定があるとき。このあたりに当てはまったら、弁護士など専門家に相談する、と線を引いておく。相談できる範囲や費用は内容によりますので、まずは顧問がいれば顧問に、いなければ地元の相談窓口に聞いてみるのが現実的です。
大事なのは、その線を担当者が知っていることです。線を知らないと、人は判断を先送りするか、根拠なく大丈夫だと決めます。どちらも避けたい。「ここから先は自分で決めなくていい」と分かっていれば、手前の四点は落ち着いて回せます。
まとめ
画像生成AIの素材を販促物に使うときに社内で決めるのは、似すぎ・人物や店舗の写り込み・ロゴや商標の混入・出どころの記録、この四点です。決めるのは許容度で、毎回踏むのは確認の手順。二つを分けて一枚の表にまとめ、入稿と投稿の直前に開く。これだけで、刷ってから取り下げる事態の多くは手前で止まります。
裏を返すと、四点が決まっていない状態で生成AIを販促に使い始めるのは、担当者に毎回ひとりで判断させているのと同じです。ツールを増やすより先に、この一枚を作るほうが効きます。そして、規模の大きい掲出や人物が主役の絵など、決めた線を超えたものは迷わず専門家へ回す。この切り分けがあれば、生成AIは日々のチラシやSNSの素材づくりを十分に助けてくれます。
社内の判断や確認を、人の記憶ではなく仕組みとして持たせたい場合はAI社員(AIエージェント)の考え方もあわせてご覧ください。自社の販促物でどこまでを社内ルールにするか整理したい、という段階のご相談も承っています。内容によって進め方が変わりますので、まずはお問い合わせからお気軽にご連絡ください。