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Excelの集計が終わらない事務へ|関数もグラフもAIに聞いて片づける手順

先に結論から書く。事務の集計作業で手が止まる場所は、思っているより限られている。データを丸める(集計)、数式をつくる(関数づくり)、見せる形にする(グラフ)、間違いを探す(入力ミス点検)——この四つだ。そしてこの四つは、どれも生成AIに日本語で頼めば前に進む。関数名を思い出す必要も、似た事例をネットで探し回る必要もない。必要なのは「何をどうしたいのか」を、AIに伝わる言い方で書けることだけである。

ただし、そのまま貼ってよいデータと、伏せてから渡すべきデータがある。ここを決めないまま始めると、便利さより先に不安が来て、結局いつものコピペと目視に戻ってしまう。だからこの記事では、四つの場面ごとに「頼み方の例文」と「貼ってよい/伏せるの線引き」を一つずつ添えていく。読んだその日の午後から試せる粒度で書くつもりだ。

月末の夕方、手が止まるのはいつも同じ四か所

事務作業で手が止まる四つの場面を表したイラスト

那覇の卸売業でも、うるま市の工務店でも、南部の介護事業所でも、事務担当者の月末の風景はよく似ている。基幹システムやPOS、勤怠アプリから落としたCSVを開き、行を追い、別のシートに転記し、最後に社長や上長へ渡す一枚をつくる。時間がかかっているのは判断ではなく、その手前の「整えるだけの作業」だ。

その整える作業を分解すると、四つに分かれる。まず、縦に長い明細をどの単位でまとめるか決めて丸める集計。次に、条件つきの計算や文字列の整形を数式で書く関数づくり。それを人に見せる形にするグラフ。そして提出前に、金額のズレや重複、入力ゆれを探す点検。ここでかかっている時間は、業務の中身を知らない人には見えないが、担当者本人にはよく見えている。

ここで押さえておきたいのは、AIに任せられるのは「作業」であって「責任」ではない、という点だ。数字が正しいかどうかを最後に見るのは人間の仕事のまま変わらない。逆に言えば、確認に集中できるように、その手前の手数を減らすのがAIの正しい使い方になる。この前提を社内で共有しておくと、導入の話が「人を減らす話」にすり替わらずに済む。

そしてもう一つ。四つの場面はそれぞれ、AIに渡す情報の性質が違う。集計はデータそのものを見せたくなるが、関数づくりは列の構造さえ分かれば足りる。この違いを場面ごとに意識すると、必要以上に社外へ情報を出さずに済む。順番に見ていく。

一つ目・集計——「どの粒度で丸めるか」から相談する

集計でつまずく理由の多くは、ピボットテーブルの操作が分からないことではなく、どの単位でまとめれば意図が伝わるかが決まっていないことにある。取引先別なのか、商品カテゴリ別なのか、月別なのか、それとも担当者別なのか。ここが曖昧なまま手を動かすと、作った後で「これじゃない」と言われ、また最初からになる。

だからAIには、操作方法ではなく相談から入るのが早い。頼み方の例文はこうだ。「売上明細のCSVがあります。列は日付・取引先名・商品カテゴリ・数量・単価・金額・担当者です。毎月、社内会議で『どの取引先が伸びているか』を見たいのですが、どの単位で集計すると意図が伝わりますか。候補を三つ、それぞれの長所と短所つきで教えてください。そのうえで、選んだ集計をExcelで作る手順を、ピボットテーブルの操作順に書いてください」。列の名前を書いておくのが要点で、これだけで回答の具体性がまるで変わる。

返ってきた案のうち一つを選んだら、続けて「この集計を毎月同じ手順で作れるように、次回以降の作業メモを箇条書きで書いて」と頼んでおくとよい。翌月の自分、あるいは引き継いだ誰かのための手順書が、作業のついでに残る。事務作業の属人化は、たいてい手順書を書く時間が取れないことから始まるので、ここは効いてくる。

この場面の線引き:貼ってよいのは「列名と、数値を書き換えたサンプル数行」まで。伏せるのは実在の取引先名と担当者の氏名だ。取引先名は「A社・B社」、担当者は「担当1・担当2」に置き換えてから貼る。集計の相談に必要なのは表の構造であって、誰の名前かではない。置き換えは置換機能で一度に済むので、慣れれば数十秒の手間で終わる。

二つ目・関数づくり——数式を思い出すのをやめて、日本語で言う

関数は、覚えている人と覚えていない人の差が出やすい。だが本来、事務の仕事は数式を暗記することではない。AIを使うなら、関数名を検索するのではなく、やりたいことを日本語のまま渡して数式に翻訳してもらうのが筋がいい。

例文はこうなる。「Excelで数式を作ってください。A列に日付、B列に取引先コード、C列に税抜金額が入っています。別シートの取引先マスタ(A列=コード、B列=名称、C列=締日)から名称を引いてきたうえで、締日が20日の取引先だけ、当月分の税抜金額を合計したいです。Excelのバージョンは(Microsoft 365/2019など)です。数式と、その数式が何をしているかの説明を一行ずつ付けてください」。バージョンを書き添えるのは大事で、XLOOKUPやFILTERが使える環境かどうかで答えが変わるからだ。

返ってきた数式は、いきなり本番のファイルに貼らない。作業用のコピーで動かし、手計算できる小さな範囲——たとえば三件だけの取引——で答え合わせをしてから使う。ここを飛ばすと、合っているように見えて範囲が一行ずれている、といった事故が起きる。エラーが出たら、エラー表示をそのまま貼って「この数式でこのエラーが出ました。原因の候補と直し方を教えてください」と聞けばよい。むしろエラーが出たときのほうが、AIとのやり取りは早い。

この場面の線引き:貼ってよいのは列の構造とエラーメッセージ、そして自分で作った架空の数値。伏せるのは実データそのものだ。関数づくりに実際の金額は要らない。「C2に1000、C3に2000が入っているとして」と仮の数字で伝えれば、同じ数式が返ってくる。実データを貼らずに済む場面を見つけていくことが、そのまま社内のリスク管理になる。

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三つ目・グラフ——見せたい相手を先に伝えると、形が決まる

会議で伝わるグラフの形を選ぶ場面のイラスト

グラフで迷うのは、種類の選択肢が多いからではない。誰に何を判断してほしいのかが決まっていないから迷う。社長に「今月どうだった?」を伝えたいのか、現場に「どの曜日が薄いか」を見てほしいのか、金融機関に推移を説明したいのかで、選ぶ形は変わる。

だからAIへの依頼にも、相手と目的を先に書く。「月次の売上データがあります。列は年月・商品カテゴリ・売上金額です。社内会議で、社長に『どのカテゴリが前年より伸びているか』を一目で分かってもらいたいです。適したグラフの種類を理由つきで二つ提案し、Excelでの作り方を手順で書いてください。あわせて、そのグラフで誤読されやすい点があれば注意も添えてください」。最後の一文を入れておくと、円グラフで推移を語ってしまうような、よくある食い違いを先に潰せる。

もう一つ添えておくと役立つのが、「印刷して配るのか、画面で見せるのか」という条件だ。沖縄の中小企業の会議では、いまだに紙で配る場面が少なくない。白黒印刷で配るなら色分けは頼りにならず、模様や並び順で区別する必要が出てくる。この条件を伝えておくと、AIの提案が現実の会議室に合ってくる。

この場面の線引き:貼ってよいのは集計後の要約値(カテゴリ別・月別の合計など)。伏せるのは明細の一行一行だ。グラフの相談に必要なのは十数行の要約であって、数千行の生データではない。むしろ要約だけを渡したほうが回答は速く、的も外れにくい。渡す量を減らすことが、安全と精度の両方に効く珍しい場面でもある。

四つ目・入力ミス点検——目視でやっていた突き合わせを、条件に翻訳する

提出前の点検は、四つの中でいちばん神経を使う。二重計上、桁の打ち間違い、取引先名の表記ゆれ、消費税区分の取り違え。これらを目で追うのは疲れるうえ、疲れているときほど見落とす。ここはAIに、探し方そのものを設計してもらうのが向いている。

例文はこうだ。「Excelの明細表で、提出前にチェックしたい項目があります。①同じ日付・同じ取引先・同じ金額の行が重複していないか ②金額が他の行に比べて極端に大きい、または小さい行がないか ③取引先名の表記ゆれ(全角半角、株式会社の有無、スペース)がないか。この三つを見つけるための条件付き書式と数式を、それぞれ設定手順つきで教えてください」。手作業の目視を、機械が判定できる条件へ翻訳してもらうという発想である。

表記ゆれの点検は、沖縄の事業所では特に効きやすい。同じ取引先が「(有)」「有限会社」「カタカナ表記」で混在していたり、地名を含む社名の中黒やスペースが揺れていたりすることがある。これを目で揃えるのは骨が折れるが、条件付き書式で色が付くようにしておけば、翌月からは色を見るだけで済む。一度作れば毎月使える点で、投資対効果が見えやすい作業でもある。

そして忘れてはいけないのが、AIが指摘した行を最終的に判断するのは人間だという点だ。「極端に大きい金額」は、単なる打ち間違いのこともあれば、その月だけの大口取引という正しい数字のこともある。AIは候補を挙げるところまで、正誤の決定は担当者の仕事——この役割分担を守っている限り、点検の精度は下がらない。

この場面の線引き:貼ってよいのはチェックしたい条件そのもの。伏せるのは点検対象のデータ本体だ。点検はAIに「探させる」のではなく、「探し方を作らせて、Excelの中で自分が探す」。この形にすれば、データは一行も社外に出ない。四場面の中で、最も内向きに閉じられるのがこの点検である。

四場面の線引きを、一枚にまとめておく

ここまでの線引きを表にしておく。印刷して事務所のデスクに貼っておくくらいの気軽さでいい。判断に迷ったときに毎回考え直すのが、いちばん時間を食うからだ。

場面AIに渡してよいもの渡さず伏せるもの
集計列名、数値を書き換えたサンプル数行、集計したい目的実在の取引先名、担当者の氏名、実際の金額
関数づくり列の構造、Excelのバージョン、エラーメッセージ、架空の数値実データの中身そのもの
グラフ集計後の要約値、見せる相手と目的、印刷か画面かの条件明細行、個人が特定できる項目
入力ミス点検チェックしたい条件、判定の考え方点検対象のデータ本体(Excel内で完結させる)

共通しているのは、AIに渡すのは「作り方の相談」であって「データの処理そのもの」ではないという一点だ。作り方さえ手に入れば、処理は自分のExcelの中で終わる。この考え方で運用している限り、社外に出る情報はかなり絞り込める。

なお、どこまでを社内ルールとして明文化するかは、扱っている情報の種類や取引先との契約によって変わる。個人情報を含む名簿や、守秘義務のある案件データを日常的に触る部署であれば、より厳しい線を引く必要が出てくる場合もある。自社の状況に照らした判断は個別のご相談で整理するのが確実だ。

使う道具と、社内での決め事をどう置くか

道具については、まず手元にあるもので始めてよい。ブラウザで使える対話型のAI一つあれば、この記事の四場面はすべて試せる。有料版やExcel連携機能を検討するのは、無料の範囲で「毎月これに使う」という用途が二つ三つ見えてからで遅くない。先に契約を決めてから使い道を探すと、たいてい定着しない。

社内の決め事は、細かく作り込まないほうがうまくいく。最初は三行で足りる。一、実在の取引先名と個人名は置き換えてから貼る。二、AIが出した数式・手順は、必ずコピーしたファイルで試してから本番に使う。三、迷ったら貼らずに聞く。これだけ掲示しておけば、日常の判断はほぼ回る。細則は、実際に迷った場面が出てきてから足していけばいい。

もう一つ有効なのが、うまくいった頼み方を社内で共有することだ。同じ部署の誰かが書いた依頼文をそのまま真似して、列名だけ差し替えれば動く。ゼロから考えるより早く、しかも表現がそろうので結果も安定する。共有の置き場は、社内チャットの固定投稿でも、共有フォルダのテキストファイルでも構わない。凝った仕組みより、開くのが面倒でないことのほうが大事だ。

効果の測り方も、あまり難しく考えなくてよい。月末の集計に何時間かかっていたかを、始める前に一度だけ記録しておく。三か月後に同じ作業時間を測って比べれば、それが自社にとっての答えになる。他社の事例より、自分の職場で測った数字のほうが、社内を説得する材料としては強い。

Excelの外側へ広げるなら、どこから考えるか

四つの場面が回り始めると、次の欲が出てくる。「毎月同じことをやっているのだから、そもそも自動で流れないのか」という話だ。ここから先は、Excelの使い方の工夫ではなく、業務の流れそのものを組み替える領域に入る。CSVの取得、集計、報告書の作成、共有までを一続きにする、といった発想である。

その入口として何が向いているかは、扱っているシステムやデータの量、そして社内で誰が面倒を見られるかによって変わる。まずはExcelとAIの組み合わせで手数を減らし、それでも残る定型作業を洗い出してから検討するのが順番として無理がない。考え方はAI活用の相談窓口のページでも整理しているので、あわせて見てもらえればと思う。

あわせて、AIそのものの向き不向きを知っておくことも役に立つ。得意なのは、手順を言語化すること、条件を数式に翻訳すること、下書きを大量に出すこと。苦手なのは、社内でしか通じない暗黙のルールを察すること、そして最終的な数字の責任を負うことだ。この線を分かって使えば、期待外れも起きにくい。沖縄の中小企業での使いどころについてはこちらの記事にもまとめてある。

まとめ:明日の集計から、四つのうち一つだけ試す

Excelの集計が終わらないのは、担当者の手が遅いからではない。集計・関数づくり・グラフ・入力ミス点検という四つの場面で、それぞれ別の種類の詰まりが起きているからだ。詰まりの種類が違えば、頼み方も、渡してよい情報も変わる。ここを分けて考えられるようになると、AIは急に実務の道具になる。

始めるなら、四つ全部ではなく一つでいい。次の集計で、いちばん時間を食っている場面を一つ選ぶ。この記事の例文の列名を自社のものに書き換えて、AIに投げてみる。返ってきた手順をコピーしたファイルで試し、合っていれば残し、違っていれば聞き返す。それだけで、翌月の作業が少し軽くなる。

そして、貼ってよいデータと伏せるデータの線引きだけは、最初から守っておいてほしい。この線が守られている限り、AIの活用は「怖いから触らない」でも「よく分からないまま使う」でもない、落ち着いた日常業務になっていく。自社に合った進め方を一緒に整理したい場合は、お問い合わせから状況をお聞かせいただきたい。