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入退社の手続きが毎回手探りの総務へ|AIで必要書類と案内文をそろえる

入退社の手続きが毎回手探りになるのは、担当者の記憶力の問題ではありません。年に数回しか発生せず、そのたびに前回の記憶が薄れているという、発生頻度そのものが原因です。だから対策は「覚える」ことではなく、入社と退社という二つの場面を時系列に並べた土台をつくり、社内で用意する書類と本人へ渡す案内文を、そのつどAIに下書きさせるという進め方になります。ゼロから思い出すのをやめて、下書きを直す作業に変えてしまう、ということです。

ここで大事なのは、AIに任せる範囲をはっきり分けておくことです。書類の名前を並べる、案内文の骨組みをつくる、去年の文面を今年の日付に合わせて整える。この辺りはAIが得意です。一方で、加入や喪失の可否、提出の期限、対象になるかどうかの判断は、会社の状況や雇用の形で変わります。ここは社労士や年金事務所、健康保険の窓口に確認する前提で進めてください。以下では、その線引きも含めて具体的に書いていきます。

毎回「はじめて」に戻ってしまう理由を、先に見ておく

那覇や浦添の十数名規模の会社で総務を見ている方と話すと、入退社の手続きについてほぼ同じことを言われます。「前回は去年の秋だったので、何をどの順番でやったか覚えていない」。手順書がないわけではなく、フォルダのどこかにはあるのに、そのファイルが最新かどうかが分からない。結局、前回の社員のフォルダを開いて中身を真似することになり、そのとき特有の事情まで一緒に引き継いでしまう。

しかも入退社は、たいてい忙しい時期に重なります。年度替わりや観光の繁忙期、案件が動いている最中に「来月から来てもらうことになった」「今月末で辞めたい」という話が入る。落ち着いて手順を組み立てる時間がないまま、思い出せたものから着手して、後から抜けに気づく。抜けるのは決まって、社内で誰も催促しないもの——本人へ渡す案内文や、返してもらう備品の一覧といった部分です。

ここにAIを入れる意味は、手続きを自動化することではありません。忙しいさなかでも、白紙から始めなくて済む状態をつくることです。土台となる時系列と、そこに紐づく書類・案内文の下書きが数分で出てくれば、総務の仕事は「思い出す」から「確認して直す」に変わります。直す作業なら、忙しくても手が動きます。

入社が決まった日から初日までを、日付の順に並べ直す

入社が決まった日から初日までの書類準備を時系列で並べたイメージ

まず入社です。起点は「内定を出した日」ではなく「入社日が決まった日」に置くと扱いやすくなります。そこから初日までの間に、社内で用意するものと、本人に書いてもらうものが並びます。AIには次のように頼みます。「当社は沖縄県内の従業員十数名の会社です。正社員が一名、来月一日付で入社します。入社日が決まった日から初日までの間に、総務が社内で準備する書類と、本人に記入・提出してもらう書類を、着手する順番で一覧にしてください。制度上の可否や提出期限が関わる項目には、必ず『社労士に要確認』と印を付けてください」。

この頼み方には二つの仕掛けがあります。ひとつは「着手する順番で」と指定していること。ただ列挙させると重要度も締切もばらばらの一覧になりますが、順番を求めると、本人からの提出を待つもの(マイナンバーや口座情報、扶養に関する情報など)が前に来て、社内で完結するもの(雇用契約書、就業規則の説明資料、備品の手配、席とアカウントの用意)が後ろに並びます。待ち時間のあるものを先に動かせる形になるわけです。

もうひとつは確認が要る箇所に印を付けさせていること。社会保険や雇用保険の加入対象になるか、いつまでに何を出すのか、といった判断はAIに決めさせてはいけません。印だけ付けさせて、その行をそのまま社労士への質問リストに転用します。実際、顧問社労士がいる会社なら、この一覧をそのまま送って「この理解で合っていますか」と聞くのがいちばん早い進め方です。AIが出したものを鵜呑みにするのではなく、人に確認するための材料としてAIに作らせる、と考えてください。

入社の案内文は、本人が知りたい順に組み替える

書類がそろっても、本人への案内が一行のメールだけ、というのはよくある話です。「初日は九時に本社へお越しください」。これで届いた側は、持ち物も服装も、駐車場をどうするかも分からないまま初日を迎えます。そして前日の夕方に電話がかかってきて、総務が対応することになります。

案内文をAIに書かせるときは、こう指示します。「来月一日に入社する方へ送る事前案内のメール文を作ってください。読む人が不安に思う順に段落を並べてください。当日の集合時間と場所、持参してもらう書類と身分証、服装、通勤手段と駐車場の扱い、初日の大まかな流れ、質問先。堅くなりすぎず、初めて来る人に向けた案内として自然な文章で」。「不安に思う順に」という一言が効きます。総務にとっては提出書類が最重要でも、本人にとっては「どこに何時に行けばいいか」「車をどこに停めるか」が先です。沖縄では車通勤が前提の職場も多く、駐車場の場所と契約の扱いは、書けば必ず一件は問い合わせが減ります。

出てきた下書きは、そのまま送らずに二か所だけ見ます。会社の事情に合っているか(駐車場、私服可否、初日の時間帯)と、断定してはいけないことを断定していないか。手当や控除の話をAIが親切心で書き足してくることがありますが、金額や条件に触れる部分は削って「詳細は初日に説明します」に置き換えるのが安全です。

退職の申し出を受けた日から、返すものと渡すものを分ける

退社は入社より難しくなります。理由は二つあって、ひとつは最終出社日と退職日がずれることがあること、もうひとつは会社に返してもらうものと、会社から渡すものが混在することです。この二つを頭の中で同時に扱おうとするから、毎回どこかが抜けます。

AIに整理させるときは、最初から分けて頼みます。「従業員が今月末で退職します。申し出を受けた日から退職後までを時系列に並べ、(一)会社が本人から回収するもの、(二)会社が本人へ渡すもの、(三)社内の手続きとして処理するもの、の三つに分けて一覧にしてください。制度上の判断や期限が関わる項目には『要確認』と印を付けてください」。三分割にすると、回収漏れが起きやすいもの——貸与のパソコンや携帯、社員証、鍵、制服、名刺、クラウドサービスのアカウント——が一か所にまとまります。特にアカウント類は、返してもらう「物」がないので忘れられがちですが、退職後もメールやファイル共有に入れる状態が残るのは、情報管理としていちばん困る形です。

場面社内で用意・処理するもの(例)本人へ渡す案内文(例)確認先
入社が決まった日雇用契約書、提出依頼一式、席・備品・アカウントの手配提出書類の依頼と期日の連絡社労士(加入の可否・必要書類)
入社の初日まで受け入れ手順、就業規則の説明資料初日の集合案内(時間・場所・持ち物・駐車場)社内(現場の受け入れ担当)
退職の申し出退職の意思確認、最終出社日と引継ぎの整理今後の流れの説明社労士(手続きの順序と時期)
最終出社日まで貸与品・アカウントの回収一覧、引継ぎ資料返却物の案内と当日の段取り社内(情報管理の担当)
退職日以降各種喪失の手続き、書類の交付受け取る書類と問い合わせ先の案内年金事務所・健康保険の窓口・社労士

この表そのものも、AIに骨組みを出させて自社の実態に合わせて直す、という作り方ができます。大事なのは完成度ではなく、次に誰かが辞めるときに同じ表を開けばよい状態にしておくことです。

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退職者への案内文は、渡したあとの電話を減らすために書く

退職者へ渡す案内文と回収する貸与品を整理するイメージ

退職の案内文で意識したいのは、退職後に会社へかかってくる電話の中身です。多いのは「あの書類はいつ届きますか」「保険はどうすればいいですか」「源泉徴収票をもう一度もらえますか」といった問い合わせで、どれも退職時に一枚の案内文があれば防げたものです。しかも辞めた後だと、担当者は当時の記録を探すところから始めることになります。

そこでAIには、書類の一覧ではなく「本人がこの後に取る行動」を書かせます。「退職者へ渡す案内文を作ってください。会社から後日渡す書類、それぞれの用途、本人が退職後に自分で進める必要がある手続きの種類、会社への問い合わせ先と受付時間を含めてください。時期や制度上の条件は断定せず、『詳細は担当窓口でご確認ください』という形にしてください」。この最後の一文を毎回入れるかどうかで、案内文の安全性がまったく変わります。AIは親切に「◯日以内に手続きしてください」と書いてしまうことがありますが、実際の期限や条件は個々の事情で変わります。会社が配る紙に断定形で書いてしまうと、そのまま責任のある案内になってしまう。調べるべき場所を示すところまでで止めるのが、総務としても本人としても安全です。

加えて、円満な退職ばかりではない、という現実も踏まえておきます。感情的なやり取りになりそうな場面ほど、事実だけを淡々と並べた文面が役に立ちます。AIの下書きは感情を含まないので、この点ではむしろ扱いやすい。出てきた文面から余計な気遣いの表現を削って、事実と連絡先だけを残す方向に整えると、後で読み返しても揉めにくい案内になります。

「確認が要る箇所」を下書きの中に残しておく

ここまで繰り返し「要確認」と書いてきましたが、これは運用上の要になる部分なのでまとめておきます。AIが出した一覧や案内文は、そのままだと制度に関する記述と社内の段取りが同じ調子で混ざっています。読み返したときに、どこが自社で決めてよくてどこが確認事項なのかが区別できません。

そこで、下書きを保存する時点で確認が要る行に印を残したままにしておきます。消してきれいにしたくなりますが、消さないほうがいい。次に入退社が発生したとき、その印がそのまま「社労士に聞くことリスト」になります。顧問契約があるなら、印の付いた行だけをまとめて送れば数分で確認が済みます。契約していない場合でも、年金事務所や労働基準監督署、健康保険の窓口に聞くべき内容が整理された状態で残ります。

もうひとつ、確認した結果を下書きに書き戻す習慣をつけてください。「社労士に確認済み・◯年◯月時点」と一行添えるだけで、その情報がいつのものかが分かります。制度は変わりますから、時点が分からない情報は結局また確認し直すことになる。AIが作るのは器で、中身の鮮度を保つのは人の仕事という分担です。AIの業務活用をどこから始めるかについては、沖縄の中小企業がAI活用を進めるときの考え方もあわせてご覧ください。

総務が一人の会社ほど、下書きの質より「毎回同じ形」が効く

県内の中小企業では、総務が専任ではなく、経理や営業事務と兼務しているケースが少なくありません。人によっては社長の奥さまが一人で見ている、という会社もあります。この体制でいちばん怖いのは、その人が休んだときに誰も手続きの進め方を知らないことです。手順が頭の中にしかないと、引き継ぎようがありません。

ここで紹介した進め方の効果は、実は作業時間の短縮より「形が残ること」のほうが大きい。時系列の一覧と、入社・退社それぞれの案内文の下書きがフォルダに置いてあれば、別の人が対応することになっても、そこから始められます。中身が完璧でなくても構いません。何をする場面なのかが分かる状態であれば、あとは確認しながら進められます。属人化を解くのに必要なのは立派なマニュアルではなく、誰が開いても次の一手が分かる程度の下書きです。

始め方としては、次に入退社が発生したときに、いつもの作業と並行してAIに一覧と案内文を出させてみるのが現実的です。実際の作業と見比べれば、何が足りないか、何が自社に合わないかがその場で分かります。一回分の記録が残れば、二回目からは修正だけで済むようになります。どこから手を付ければよいか整理したい場合は、AI活用の支援サービスお問い合わせからご相談ください。対応できる範囲は業務の内容によりますので、まずは現状をお聞かせいただければと思います。

まとめ

入退社の手続きが毎回手探りになるのは、頻度が低いことによる構造的な問題です。だから記憶に頼るのをやめて、入社と退社を時系列に並べた土台をつくり、そこに紐づく「社内で用意する書類」と「本人へ渡す案内文」をAIに下書きさせる。総務の仕事を、思い出す作業から、下書きを確認して直す作業に置き換えるという発想です。

その際に守る線はひとつだけで、制度の可否・対象・期限をAIにも自社の案内文にも断定させないこと。該当しそうな箇所には印を付けたまま残し、社労士や年金事務所、健康保険の窓口に確認して、確認した日付と一緒に書き戻す。この形を一度つくっておけば、次に人が入るときも辞めるときも、同じ場所を開くところから始められます。忙しい時期に発生しても、白紙から始めなくて済む。それだけで、総務の負担はずいぶん違ってきます。