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棚卸しの数え直しが終わらない小売店へ|AIで在庫表を写真から作る手順

結論から書きます。棚卸しの数え直しが夜中まで終わらない店の多くは、数えるのが遅いのではありません。数えた結果の記録の形が、人によってバラバラだからです。走り書きのメモ、レジ横のノート、スタッフがLINEで送ってきた棚の写真、Excelに直接打ち込んだ数字。これらが混ざった状態で「合計が合わない」と言われても、どこで食い違ったのかを追えません。だから最初からやり直すことになり、二度目も三度目も同じところで止まります。

ここを変える手立てとして、閉店後の作業を「数える → 写真で記録する → AIで在庫表に起こして突き合わせる → 差異だけ人が確認する」という四つの工程に割り直すやり方をおすすめしています。順番を固定し、それぞれの工程で用意するものを先に決めておく。それだけで、翌朝までかかっていた確認が、閉店後の数時間の中に収まるようになります。

この記事では、沖縄県内の小売店――那覇の路面店、郊外のロードサイド店、離島への発送を抱える雑貨店――を想定しながら、棚卸し当日の時間の流れに沿って四つの工程を順番に説明します。各工程の最後には、その工程でAIに任せてはいけない判断を一行ずつ添えました。ここを曖昧にしたまま自動化を進めると、かえって手戻りが増えます。

閉店後の数時間を、四つの工程に割り直す

棚卸し当日の典型的な流れを思い出してみてください。二十時に閉店、レジ締めとシャッター、そこから全員で売り場に散って数え始める。バックヤードに積んだ段ボールは後回し。二十二時を過ぎたあたりで「A棚の数字、誰が持ってる?」という声が出て、そこから探し物が始まる。日付が変わる頃に、合わない項目だけを残して解散。翌朝の開店前にもう一度数える――この「翌朝もう一度」が、体力もやる気も削っていく部分です。

四工程に割り直すというのは、この流れの中に「記録」という独立した工程を差し込むということです。従来は数えることと記録することが同時に起きていました。数えながらメモを書くから、書き方が人によって違う。書き方が違うから、後から突き合わせられない。数える人はひたすら数え、記録は写真という一つの形にそろえる。データに起こす作業は、その後にまとめてやる。役割を時間で切り分けるわけです。

全体像を先に押さえておくと、当日の動きが決めやすくなります。四工程それぞれで、何を用意し、誰が動き、どこから先は人が判断するのかを一覧にしました。

工程用意するもの誰が動くかAIに任せない判断
①数える棚のラベル、数える単位の取り決め売り場スタッフ全員置き場所が決まっていない在庫の扱い
②写真で記録するスマートフォン、撮影の角度と順番棚ごとの担当者写真に写らない在庫の数え方
③AIで在庫表に起こす列名を固定した在庫表、既存の在庫データ担当者一名+AI似た商品名・複数価格帯の同定
④差異を確認する差異一覧、前回の棚卸し結果店長・責任者金額に関わる差と、廃棄・返品の判断

工程① 数える:人の目は「棚の前」だけに使う

最初の工程で決めるべきなのは、数える順番ではなく棚のラベルです。「飲料の棚」「レジ裏」といった呼び方は、その日いるメンバーによって指す範囲が変わります。A-1、A-2、B-1というように、棚の一段ごとに固有の記号を振り、実際に棚板の左端にラベルを貼ってしまう。沖縄の店舗だと、湿気や冷房の結露でシールが浮くことがあるので、テプラよりも厚手のラベルにマスキングテープを重ねるくらいがちょうどいいです。この記号は、後の工程で写真とデータをつなぐ唯一の手がかりになります。

次に、数える単位をそろえます。ケース売りとバラ売りが混在する酒販や食品では、「6本入り1ケース」を1と数えるのか6と数えるのかが人によって違います。当日の朝礼で口頭確認するのではなく、棚のラベルの横に「バラで数える」と書いておく。書いてあれば、初めて手伝いに入るアルバイトでも迷いません。数え直しの原因の相当部分は、この単位のずれです。

そして、この工程では電卓もExcelも触らせないのがコツです。数える人は棚の前に立ち、指差しで数え、それを声に出す。集計しようとした瞬間に手が止まり、列が乱れます。合計を出すのは工程③の仕事だと割り切ってください。人の目と手は、実物を見るところにだけ使う。これが四工程の考え方の中心にあります。

もう一つ。数えている途中で「これ、どこの棚の在庫だっけ」という商品が必ず出てきます。返品待ちの箱、取り置き、修理預かり品。こうしたものを勢いでどこかの棚に足してしまうと、翌月また同じ場所で合わなくなります。

AIに任せない判定基準:置き場所が決まっていない在庫は、人が置き場所を決めるまで数えない(AIに渡さず、保留の一覧に逃がす)。

工程② 写真で記録する:角度と順番を決めれば読み違いが減る

棚の商品をスマートフォンで正面から水平に撮影しているイラスト

記録をスマートフォンの写真に一本化します。ここで大事なのは画質ではなく撮り方の統一です。具体的には三つ。ひとつ、棚板の正面から、レンズを商品ラベルの高さに合わせて水平に構える。斜め上から撮ると、奥の商品が手前の商品に隠れて写らず、後で「数が合わない」の原因になります。ふたつ、棚一段につき一枚を原則とし、横に長い棚は左半分・右半分の二枚に分けて重なりを持たせる。みっつ、必ず棚のラベルが画角の中に入るように撮る。ラベルが写っていない写真は、後からどの棚か分からなくなり、事実上使えません。

撮影の順番も決めておきます。A-1から番号順に、店の入口側から奥へ、上段から下段へ。順番が決まっていると、写真の撮影時刻の並びがそのまま棚の並びになるので、抜けがあったときにすぐ気づけます。三人で手分けする場合は、担当エリアを重ねないように分け、境目の棚だけ二人が撮っても構いません。重複は後で消せますが、抜けは戻って撮り直すしかありません。

写真では拾えないものも、この段階ではっきりさせます。段ボールに入ったままの在庫、引き出しの中、奥行きのある棚の二列目。こうした場所は、外から撮っても中身が写りません。ここだけは従来どおり、担当者が数えて数字を紙に書き、その紙も一緒に撮影する。紙に書いた数字を写真として記録すれば、後の工程で同じように扱えます。手書きの紙を後生大事に持ち歩くから紛失するのであって、撮ってしまえば残ります。

那覇の路面店のように売り場が狭く、棚と棚の間に体を入れられない店舗では、無理に正面から撮ろうとせず、可動棚なら一段引き出してから撮る、脚立を使って上段は上から俯瞰で撮る、といった例外を最初に決めておきます。例外を現場で即興で作らせないことが、記録の形をそろえる要点です。

AIに任せない判定基準:箱の中・引き出し・棚の二列目など写真に写り切らない在庫は、その場で人が数えて紙に書き、その紙を撮る。

工程③ AIで在庫表に起こし、既存データと突き合わせる

写真がそろったら、AIに読み取らせて在庫表の形にします。ここで結果の質を決めるのが表の列名です。列名を毎回変えたり、店ごとに違う言葉を使ったりしていると、AIも人も同じところでつまずきます。最低限、棚ラベル/商品名/JANまたは社内商品コード/数える単位/実棚数/備考の六列は固定してください。並び順もこの順に固定します。列が固定されていれば、「この写真をこの列の形で書き出して」という一度の指示で、毎回同じ形の表が返ってきます。

読み取った実棚数と、POSや販売管理システムが持っている理論在庫を突き合わせるのは、AIが得意な作業です。数千行あっても数分で差分が出ます。ここで出てくるのは「差異一覧」であって「正解」ではない、という点を全員で共有しておいてください。AIが出した差異一覧は、人が確認すべき場所を絞り込んだリストにすぎません。この線引きを曖昧にすると、後で必ず揉めます。

読み取りの精度は、商品の性質でかなり変わります。パッケージが大きく商品名が正面に印刷されているもの――飲料、菓子、日用品――は素直に読めます。逆に、同じ商品名で内容量や産地違いが並ぶ棚、手書きの値札が貼られた棚、パーツや部品のように型番が小さく印字された棚では、読み違いが混ざります。読み違いは「間違いが起きること」自体が問題なのではなく、どの棚で起きやすいかを事前に把握していないことが問題です。最初の一、二回で「この棚はAIの読み取りをそのまま使わない」というリストを作ってしまえば、以後は迷いません。

どこまでを自動で処理し、どこから人の手を残すか。ここは業種と扱う商品によってかなり変わる部分なので、自社の棚に当てはめた設計は個別に詰める必要があります。判断に迷う場合は、AIエージェント導入のご案内もあわせてご覧ください。

AIに任せない判定基準:同じ商品名で内容量や価格帯が異なるものが混ざる棚は、AIの読み取り結果をそのまま採用しない。

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工程④ 差異だけ人が確認する:戻る差と、翌朝でよい差

四つ目の工程が、この方法の効き目が一番はっきり出るところです。従来は全棚を見直していたものが、差異の出た行だけを見ればよくなります。ただし、出てきた差異をすべて同じ扱いにすると、結局また全部見ることになりかねません。差異には性質の違いがあります。

その場で売り場に戻って確認すべきなのは、実棚数がゼロなのに理論在庫が残っているケースです。これは棚の別の場所に移動しているか、撮り漏らしたか、あるいは本当に無いかのどれかで、翌日以降になると記憶が消えて追えなくなります。逆に、一つ二つのずれで、単価が低く、次回入荷で吸収される類の差異は、備考に「要観察」とだけ書いて翌朝に回して構いません。夜中に全員で悩む価値のある差と、そうでない差を分ける。この線引きは店長や責任者が持つべき仕事で、AIには渡せません。

確認の記録も残しておきます。差異一覧の備考欄に「移動を確認、B-3にあり」「破損、廃棄処理」といった一行を必ず書く。これが翌月の棚卸しで効いてきます。同じ商品で毎回差異が出るなら、置き場所か発注ルールに原因があるということで、棚卸しの精度ではなく日々の運用の問題です。棚卸しは在庫を数える行事であると同時に、店の運用の弱点が一年でいちばんはっきり見える機会でもあります。

そして、廃棄・返品・値引き処理といった、お金と会計に直接つながる判断。ここは絶対に人が決めます。AIが「破損の可能性が高い」と示すことはできても、それを損失として計上するかどうかは経営判断です。

AIに任せない判定基準:金額に影響する差異と、廃棄・返品・値引きの決定は、必ず責任者が確認して決める。

沖縄の売り場でつまずきやすいところ

在庫表の差異が出た行だけを人が確認しているイラスト

県内の店舗を回っていると、本土の事例そのままでは合わない条件がいくつか出てきます。ひとつは季節の波の大きさです。観光の繁忙期と閑散期で在庫の厚みがまるで違い、繁忙期の棚は商品が詰まっていて奥が見えません。写真の記録を軸にするなら、棚の奥行きが深い店舗では、繁忙期だけ「二列目は手で数えて紙に書く」を標準にしてしまうのが現実的です。

ふたつめは離島や県外への発送在庫です。発送準備が済んで店の中にあるが、売上としては計上済み、という在庫。これを売り場の棚と同じように撮ってしまうと、二重に数えられます。発送待ちの区画は棚ラベルを別系統(たとえばS-1、S-2)にして、在庫表の段階から分けておくのが安全です。

みっつめは台風と、その前後の駆け込み需要。棚卸しの予定日が台風接近と重なることは珍しくありません。日程をずらすか、決行するか。ここで役に立つのが、四工程に割ってあることの効果です。撮影までは短時間で終わるので、「今日は数えて撮るところまでやり、データ化と差異確認は数日後に室内でやる」という分け方ができます。工程が一続きだと、途中で止めた瞬間に全部やり直しになります。

そして、人手の問題。開店準備や接客と並行して棚卸しの段取りまで一人で抱えている店長は多いはずです。写真とAIを挟むやり方の本当の利点は、時間の短縮そのものより、棚卸しの品質が「その日のメンバーの慣れ」に左右されにくくなることにあります。初めて手伝う人でも、番号の振られた棚を正面から撮ることはできます。

最初の一回は、一棚だけの試し打ちから

いきなり全店で切り替えるのはおすすめしません。次の棚卸しを待たず、今週のうちに一棚だけ試してください。棚のラベルを貼り、正面から撮り、その写真をAIに渡して列名を指定した表に起こさせ、手元の在庫データと突き合わせる。ここまでで、自分の店の商品がどれくらい素直に読めるのかが分かります。読み違いが多い棚が見つかったなら、それは失敗ではなく、当日に人の目を配分すべき場所が判明したということです。

試し打ちで確認したいのは三点です。棚のラベルが写真の中で読めているか。列名を指定した表がそのままの形で返ってきているか。突き合わせた結果の差異が、店の実感と大きくずれていないか。この三点が通れば、あとは棚の数を増やすだけの話になります。逆に、どれか一つでも崩れているなら、そこを直さずに全棚へ広げても手戻りが増えるだけです。

社内の合意も同じタイミングで取っておきます。パートやアルバイトを含めた全員に、「今回から数える人は記録しない、記録は写真に一本化する」という一文を伝える。長年ノートで管理してきたベテランほど、自分のやり方を残したがるものですが、二つの記録方式が併存すると、突き合わせの手間はむしろ増えます。旧方式をやめる日をはっきり決めることが、実は一番むずかしく、一番効く部分です。

どの工程をAIに任せ、どの工程を人が持つか。その配分は、扱う商品の種類、既存の販売管理システム、店舗数によって変わります。自社の場合はどう組むのが現実的か、判断がつかない段階でも構いませんので、お問い合わせからご相談ください。実現できる範囲や進め方は内容によりますので、まずは現状の棚卸しの流れを伺うところから整理します。

まとめ

棚卸しの数え直しが終わらないのは、人が遅いからではなく、記録の形がそろっていないからです。閉店後の作業を数える/写真で記録する/AIで在庫表に起こして突き合わせる/差異だけ人が確認するの四工程に割り直し、棚のラベル、撮影の角度と順番、在庫表の列名という三つを事前に固定する。この準備だけで、翌朝までかかっていた確認作業が閉店後の時間に収まる可能性が出てきます。

同時に、各工程でAIに任せない判断を一行ずつ決めておくことが欠かせません。置き場所の決まっていない在庫、写真に写らない在庫、似た商品名の同定、そして金額に関わる決定。この四つを人の手に残しておけば、自動化した部分を安心して回せます。まずは一棚から試してみてください。ほかの業務のAI活用についてはブログの他の記事もあわせてどうぞ。