チラシとLPのデザイン案づくりを画像生成AIで|外注前に3案そろえる
チラシやランディングページの制作でいちばん時間を食うのは、実は作る工程そのものではありません。「どんな見た目にしたいか」が発注側と制作側で共有できていないまま進んでしまい、上がってきた初稿を見て初めて『思っていたのと違う』と気づく——ここでの往復が、納期も気力も削っていきます。この記事では、外注に出す前に画像生成AIでラフ案を3つ並べ、それを制作会社に渡せる形に整え、どこから先は人の手に任せるかを線引きする、という順番で進め方を整理します。AIに完成品を作らせる話ではありません。話し合いの土台になる「たたき台」を短時間で用意するための使い方です。
初稿を見てから『違う』と気づく構造をやめる

那覇や浦添あたりの制作会社にチラシを頼んだとき、こんなやり取りに覚えはないでしょうか。打ち合わせでは「明るい感じで」「うちらしく」「高級感がありすぎない程度に」と伝えた。制作側もうなずいて持ち帰った。ところが二週間後に出てきたA4の初稿は、写真が大きく入った落ち着いた色味で、こちらが頭に描いていた賑やかなセール感とはまるで別物だった——。
ここで起きているのは、どちらかの怠慢ではありません。言葉だけで見た目を伝えることの限界です。「明るい」という一語が、発注側の頭の中では黄色とオレンジの元気なチラシを指していて、制作側の頭の中では余白の多い白基調のデザインを指している。両方とも日本語として正しく、どちらも嘘をついていない。それでも成果物はすれ違います。
差し戻しが一回で済めばまだいいのですが、実務では二回、三回と続くことがあります。そのたびに社内では「もう一度打ち合わせの時間を取る」「役員に見せて意見をもらう」という工程が挟まり、当初の掲載予定日に間に合わなくなる。夏場のイベント告知や年度末の販促のように、日付が動かせない企画ほど痛手が大きくなります。
この構造を断つ方法は一つしかありません。言葉で伝えるのをやめて、絵で見せることです。ただし、そのためにデザイナーへ「試しに3案作ってみて」と頼むのでは本末転倒で、そこにも工数と費用が発生します。だから、発注側が自分の手元で、粗くていいから見た目の候補を用意する。画像生成AIが実務で効いてくるのは、まさにこの手前の部分です。
ラフ3案を作る——1案では議論にならない
実際に手を動かすとき、最初に決めておきたいのは「1案ではなく3案作る」ということです。1案だけ持っていくと、それが正解かどうかの二択になってしまい、「なんとなく違う気がする」という感想しか返ってきません。3案並べると、人は自然に比べ始めます。「この配色は好き」「でもこっちのレイアウトのほうが読みやすい」——比較の言葉が出た瞬間に、初めて具体的な議論が成立します。
3案の作り分け方にはコツがあります。似たものを3つ出しても意味がないので、あえて方向性をずらすのです。たとえば県内向けの飲食店のチラシなら、一案目は写真を大きく使った食欲重視、二案目は文字と価格を前に出した情報重視、三案目は余白の多い落ち着いた雰囲気重視、という具合に軸を変えます。この振れ幅があると、決裁者が「うちはこっち寄りだ」と自分の言葉で位置を示せるようになります。
生成の指示は、日本語でも構いませんが、具体的な言葉を選ぶほど結果が安定します。「おしゃれなチラシ」ではなく、「A4縦、上半分に料理写真、下半分に文字を置くスペース、赤とベージュの配色、賑やかな印象」というふうに、レイアウトと色と雰囲気を分けて書く。何枚か出して気に入らなければ、色だけ変える、構図だけ変える、と一要素ずつ動かすと狙いに近づきます。
ここで割り切っておきたいのが、文字は読めなくていいという点です。画像生成AIは今のところ日本語の文字を正確に描くのが苦手で、それらしい形の文字化けが入ります。しかしラフ案の目的は雰囲気と配置を見せることなので、文字の部分は「ここに見出しが入る」「この帯に価格が入る」と口頭で補えば十分に機能します。むしろ文字が読めないおかげで、色や構図そのものに目が向くという副次的な効果もあります。
LPの場合は「一画面目」だけを先に固める
チラシとLPでは、ラフ案の作り方が少し変わります。チラシは一枚の紙で完結しますが、LPは縦に長く、スクロールしながら読ませる構造です。全体を一枚の画像で表現しようとすると細部が潰れて何も判断できなくなります。
そこで、LPについては最初の一画面——スマートフォンで開いた瞬間に見える範囲だけを先に固めることをおすすめします。ここで印象が決まり、離脱するかどうかも決まるからです。背景に写真を敷くのか、色だけで見せるのか、キャッチコピーを上に置くのか中央に置くのか、問い合わせボタンをどの位置に出すのか。この一画面の方向性さえ合意できていれば、以降のセクションは制作側が同じトーンで展開してくれます。
二画面目以降まで見せたい場合は、縦長の一枚絵ではなく、セクションごとに別々のラフを作って並べるほうが実用的です。「導入部」「サービス説明」「お客様の声の置き場所」「問い合わせ導線」というように、役割ごとに一枚。それを順に並べれば、全体の流れも同時に共有できます。
なお、県内の中小企業のLPでは、スマートフォンからの閲覧が中心になることが多いはずです。ラフを作るときも、はじめから縦長のスマホ画面を前提にした比率で生成しておくと、後の認識ずれが減ります。パソコンの大きな画面で見て納得したデザインが、スマホでは文字が小さすぎて読めなかった、という手戻りは案外よく起こります。
制作会社に渡す形に整える——「参考画像」と明記する

3案ができたら、そのまま送りつけるのではなく、渡し方を整えます。ここを雑にすると、制作側に「この通りに作れという指示」だと受け取られてしまう危険があるからです。デザイナーの提案の幅を狭めてしまっては、外注する意味が半減します。
整えるべきことは三つです。一つ目は、この画像はAIで作った参考イメージであり、成果物として使うものではないと明記すること。二つ目は、それぞれの案について「何を気に入っているのか」を一行添えること。三つ目は、逆に「ここは真似しなくていい」部分を書いておくことです。
二つ目が特に重要です。「A案がいい」とだけ伝えると、制作側はA案の全部——配色もレイアウトも書体の雰囲気も——を再現しようとします。しかし実際には「A案の配色は好きだが、レイアウトはB案のほうがいい」というのが本音であることが多い。だから、案ごとに気に入っている要素を分解して伝える。「A案:この赤とグレーの組み合わせ」「B案:写真と文字の上下の分け方」「C案:全体の余白の多さ」というように書き出すと、制作側は三つの良い部分を統合した提案を持ってきてくれます。
渡す際の形式は、画像そのものと簡単な説明文をまとめた一枚のファイルで構いません。凝った資料を作る必要はなく、画像を貼って下にコメントを書いたものをPDFにするか、あるいはメール本文に画像を添えて箇条を書き添えるだけでも通じます。大事なのは体裁ではなく、意図が言葉になっていることです。
| 渡し方 | 制作側の受け取られ方 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 画像だけを送る | 「この通りに作れ」と解釈されやすい | すでに完成イメージが固まっている場合のみ |
| 画像+気に入った要素のコメント | 方向性の共有として受け取られる | ほとんどの案件でおすすめ |
| 画像+NG要素も明記 | 提案の幅を残したまま外せない条件が伝わる | 色や業種の制約がはっきりしている場合 |
| 言葉だけで説明する | 解釈のずれが残りやすい | 既存デザインの微修正など変更幅が小さい場合 |
制作会社によっては、参考画像を歓迎するところもあれば、自社の進め方があるので先に相談してほしいというところもあります。初めて組む相手なら、ラフを作る前に「参考イメージをこちらで用意してもいいか」を一言確認しておくと、余計な気を遣わせずに済みます。
社内の合意形成が、実は最大の時短になる
外注先とのやり取り以上に時間がかかるのが、社内の意見調整だという会社は少なくありません。社長と現場担当者と、ときには県外の本部と、それぞれ好みが違う。文字だけの企画書を回覧しても「まあいいんじゃないか」という曖昧な返事しか集まらず、いざ初稿が出てから「これはうちのイメージじゃない」と言われる。
ラフ3案は、この社内フェーズでこそ威力を発揮します。会議の場に三枚並べて「どれが近いですか」と聞けば、その場で意見が出ます。全員が同じものを見ているので、議論が抽象論に流れません。意思決定が早くなるだけでなく、決めた理由が全員の記憶に残るという効果もあります。
もう一つ、地味ですが効くのが「却下された案が記録に残る」ことです。C案が却下された理由が「暗すぎる」だったなら、それは以後の判断基準になります。制作会社から次の提案が来たときも、「前にC案を暗いという理由で外したので、それより明るくしてほしい」と伝えられる。判断の履歴が積み上がっていくと、二回目、三回目の発注はどんどん楽になります。
この「たたき台を素早く作って議論の土台にする」という発想は、デザインに限らず社内のいろいろな場面に応用できます。業務の中でどこにAIを差し込めば効くのかを整理したい方は、AI活用のご相談のページもあわせてご覧ください。
AI生成物をそのまま使わない——線引きをどこに引くか
ここが最も大事なところです。画像生成AIで作ったものは、あくまで打ち合わせ用のラフであり、そのまま印刷したり公開したりするものではありません。この線引きを社内で共有しておかないと、後々やっかいなことになります。
理由はいくつかあります。まず品質面。生成された画像は一見それらしく見えても、拡大すると線が歪んでいたり、文字が意味をなさなかったり、細部の作り込みが破綻していることが珍しくありません。チラシは印刷して手に取られるものなので、画面で見て気づかなかった粗さが紙の上ではっきり出ます。
次に権利面。生成物の扱いは利用するサービスの規約によって条件が異なりますし、既存の作品に似すぎているものが出てくる可能性も否定できません。商用配布物や自社サイトに載せるものについては、権利関係をはっきりさせた素材を使うのが原則で、判断に迷う部分は制作会社や専門家に相談するのが確実です。ここは「たぶん大丈夫だろう」で進めていい領域ではありません。
そして、そもそもの役割の違いがあります。デザイナーの仕事は、綺麗な絵を描くことではなく、伝えたいことが伝わるように情報を整理し、優先順位をつけて配置することです。どの数字を大きくするか、視線をどう誘導するか、紙面のどこで一度読み手を止めるか——ラフ案には、こうした設計は入っていません。見た目だけが似ていても、伝わり方はまったく別物になります。
実務的な線引きとしては、社内の会議と制作会社との打ち合わせまでがAIの担当範囲、そこから先の実制作は人の手、と決めてしまうのが分かりやすいはずです。生成した画像ファイルには「ラフ_社外配布不可」といった名前を付けておく、といった単純な工夫でも、うっかり本番で使ってしまう事故はかなり防げます。
使いこなす人が押さえている、細かいけれど効く工夫
ラフ作りを何度か繰り返していると、効率が上がる勘所が見えてきます。いくつか挙げておきます。
一つは、自社の既存物を先に見せてから作らせること。以前作ったチラシや自社サイトの雰囲気を伝えたうえで「この路線で、もう少し賑やかに」と指示すると、まったくの白紙から作るより自社らしさに近いものが出ます。ブランドの色が決まっている会社なら、色を具体的に指定してしまうのも有効です。
もう一つは、没にした案も捨てずに残しておくこと。今回は合わなかったけれど、次の企画では合うかもしれません。フォルダに日付と用途を付けて保存しておくだけで、社内のイメージ資産が少しずつ溜まっていきます。半年後に「あのとき見たやつ、どこかにあったよね」と言われて出せるかどうかで、仕事の速さが変わります。
三つ目は、生成に使った指示文を残しておくこと。同じ路線でもう一枚欲しくなったとき、指示文が手元にあれば数分で追加できます。逆に残していないと、あの雰囲気をもう一度出すために試行錯誤を最初からやり直すことになります。
四つ目は、時間の上限を先に決めることです。ラフ作りは楽しいので、気づくと一時間、二時間と溶けていきます。「三十分で三案」と決めて、時間が来たらそこで手を止める。粗さは口頭で補えば足りるので、完成度を上げすぎないほうが結果的に早く進みます。目的はあくまで議論の土台であって、作品ではありません。
まとめ:AIは「決めるための材料」を出す係
チラシやLPの制作でつまずくのは、腕の問題ではなく共有の問題です。頭の中にある見た目を言葉だけで渡そうとするから、初稿を見るまで正解が分からない。画像生成AIは、その手前に「見て比べられる材料」を短時間で用意するための道具として使うと、いちばん素直に効きます。
やることは三つだけです。方向性をずらしたラフを3案作る。それを参考イメージと明記したうえで、気に入った要素を分解して制作会社に渡す。そして実制作は人の手に委ね、生成物をそのまま使わない。この順番を守れば、差し戻しの往復は目に見えて減り、浮いた時間を企画そのものを練る時間に回せます。
効果の出方は、社内の体制や外注先との関係、案件の性質によって変わります。まずは次に予定している一件で、社内会議用のラフを三枚だけ作ってみるところから試すのが現実的です。その他の記事でも業務へのAIの取り入れ方を扱っていますので、自社に合う使いどころを探す参考にしてください。進め方の相談や、自社の場合はどう組み立てるべきかを一緒に整理したい場合は、お問い合わせからお気軽にご連絡ください。内容によってご提案できることが変わりますので、まずは今の困りごとをそのままお聞かせいただければと思います。